【基礎知識】リミットスイッチの仕組みや種類、その特徴について詳しく解説
機械設備において光電センサと同じぐらい重要で非常によく使われているのがリミットスイッチです。
リミットスイッチはサイズや形など非常に幅広い種類・バリエーションがあり、様々な用途に使うことができるとても万能なセンサの一種です。
ただ、その種類の豊富さから「このリミットスイッチはどのように使うのだろう?」と悩まれた経験がある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなリミットスイッチの仕組みや種類、それぞれの特徴について基本的な部分をできるだけ分かりやすく解説していきます。是非参考にして頂ければと思います。
リミットスイッチって本当に色んな設備で使われているよね〜
リミットスイッチは種類が非常に多い電気部品の1つです。
それぞれの特徴の違いをマスターしましょう。
リミットスイッチの構造
リミットスイッチの基本構造は以下の通りです。
引用先:日経XTECK(リミットスイッチの基礎)
リミットスイッチは主に「内蔵スイッチ」・「スイッチケース」・「アクチュエータ」・「カバー」で構成されています。それぞれの役割について解説していきます。
内蔵スイッチ
内蔵スイッチはリミットスイッチの中に入っていて、後ほど説明するアクチュエータ(検出物に直接触れるレバー等)で機械的にON・OFFされます。
引用先:日経XTECK(リミットスイッチの基礎)
アクチュエータが検出体に触れて力が加わると、内蔵スイッチの操作プランジャが押されてスイッチが働きます。スイッチが動作することにより接点が開いたり閉じたりします。これが内蔵スイッチの役割です。
スイッチケース
内蔵スイッチや端子を衝撃やホコリ等から保護するためにあるのがスイッチケースです。このスイッチケースはアルミなどの金属で出来ていることが多く、とても頑丈な造りをしています。
ケースにはコンジット口が設けられており、コンジット用コネクタを正しく使って入線することで気密性を維持できます。
引用先:オムロン(リミットスイッチ用コネクタ)
アクチュエータ
アクチュエータは検出体に直接触れる部分で、いくつか種類があります。
右が最もオーソドックスなローラーレバー形、左が任意の高さに調整できるローラー調整レバー形です。他にも様々な形のアクチュエータが存在します。
これらのアクチュエータが検出体に触れてレバーが傾くなどすると、機械的な機構によって内蔵スイッチが動作します。これがアクチュエータの役割になります。
アクチュエータにも色んな種類があるよ!
カバー
リミットスイッチに配線を行う時は、カバーを開けることで内蔵スイッチの端子部にアクセスができます。
引用先:オムロン(ロングセラー商品をさらに使いやすく)
カバーの内側にはゴムパッキンが入っていて、結線を行った後にしっかりカバーを閉じることでケースが密閉される仕組みになっています。
リミットスイッチの種類
リミットスイッチには様々な種類がラインナップされています。
汎用たて形(一般形)
引用先:MonotaRO(2回路リミットスイッチ WL-N 長寿命形)
汎用たて形のリミットスイッチは一般的に最もよく使われるタイプのリミットスイッチです。「たて形」という種類ではありますが、アクチュエータの横のネジを緩めることで任意の角度に調整ができます。
ON/OFFの精度も高いので、設備の位置決め用途としても使うことが可能です。
- 最も種類が多く汎用性が高い。
- 堅牢な造りで壊れにくい。
- 取付互換性が高く、他メーカーのものでも取り付けられる場合が多い。
- 位置決め用途としても使用可。
- ケーブルとコネクタを別途用意する必要がある。
最もオーソドックスなのがこの「汎用たて形」です。
薄形
引用先:Digikey(D4C-3420-B)
薄形は名前の通り汎用たて形と比べて小形かつ薄い形状が特徴です。
リミットスイッチ本体の内部は完全に密閉された構造で、IP67といった高いシール性を有しています。
その為、リミットスイッチは最初からケーブル付きとなっており、必要な長さを指定(3m・5mが一般的)して購入します。
- 完全密閉構造でシール性が高い。
- 小形かつ薄形な為、取付スペースが狭い場所でも取り付けやすい。
- 密閉性が高い為、アクチュエータを動かしても「カチッカチッ」という音がしない。(耳で動作したか確認しにくい)
- 汎用たて形と同様、位置決め用途として使用できる。
- ケーブル付きなので、別途ケーブルやコネクタを用意する必要がない。
