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【離れて電圧・電流測定!】Fluke 381クランプメーターのレビューについて

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電気の設備保全業務をされている方であれば、点検やトラブルなどで「電圧・電流の測定作業」を行うことが多いかと思います。

長く保全をやっていると、様々な場面で電圧・電流の測定作業を行うことがありますが、このようなことをふと思ったことはないでしょうか?

離れた場所から電圧・電流測定を行いたい!」

特にクレーンや搬送台車など、自走する装置のモーターの電流や電圧を測定しようと思ったら、クランプメーターやテスターを装置セットして乗りながら数値を見る必要があります。

人が乗れるような装置ならいいのですが、小さいホイストなど人が乗るスペースのない装置の場合、動かしながら装置にセットした測定器の数値を見るのは非常に困難です。

また、数値を読むことに一生懸命になってしまったせいで、周囲の状況に気づかず装置に挟まれるといった危険もあります。

実際に、動くクレーンにセットしたクランプメーターを読むのに必死で、開けていた盤の扉に挟まれたといった事例も存在します。

この記事では、そんな「離れた場所から電圧・電流測定を行いたい」というニーズをかなえるクランプメーター、「Fluke (フルーク)381」についてご紹介します。とても便利なクランプメーターなので、是非チェックしてみてください。

なべ
なべ

Fluke 381は様々な場面で活用できるとても便利なクランプメーターです!

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Fluke 381とは

Fluke 381はアメリカに本社を置く「フルーク・コーポレーション」というメーカーの製品です。フルーク・コーポレーションは設立1948年ということで、かなり老舗の計測機器メーカーです。

Fluke 381の正式名は「Fluke 381 リモート・ディスプレイ搭載 真の実効値 AC/DC クランプ・メーター (iFlex使用)」といいます。結構長いですね。名前にこのクランプメーターの機能がふんだんに盛り込まれています。

その名の通り、本体からディスプレイ部分を取り外してリモートで測定が出来るという、優れもののクランプメーターなんです。

他にもテストリードや電流プローブなど、付属品も充実しているので様々なシーンでの測定作業に活用できます。

※詳細なスペック・仕様はFlukeのHPでご参照ください。→メーカーリンク

ひでくん
ひでくん

ディスプレイが外せるクランプメーターがあるんだね!

Fluke 381の特徴

Fluke 381には次のような特徴があります。

ディスプレイを着脱できる

Fluke独自の「ワイヤレス・テクノロジー」によって、本体からディスプレイを約10m離しても数値を読むことが可能です。なので、動く装置に本体をセットしておけば、ディスプレを外して離れた位置で測定を行うことができます。

ディスプレイと本体間の通信はBluetoothなどではなく、IEEE802.15.4という無線規格で通信しています。

外部ノイズに強い構造

独自のローパスフィルターと信号処理技術によって、ノイズの多い環境でも安定的な測定が可能です。

様々な電気的測定作業ができる

Fluke 381は交流の電流・電圧測定、抵抗測定だけでなく直流の電流・電圧測定も可能な測定器です。

Fluke 381が1つあればあらゆる測定シーンに対応が可能です。

校正が可能

Fluke 381は校正が可能な測定機器です。なので、公共関係など測定器に校正証明書が必要な場面においても校正をとれば使うことができます。

このように、Fluke 381は様々なメリットがあるクランプメーターなのです。

Fluke 381のレビュー

それではFluke 381を詳しく見ていきます。

収納ケース

Flukeのテーマカラーである黄色が差し色になっている収納ケースです。持ち手がついているので現場間を移動する際も持ち運びがしやすそうですね。

このナイロン製のソフトケースの中に本体や付属品が全て収納されています。大きさは、長さ約30センチ×幅約13センチ×厚さ約10センチぐらいです。

開封

ソフトケースを開けるとこんな感じで入っています。

それぞれの機器を上手に収納する方法がありそうなのですが、取りあえずこのような感じで収納しています。

ソフトケースから取り出して並べました。

左から本体、フレキシブル電流プローブ、テストリード、テストリードの先端をワニ口に変換できるアタッチメントです。

黄色と赤色を基調としたデザインも良い感じですね。

一つ一つ詳しく見ていきましょう。

クランプメーター本体

クランプメーター本体がこちらです。ラバー調の外装をしているので持っていて滑りにくく、とても頑丈な造りをしています。重さは約350gで、そこまで重いという感じはしません。

