【何が違う?】RS-232CとRS-422の特徴について解説
工場の中には様々なFA(ファクトリーオートメーション)設備が稼働しています。
これらの設備は単体で動くだけでなく、他の設備と情報を共有しながら連動して動いていることが多いです。
設備間で情報をやり取りするために行われること、それが「通信」です。
通信には様々な規格がありますが、工場内のFA設備でよく使われる通信規格が「RS-232C」と「RS-422」です。
この記事では、それらの通信規格について特徴や違いについて解説していきます。
「RS-232C」と「RS-422」は今でもよく使われる王道の通信規格です。
そもそも「RS-〜」って何?
RS-232CとRS-422「シリアル通信」に分類される通信規格の一種です。
かつて、アメリカに「EIA」という電子機器や通信機器の規格を標準化していた団体が有って、そのEIAが策定した規格として知られています。
シリアル通信とは複数のデータを1つずつ連続で送受信する通信方式を指します。
電子機器の中ではデータは全て2進数(0か1)で処理されています。この2進数のデータを送信側が受信側に対して分かるように受け取れるよう、お互いが規格に則ったかたちで通信を行う必要があります。
引用先:CONTEC(シリアル通信とは)
この規格を標準化したのが「RS-〜」という通信規格なんです。
どうやってデータを伝達しているの?
「RS〜」はシリアル通信の一種であることは分かりましたが、設備間をケーブルで接続して実際どのような方法でデータを伝達しているのでしょうか?
シリアル通信は大きく分けて次の2種類の方式でデータを伝達します。
電流の変化でデータを伝達する
接続したケーブルに流れる電流が4mAなら「0」、20mAなら「1」という風に決めて、「0・1・1・0・・・」という2進数のデータを電流の変化で表現して伝達する方式です。
このような通信方式は「カレントループ」と言います。
電圧の変化でデータを伝達する
接続したケーブルに掛ける電圧が+5Vなら「0」、−5Vなら「1」という風に決めて、「0・0・1・0・・・」という2進数のデータを電圧の変化で表現して伝達する方式です。
RS-232C・RS-422・RS-485は、この「電圧の連続変化でデータを伝達する」方式でシリアル通信を行っています。
RS-232Cの特徴
RS-232Cはかなり昔から制御機器やコンピュータなどと通信するために使われてきました。
新規で装置を導入する場合などは機器間の通信はイーサネットで行われるケースが増えてきましたが、FA関連の設備においてはまだまだ現役の通信規格です。
配線
RS-232Cの配線例の1つが上記の通りです。
TXD(SD)はデータ送信、RXD(RD)はデータ受信、SGはシグナルグランドを表しています。
シグナルグランドとは信号線の基準となる0Vの線です。なので、TXD−SG間で何ボルト?RXD−SG間で何ボルト?という風にこの間の電圧が何ボルトかによって「0」なのか「1」なのかを表現しているわけですね。
ちなみに、DTR(ER)はデータ端末レディ、DSR(DR)はデータセットレディを表します。
データ端末レディは「自分は正常に動作しているよ」を相手に知らせる為、データセットレディは「相手が正常に動作しているよ」を相手から受け取る為の信号線です。
特にこの信号をやり取りしない場合は、図のように短絡しておけば通信ができます。
信号線の電圧
RS-232Cの場合、−5〜−15Vで「1」、+5〜+15Vで「0」と規定されています。
なので、TXD−SG間もしくはRXD−SG間に上記の電圧を正確な時間間隔で上げたり下げたりすることで「0」なのか「1」なのかが分かるようになります。
引用先:システムサコム工業株式会社(RS232CとRS422)
電圧の幅については各社バラツキがあるようですが、大体±6〜10ボルトぐらいで通信しているようです。
通信速度
RS-232Cの最大通信速度は20kbps以下とされています。
よく使われる通信速度は大体9,600bpsが多い印象です。
通信距離
RS-232Cで通信する場合、機器間のケーブル長は最大15mとされています。
なので、離れたところにある機器との通信にはあまり向きません。
あくまで同じ部屋内といった直ぐ近くにある機器同士の通信に向いていると言えるでしょう。
メリット・デメリット
RS-232Cには次のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 少ない配線でシリアル通信が可能
- 対応している機器が非常に多い
RS-232Cは最低3本の通信線があればシリアル通信ができるので、構造が簡単で導入コストもそこまで高くないというメリットがあります。