小形
引用先:MonotaRO(小形リミットスイッチ HL-5000)
小形リミットスイッチは汎用たて形を一回り小さくしたような形状で、より直方体に近いケースが特徴です。
限られた狭い取付スペースにおいて、このボディサイズが有効的に働く場合もあるかと思います。
アクチュエータの種類については汎用たて形に及ばないものの、基本的な部分はしっかり押さえているので、選定しやすいのではないでしょうか。
価格が安いのも特徴で、簡単な機械であればこちらを使った方がコストダウンに繋がります。
反面、防水性能があまり期待できない為、水が掛かるような用途には汎用たて形か薄型を選定するようにしましょう。
- 汎用たて形に比べてケースサイズが一回り小さい。
- 価格が安い。
- 防水性能が低い。
防爆形
引用先:アズビル(防爆リミットスイッチ)
防爆形はたて形のリミットスイッチを防爆構造にしたものです。
防爆構造とは電気の火花やアークが周囲の爆発性ガスに引火することを防ぐ為、着火源がケースの外に出ないようになっている構造のものを言います。
化学プラントや塗料工場といった、火気厳禁の場所にある設備に防爆形リミットスイッチは使われます。
- 防爆構造を有したとても堅牢な造りをしている。
- 防爆構造ゆえにケースサイズが大きい
爆発性ガスに引火してしまうと大事故に繋がりますからね。
アクチュエータの種類
リミットスイッチの用途はこのアクチュエータで決まると言っても過言ではありません。それぞれのアクチュエータについて解説します。
ローラーレバー形
最もオーソドックスなアクチュエータがローラーレバー形です。
側面のネジを緩めることで任意の角度に調整できるほか、かなりしっかりとした造りをしているので、壊れにくく信頼性の高いアクチュエータです。
ON/OFFの精度も高く、移動範囲の制限(リミット)用途だけでなく位置決め用途としても使用できます。
ただし、アクチュエータ側では角度しか調整が出来ない為、検出体との距離を調整する場合はリミットスイッチ本体ごと動かして調整できるような取付構造にする必要があります。
- 堅牢な造りで壊れにくい
- アクチュエータ側では角度調整しか出来ない
- 移動範囲の制限用途に最適だが、位置決め用途としても使用可能。
ローラー調整レバー形
ローラー調整レバー形は正面の六角ボルトを緩めることで高さ調整ができるアクチュエータです。可変ローラーレバー形と言うこともあります。
ローラーレバー形と違って角度+高さ調整ができるので、汎用性が高くとても便利なアクチュエータです。
普通のローラーレバー形で対応出来なかった場面において、このローラー調整レバー形に置き換えることで、リミットスイッチ本体を動かさなくても解決出来るケースが多々あります。位置決め用途にも最適です。
反面、アクチュエータの強度がローラーレバー形と比べて低いので、何かをぶつけてしまって曲がる等の不具合が起きやすいというデメリットもあります。
- アクチュエータ側で角度と高さ調整が行える。
- ローラーレバー形からそのまま置き換えが可能。
- 側面から力が加わると曲がることがある。
- 狭い場所での使用は少し不向き(ローラーと反対側の余剰分が邪魔になるときがある。)
プランジャ形(ピンプランジャ)
引用先:MISUMI(小形リミットスイッチ
プランジャ形は写真のようにアクチュエータがボタンのような形状になっているものを言います。このアクチュエータが検出体に押されることでON/OFFの切り替えがされます。
レバー等の上下方向に動くものに対して押されるボタン代わりとして、設備で使われることが多い印象です。
このプランジャ形のデメリットとしては、その形状から使用用途が比較的限られてしまうというところです。位置決め用途にもあまり向きません。
アイデア次第ではありますが、使い道が難しいアクチュエータですね。
よって、正直あまりお目に掛かることが少ないです。
- 使用用途が限られる。
- アクチュエータの向きを変えられない。
- 設備の位置決め用途には不向き
- 動作(アクチュエータの押し込み)に力が必要
- 可動域(ストローク)が短い。
ローラープランジャ形
ローラープランジャ形はプランジャ形(ピンプランジャ)のように押し込んで動作する構造は同じですが、先端にローラーが付いているのが特徴です。
ローラーの向きによって、トップローラープランジャ形やサイドローラープランジャ形などがラインナップされています。