現場での取り回しもしやすそうです。

本体の真ん中にはロータリースイッチがあります。

スイッチが大きいので手袋をはめていても操作性が良いです。

スイッチを切り替えることで、交流電圧・直流電圧・抵抗値及び導通・交流電流・直流電流・プローブによる交流電流をそれぞれ測定することが可能です。

ちなみに、ロータリースイッチの下にある「INRUSH」というボタンは、モーターの起動時に一瞬流れる突入電流を測定するときに使用するボタンです。このボタンを押してモードを切り替えた状態で測定を開始すると、流れた突入電流を捕捉してディスプレイに表示することができます。

本体の下面にはプローブやテストリードを接続する端子が備わっています。

本体の電池は背面のカバーを開けると取り出すことができます。

中を開けると単四の乾電池3本が入っていました。

本体のクランプ部分は少し大きめです。狭いところでは少し使いにくいので、その場合は後述するフレキシブル電流プローブを使う方が良いでしょう。

リモート・ディスプレイ

このクランプメーター最大のポイントであるリモート・ディスプレイです。

一見普通のクランプメーターのディスプレイですが

両側面にある写真の黒いリリースボタンを引きながらディスプレイを手前に引くと

このようにディスプレイを分離することができます。

このディスプレイを切り離して使うときは、まずディスプレイを本体に取り付けた状態でスイッチを入れてディスプレイを表示させます。

このようにディスプレイに表示がされている状態でディスプレイを取り外すと

ディスプレイに表示がされた状態で切り離すことができました。

このディスプレイは本体から最大約10mまで離すことができるので、かなり遠くからでも測定値を読むことができる優れものです。

ディスプレイの「☀︎」ボタンを押せば表示を明るく出来るので、暗いところでも数字を読み取ることが可能です。

ディスプレイの左下のマークは、本体とリモート通信しているときに表示されます。

ディスプレイの表示を切るときは、本体のロータリースイッチをOFFにするとディスプレイも一緒に消えます。

ただし、ディスプレイを切り離した状態でロータリースイッチを入れても、ディスプレイの電源は入りません。一度本体にディスプレイをセットしてからロータリースイッチを入れないとディスプレイの電源を入れられないようにな構造になっています。

ディスプレイと本体にはそれぞれ赤外線通信の小窓みたいなものが備わっていて

このような小窓がディスプレイと本体にあります。

どうやらこの小窓を通して本体からディスプレイの電源を入れているようです。なので、この小窓同士が向かい合う状態=ディスプレイを取り付けている状態でないと電源が入らないということみたいです。

ちなみに、このディスプレイにも乾電池が入っています。

ディスプレイの裏側にフタがあって、これをスライドさせると

こちらには単四の乾電池が2本入っていました。

本体と合計すると単四の乾電池が合計5本必要になる計算になりますね。測定器1つに乾電池5本必要というのは若干のデメリットかもしれません。

あと、地味に便利なのが、このディスプレイにはマグネットが備わっていて、鉄製の盤や柱等にくっつけておくことができます。

このような細かい使い勝手の良さもしっかりと考えられています。

フレキシブル電流プローブ

様々な場面で活躍してくれるアタッチメントがこのフレキシブル電流プローブです。

プローブのケーブルは1.8mの長さがあるので、これだけでもある程度測定物から離れて電流の計測をすることができます。

こちらが測定対象のケーブルを一巻きするループ部分。

ループ部分は柔軟なワイヤーを使用しているので、測定対象のケーブルが狭いところにあっても楽にワイヤーを通せます。

鍵のマークがついている方を回すと簡単にワイヤーの先端を取り外すことができ、

このようにして測定対象の電線にループさせればOKです。

クランプメーター本体にはこのように接続します。

あとは、ロータリースイッチを「iFlex」に合わせれば測定準備完了です。

ちなみにこのフレキシブル電流プローブは、ループ部分の中心に測定対象の電線を通した時が最も精度が高くなります。中心から外れていくと段々精度が落ちていくので、出来るだけ電線を通す位置はループの真ん中になるようにして下さい。

