【ハイバッファーとは?】使用用途や点検方法について解説
クレーンなどの走行する設備は、運転操作を誤ったり制御機器が故障して暴走したりすると衝突する可能性があります。
走行レールにはそれ以上走行しないように鉄製の強固なストッパーが取り付いているので、たとえ暴走したとしてもレールから飛び出すようなことはありません。
ただ、堅い鉄と鉄同士が衝突することになるので、ぶつかった方もぶつけられた方も何かしらの破損は免れません。
そのような事象が発生したときに衝突の衝撃を最小限にしてくれるのが「ハイバッファー」です。
この記事ではハイバッファーの仕組みや使用用途、点検方法について解説していきます。
ハイバッファーとは?
引用先:倉敷化工株式会社(発泡ウレタン緩衝器KUB)
ハイバッファーとは「倉敷化工株式会社」の製品でポリウレタンエラストマー素材でできた衝撃緩衝用の機器です。
ポリウレタンエラストマーとは
ポリウレタンエラストマーはゴムのような優れた弾性を持っていて、様々な環境耐性を備えた機械的強度の高い素材です。
まさに、衝撃緩衝用の素材としてはうってつけですね。
倉敷化工のハイバッファーは発泡体のウレタンエラストマーを使用しているため、ぶつかった時に大きく変形することで、より高い衝撃を吸収力を実現しています。
衝撃吸収の仕組み
引用先:倉敷化工株式会社(KUB 発泡ウレタン緩衝器)
倉敷化工製ハイバッファーがぶつかった時の衝撃エネルギーを吸収できるのは、自らをバネのように変形させられるためです。
これはウレタン内部が気泡構造であるためで、この気泡によって衝撃を受けたときに全体を通常のウレタンと比較して約2倍圧縮できるそうです。
この気泡構造はぶつかった時にハイバッファー本体が膨張しにくいことにも貢献しています。
引用先:倉敷化工株式会社(発泡ウレタン緩衝器KUB)
図のように、約75%まで圧縮されても本体の外径は+30%しか膨張しません。なので、外径に対してより広い取付スペースを取る必要もなく、比較的コンパクトに取り付けることができます。
ハイバッファーの選定
ハイバッファーはぶつかった時の衝撃エネルギーを計算し、必要なウレタンフォームの体積を割り出してハイバッファーを選定します。衝撃エネルギーが高くなるほど必要な体積は大きくなります。
ハイバッファーは外径が大きくなればなるほど、段数が多くなればなるほど体積が増します。なので、1ランク小さい外径のものでも段数が多ければ体積は多くなる場合があります。
ハイバッファーの外径はφ80㎜から最大φ600㎜まで、段数は1段から多いもので最大12段までラインナップされているものもあり、取り付ける場所によって外径を大きくするか、段数を多くするかで最適なものを選定していきます。
ハイバッファーは外径が小さいと2〜4段程度しかラインナップがありませんが、外径が大きくなると積める段数も増えていきます。
ここでは具体的な選定方法には触れませんが、カタログに選定方法が載っていますので良ければご参考にしてください。→倉敷化工カタログ←
ハイバッファーの使用用途
ハイバッファーはクレーンや搬送台車など、レール上を走行する装置が衝突したときの衝撃緩衝用として広く用いられています。
走行用のレールの両端には機械的なストッパーが取り付けられているのが一般的で、そのストッパーの先端に取り付けるか、クレーンなどの装置側に取り付けて使用します。
ハイバッファーの取り付けはボルト4本で済むので、取り付け・取り外しも簡単です。
ハイバッファーは劣化する
ハイバッファーはある程度の期間使用していると劣化していきます。新品の時はゴムのような弾性がありますが、時間が経つと段々硬くなってきます。
硬くなってくると振動等によって根元がひび割れてきて、最悪の場合脱落してしまいます。
ヒビ割れたハイバッファー
これは長期間使用してヒビが発生しているハイバッファーです。根元のところにヒビが入っているほか、本体の方にも何箇所かヒビが確認できます。
この状態になるとかなり硬化が進んでいるので、ぶつかった時の衝撃を吸収する力が大分低下します。