また、何十年も前から使われている古い規格と言えど、まだまだ現役で使える非常に汎用性の高い規格なので、今も昔も対応している機器が非常に多いというメリットも存在します。
デメリット
- 外部からのノイズに弱い
- 機器間の通信距離が短い
- 機器間の通信速度が遅い
RS-232Cはデータの「0」か「1」かの判定が電圧の上下で行われている関係で、外部からのノイズに弱いというデメリットが存在します。ノイズが電圧レベルにも影響を与えるためですね。
接続できる最大ケーブル長が15mという通信距離の短さは、このノイズに弱いというデメリットに起因しています。
通信速度が遅いというデメリットもありますが、この点についてはあまり設備の稼働において影響する場合は少ないです。
RS-422の特徴
RS-422はRS-232Cのデメリットを改良した通信規格で、様々な優位性をもっています。
配線
TXD+(SD+)とTXD−(SD−)はデータ送信、RXD+(RD+)とRXD−(RD−)はデータ受信、SGはシグナルグランドを表しています。
RS-422はデータ送信用とデータ受信用の信号線がそれぞれ+−のツイストペア線で構成されています。
信号線の電圧
RS-422は電圧レベルの高低で信号を判別するRS-232Cとは違って、2本の信号線の電圧差で信号を判別します。これを差動信号伝送と言います。
具体的には以下の通りです。
引用先:株式会社ラインアイ(RS-422とは)
まず伝送データの「0」を表現する場合は、TXD+の信号線の電圧を0V、TXD−の信号線の電圧を+2〜+6Vにします。
そして、伝送データの「1」を表現する場合は、TXD+の信号線の電圧を+2〜+6V、TXD−の信号線の電圧を0Vにします。
つまり、TXD+とTXD−の電圧差([TXD+] −[ TXD−])が−2〜−6Vになる場合は「0」、TXD+とTXD−の電位差が+2〜+6Vになる場合は「1」となります。
RS-422はこの一連の電圧変化を正確な時間間隔で行うことで通信しています。
通信速度
RS-422の通信速度は最大10Mbpsと、RS-232Cと比べてかなり高速で通信することが可能です。
通信距離
RS-422で通信する場合は機器間のケーブル長が最大1,200mと、RS-232Cと比べてかなり遠くまで通信することが可能です。
なので、同じ工場内での機器間通信においてはRS-422でほぼ対応することができます。
メリット・デメリット
RS-422のメリットとデメリットについてです。
メリット
- 外部からのノイズに強い
- 機器間の通信距離が比較的長い
- 機器間の通信速度が比較的速い
RS-422のメリットはRS-232Cのデメリットを差動信号伝送方式によって克服している点にあります。
信号線の電圧レベルの高低ではなく2種類の信号線の電位差をみるので、外部からノイズが加わったとしても、誤動作しにくいという特徴があります。+側の信号線と-側の信号線に同じようにノイズが加わる為で、電位差としてはそこで影響が出ないからです。
引用先:EDN JAPAN(差動信号伝送のメリット)
また、電圧の振幅が比較的低いため信号の立ち上げと立ち下がりの時間が短くなることから、高速通信が可能となっていることもメリットの1つです。
このように、RS-422はノイズが多く設備間の距離が離れている工場ような環境下で抜群の効果を発揮します。
デメリット
- RS-232Cよりも必要な配線数が多くなる
- 終端抵抗が必要になる
RS-422は差動信号伝送方式を採用していることから、RS-232Cと比較して必要な配線数が多くなります。そのため、コネクタ部分を改造してRS-232CからRS-422に配線を変更することができない場合があります。
またRS-422の場合、送信した信号が受信側の末端で反射して再び送信側に戻り、それが通信に悪影響を及ぼすことがあります。
これを防ぐために、受信側の末端部分に終端抵抗を取り付ける必要があります。この終端抵抗が信号の反射を抑える働きをしてくれます。
終端抵抗がないと絶対通信が出来ないということはありませんが、通信が不安定になるなどの問題が発生する可能性があるため、必ず取り付けておきましょう。
まとめ
以上、FA設備のシリアル通信でよく使われる規格である「RS-232C」と「RS-422」の特徴について解説しました。
どちらにもメリット・デメリットが存在しますので、状況に応じて使い分けることが重要です。それぞれの特性を理解して上手に取り入れていきましょう。
RS-232C | RS-422 | |
伝送方式 | シングルエンド伝送 | 差動信号伝送 |
配線数 | 少ない | やや多い |
最大通信速度 | 20kbps | 10Mbps |
最大通信距離(ケーブル長) | 15m | 1,200m |
ノイズの耐性 | 弱い | 強い |