先端にローラーが付くことで可動域(ストローク)が長くなったほか、動く物体を検出することが出来るので、通常のプランジャ形と比べてかなり汎用性が増しています。
リミットスイッチの中でも動作精度が非常に高く、設備の位置決め用途としては最適です。
狭い場所での使用にも有利で、穴からアクチュエータを出して動くものを検出するといった使い方をしている場合も多いです。
ただし、アクチュエータの動作(押し込み)にはある程度の力が必要になるので、プランジャの反発(戻る)する力に負けないよう、構造や用途を決めるようにしてください。
- 通常のプランジャ形と比べて汎用性が高い。
- 狭い場所での使用に有利。
- 動作精度が非常に高い。
- 精度が高い反面、調整がシビア。
- 動作(押し込み)に力が必要
- 反発しようとする力も大きい
可動部にゴミが入ると動きが悪くなることがあるので注意してね。
フォークロックレバー形
引用先:MonotaRO(2回路リミットスイッチ WL-N/WLG 一般形)
フォークロックレバー形は写真のようなL字の形が特徴のアクチュエータです。
通常のアクチュエータだと、動作させている間はスプリングの力で戻ろうとする力が働いているため、アクチュエータから検出物が離れると元の位置に自動的に復帰します。
フォークロックレバー形の場合は、レバーをある一定の角度まで倒すと90°回転し、動作状態をキープします。そして、反対方向に再度レバーを一定の角度で倒すと、90°回転して復帰するというアクチュエータです。
引用先:オムロン(フォーク・ロック・レバー形 基本動作)
使用用途としてはクレーンや台車等を減速させる為などが多いですね。(リミットスイッチが働くと高速走行できないようにする)
あとは、シャッターが開いているかそれ以外かを検出するためにも使われたりします。
一度動作させるとずっと状態をキープしてくれるので、ストライカー(リミットスイッチを動作させる為の部品)等で常に押し込んだり倒したりしておく必要がありません。
注意点としては、リミットスイッチを動作させた後に意図しない物体(配管や床に落ちている部品等)で反転してしまうなどの誤動作が発生するケースがあることです。
また、90°以上に回転させてしまうと壊れてしまいます。
特性と設置状況を鑑みて選定するようにして下さい。
- 1回の動作で動作状態をキープできる。(動作させ続ける必要がない)
- 位置決め用途には向かない。
- 可動域は90°である為、それ以上無理な力を加えると故障する。
意外とよく使われているアクチュエータですよ。
可変ロッドレバー形
引用先:MonotaRO(2回路リミットスイッチ WL-N/WLG 耐環境形)
可変ロッドレバー形は名前の通り、棒状(ロッド状)で長さの調整が可能なアクチュエータです。
種類によっては380㎜の長さがあるものもオムロンではラインナップされています。
特徴としては、やはりそのロッドの長さを活かした検出距離の長さでしょう。
ただし、このロッドは曲がってしまうリスクがかなりあるので、使いどころには注意が必要です。また、アクチュエータの形状から位置決め用途にはあまり向きません。
- 検出距離が非常に長い(検出物から距離を取れる)
- 動作に必要な力が少ない(テコの原理により)
- 精度の高い検出には向かない(位置決め用途は不向き)
コイルスプリング、フレキシブルロッド形
引用先:MonotaRO(Telemecanique Sensors リミットスイッチ コイルスプリング)
引用先:MonotaRO(リミットスイッチ(フレキシブルロッド形))
これらのアクチュエータは、ロッドの根元もしくはロッド全体がバネの形状をしていて、まるでジョイスティックのような構造なのが特徴です。
そのため、一方向だけでなく様々な方向からくる物体を検出する用途に対応できます。
精度の高い検出には不向きですが、アイデア次第で様々な用途に応用が利くアクチュエータではないでしょうか。
- 様々な方向から物体を検出することができる。
- 動作(ロッドを倒す)に必要な力が非常に小さい
- 高精度な検出には不向き
- 保管に場所をとる。(箱が長くなる)
まとめ
以上、リミットスイッチの種類やアクチュエータの特徴について解説してきました。
リミットスイッチは実に様々な種類があるので、選定にはそれなりに労力と時間を要すかと思います。
汎用形・薄形・小形と、大きさ1つをとってみても実に多種多様です。
僕の経験からなるべく詳細に解説してみましたので、是非この記事をリミットスイッチ選定の一助にして頂ければ幸いです。