テストリード

付属のテストリードです。とても柔軟でしなやかなケーブルなので、非常に取り回しがいいですね。

このテストリードは先端の樹脂部分をひねると、測定対象にあてる金属部分の露出具合を変えることができます。

通常の状態では先端の針部分はこれぐらいしか露出していませんが、

テストリードの赤と黒の樹脂部分をひねると、このように先端の針が露出します。この状態にすることで、100Vコンセントなどの狭い箇所の測定や付属のワニ口を取り付けることができるようになります。

クランプメーター本体にはこのように接続して使用します。

テストリード用ワニ口

テストリードの先端に接続して使用するワニ口です。

測定対象から離れた位置で電圧を測りたい時、テストリードの先端にこのワニ口を取り付けて端子に噛ませておけば、手でテストリードを端子にあて続ける必要がなくなります。

テストリードに取り付ける時は、先端の樹脂を回して針の部分を露出させて差し込むだけです。

ワニ口の先端もしっかりと樹脂で絶縁処置がされています。

実際に使ってみる

実際に装置のモーターを動かして電流測定を行ってみます。

フレキシブル電流プローブを使う

フレキシブル電流プローブを使って、直入れ駆動のモーター電流を測定してみました。

フレキシブル電流プローブをセット

まずはフレキシブル電流プローブをクランプメーター本体に接続し、プローブのワイヤーをモーターの配線にセットします。複数のモーターの電流を測定したい場合、写真のように測定したいモーター配線へ一気にループさせると、セットし直す手間が省けます。

あとはローターリースイッチを「iFlex」の位置にして、ディスプレイを取り外して装置から離れます。

クランプメーター本体はこのようなかたちで制御盤の中に置いておきます。

電流値を測定

それではモーターを遠隔で動かして電流値を測定してみます。

外して持ってきたリモート・ディスプレイを見てみると

ちゃんと電流値が表示されていますね。ディスプレイはマグネット内蔵なので、こうやって鉄製の扉などにくっつけることが出来てとても便利。

この装置は20mほど自走するのですが、クランプをセットして盤の扉を閉じた状態で20m離れても、何とか通信状態を保っていました。なかなかやりますね。

クランプメーター本体で測定

今度はクランプメーター本体だけで測定してみました。

本体を直接セット

クランプメーター本体を測定したいモーターの配線にクランプさせます。

端子台のところではクランプ部分が入らなかったので、端子台から離れた位置で配線を探してクランプメーターを取り付けました。

ロータリースイッチを「〜A」に合わせてディスプレイを取り外します。

電流値を測定

こちらも問題なく電流値が表示されました。ディスプレイにはクランプメーター本体で測定していることが分かるよう、クランプを模したアイコンが表示されています。

こちらもフレキシブル電流プローブの時と同様、20mぐらい離れてもなんとか表示を保っていました。

インバータ接続のモーターを測定

次はインバータに接続されているモーターの電流値を測定してみました。

フレキシブル電流プローブをセット

インバータの出力側(モーターに接続されている方の配線)にフレキシブル電流プローブをセットします。クランプメーター本体でもいいのですが、ここでもクランプ部が大きくて入らないので、フレキシブル電流プローブを使います。狭いところではこのプローブが本当に役に立ちますね。

ちなみに、Fluke 381はTrue RMS(真の実効値)に対応しているので、インバータに接続されたモーターの電流値も問題なく測定することが可能です。

クランプ本体はこのようにして置いておきます。

電流値を測定

今度は装置から5mほど離れたところで測定を実施、こちらも問題なく測定ができました。

ディスプレイを外して離れたところで測定できるのは本当に便利ですね。Fluke 381はこれからも僕の仕事で大活躍してくれそうです。

ひでくん
ひでくん

Fluke 381は機能満載だね

Fluke 381のメリット

Fluke 381を使ってみて感じたメリットについてです。

離れた位置で測定ができる!