このハイバッファーは一度もストッパーに衝突していませんが、経年劣化が進行するとこのような状態になります。
衝突したハイバッファー
これは衝突して完全に破損してしまったハイバッファーです。元々経年劣化により硬化が進んでいたものですが、その状態で衝突してしまったため潰れて元のかたちに戻らなくなってしまっています。
硬化したハイバッファーは衝撃吸収能力がかなり低下しますので、早めに交換しましょう
劣化したハイバッファーによる影響
劣化したハイバッファーをそのままにしておくと様々な悪影響があります。
衝撃吸収能力の低下
前の項でもお話しましたが、劣化したハイバッファーは硬化が進んでいるため衝撃吸収能力が低下します。
そのため、選定時に想定した衝撃エネルギーを吸収しきれず、予期せぬ破損や事故が発生する可能性があります。
バッファー本体の脱落
劣化したハイバッファーは根元がヒビ割れてくるため、それが進行すると振動などで最悪の場合脱落することがあります。
クレーン等の搬送装置からバッファーが脱落するとセンサー等に噛み込んで破損させてしまうなど、トラブルに発展するケースがあります。
また、高所に取り付けていた場合などは、落下してきたバッファーが人を直撃するなど安全上の問題が出てきます。
なので、特に高所で取り付けて使用する場合は安全ネット付きの型番が選べますので、必ず安全ネットを取り付けるようにしましょう。
引用先:倉敷化工株式会社(KUB 発泡ウレタン緩衝器)
ハイバッファーの点検方法
ハイバッファーの機能を維持するためにも、日頃の点検はしっかり行いましょう。
特に屋外は雨風や紫外線の影響をかなり受けるので、入念にチェックしてください。
ハイバッファーの外観をチェックする
まずはハイバッファー外観にヒビ割れや損傷などがないか確認します。この時に深刻な損傷が確認されるようなら交換の準備をしましょう。
ストッパーに衝突したことがある場合は、丸い跡がストッパーに付いていることもあります。
取付ボルトに緩みがないか確認する
ストッパーやハイバッファーの取付ボルトに緩みがないか、損傷が無いか等をチェックします。特にストッパーのボルトが損傷していると、万が一の場合に大きな事故に発展する可能性があります、定期的にしっかり確認しましょう。
ハイバッファーの劣化状態をチェックする
ハイバッファーの劣化状態を以下の方法でチェックできます。
メーカー推奨は幅6mm、厚さ0.8mmぐらいです。
+ドライバーでも代用はできます。
ドライバーの先端をバッファー本体に押しつけます。
基本過重は20Nとのことで、約2kgに相当する力でドライバーを突き立てていきます。
STEP2の力で本体にドライバーが刺さるようであれば、硬化が進行しているサインです。
もしSTEP2の力以下で簡単にドライバーが刺さるようであれば、劣化がかなり進行していますので、直ぐに交換します。
このようなスリーステップでチェックしてください。ちなみに、新品に近いハイバッファーの場合はドライバーを突き立てても刺さらずに反発します。
使用年数をチェックする
メーカーが定めるハイバッファーの寿命の目安は、使用環境によって左右されますがおおむね屋内で3年・屋外で2年です。
定期点検と合わせて使用年数もチェックしておくことが重要です。
脱落しそうなハイバッファーは落としておく
硬化して根元がヒビ割れてきているハイバッファーはいつ脱落するか分かりませんので、トラブルを未然に防止するためにあえて落としておくのも1つの手です。
足で蹴るなどして落下するような状態のものは、残しておく意味はないどころか逆に仇となる可能性の方が高いです。なので落としておいて早急に交換するようにしましょう。
ハイバッファーは縁の下の力持ち
以上、ハイバッファーの仕組みや点検方法等について解説しました。
ハイバッファーは衝突エネルギーを吸収して衝撃を最小限に抑えてくれる縁の下の力持ち的な存在です。
安全装置的な役割が大きく、機能維持のためにも日頃の点検はしっかりと確実に行う必要があります。
少しでも点検で異変を感じたときは、消耗品と考え直ぐに交換の準備をしましょう。
何事も早めが肝心です。