やっぱり何と言っても、Fluke 381の最大の特徴であるリモート・ディスプレイによって離れた位置で測定出来るのがとても便利。

しかもただ便利なだけでなく、動く装置から離れることができるということは作業者の安全確保にも繋がります。

退避距離を保ちつつ測定作業が行えるという、安全と作業性が両立できるところがこの製品の最大のメリットかなと思います。

約10mの長距離通信

IEEE802.15.4という無線規格の採用により、最大約10mまでディスプレイと本体を離すことが出来る点も大きなメリットの1つです。

Bluetooth接続と違って外部からのノイズにも強く、途中で通信が途切れたといったことも僕の使用上ではありませんでした。

ただ長距離を通信出来るだけでなく、接続の安定性もこの製品の魅力の1つと言えます。

ただし、制御盤などの鉄製の箱に入れて扉を閉じてしまうと、安定的に通信できる距離が想定よりも短くなる可能性があるので、注意して使用するようにして下さい。

幅広い測定範囲

Fluke 381は本体のクランプ部分で最大AC/DC:999.9A、フレキシブル電流プローブを使用すると最大AC:2,500Aまで測定することが可能です。

大は小を兼ねるといいますが、ここまで幅広い測定レンジがあると様々なシーンにこれ1個で対応することができますね。

頑丈

クランプメーター本体を手に持った瞬間、ちょっと落としたぐらいでは壊れないなという安心感があるぐらい、とても頑丈な造りをしています。

現場での測定作業は様々な環境の中を移動して回ったりするので、頑丈な造りというのはとても有り難いですね。

校正がとれる

どちらかと言うと”飛び道具的”なクランプメーターのような気がしますが、ちゃんと校正をとることができる測定器です。

なので、事前に校正をとっていれば、官庁関係や大手企業など校正証明を求められるような仕事でも使うことが可能です。

Fluke 381のデメリット

これだけ便利なFluke 381ですが、僕が感じたデメリットについてもお伝えしておきます。

本体のクランプ部が大きい

本体のクランプ部が大きめなので、クランプできる箇所が限られてしまう点が少しデメリットに感じました。

測定範囲が狭くてもいいので、もう少しサイズが小さい機種がラインナップにあれば言うことなしなのですが。

狭い場所での測定はフレキシブル電流プローブを使うようにしましょう。

単四乾電池が5本必要

本体に3本・ディスプレイに2本の合計5本の単四乾電池が必要になります。

ディスプレイの電池が無くなると、本体の電池がまだ残っていてもディスプレイ表示が出来なくなるので、電池残量には少し気を使う必要があります。

この点が少しデメリットに感じました。

電流・電圧表示は小数点第1位まで

測定レンジが広いので仕方ないのかもしれませんが、測定値の分解能が電流は0.1Aで電圧は0.1Vになります。

なので、測定値は小数点第1位までしか表示されません。

小数点第2位までの表示を求めている方には少し不向きかもしれません。

Fluke 381はエンジニアの良き相棒

以上、Fluke 381について僕なりに感じたことをお伝えしました。

Fluke 381の最大の特徴であるディスプレイを外せるという機能は、様々な場面で役に立つ素晴らしい機能です。

僕自身、離れた場所で測定できる測定器が欲しくてを色々探してみましたが、いまいち良い製品に巡り会うことができませんでした。Bluetooth接続できるものもありますが、ちょっと面倒くさいですしね。

Fluke 381はそんな僕のニーズにドンピシャではまった製品でした。

測定作業で同じ悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、Fluke 381を是非ご検討されてみては如何でしょうか。

きっと良き相棒になってくれると思いますよ。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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