【現場で出来る】ローラーチェーンの切り方と使用する工具について解説
産業機械や設備などの駆動用途でよく使われているローラーチェーン。
そのローラーチェーンを交換する際に必ず発生する作業が、ローラーチェーンを適切な長さで切るという工程です。
駆動側(ドライブ側)と被駆動側(ドリブン側)の距離やスプロケットの大きさなどの条件が装置によって異なるため、チェーンを切るという作業は現場で行う場合がほとんどです。
しかし、作業が初めての方や苦手な方にとっては、方法や道具の使い方に戸惑うこともあるかと思います。
この記事では、ローラーチェーンの切り方やそのポイント等について解説していきます。
道具の使い方さえ覚えてしまえば、そんなに難しい作業じゃないよ!
安全にも配慮して作業してくださいね。
ローラーチェーンのおさらい
まずはローラーチェーンの構造についておさらいしておきましょう。
ローラーチェーンの一般的な構造は以下の通りです。
引用先:大同工業株式会社(ローラーチェーンQ&A)
ローラーチェーンはブシュとローラーを内プレートでサンドイッチした「内リンク」を、外プレートとピンで構成された「外リンク」で連結することによってチェーンとしての体をなしています。
つまり「チェーンを切る」という作業は、この外リンク分解するという作業になります。
外リンクを分解するにはピンを抜き取ってやればいいわけですが、ピンの側面は「カシメ」が行われているため、何かで叩いたぐらいでは抜けないような仕組みになっています。
大きなチェーンになると「カシメ」ではなく割ピンなどで抜け止めが行われています。
このカシメられているピンをどうやって抜き取るのか?が、「チェーンを切る」という作業の最大のポイントとなるわけですね。
大きなチェーンだったら、割ピンを抜くだけだから簡単なんだけどな〜
カシメを削ってチェーンを切る
専用工具が無かった時代から行われてきたのが「カシメを削る」という方法です。
今ではチェーンを押さえるバイス台やピンを抜き取るための工具など、より作業がし易くなるようなものが多数販売されています。
1.チェーンを固定する
まずはチェーンが動かないように固定します。
一般的によく使われるバイス台でもいいですが、椿本チエインからチェーン専用のバイス台が出ていますので、それを使うとより確実にホールドできます。
引用先:株式会社 椿本チエイン(チェーン切断工具)
引用先:株式会社 椿本チエイン(チェーン切断工具)
椿本チエインの専用バイス台は、チェーンのローラー部分だけを挟めるような構造になっており、外リンクだけを分解する用途に非常に適しています。
ただし、専用バイス台はローラーチェーンの大きさや列数によって形番が異なるため、メンテするチェーンが決まっている方以外は、無理に揃える必要はないでしょう。
2.カシメ部分を削る
チェーンを確実に固定することができたら、グラインダーを使用してピン側面のカシメ部分を削ります。
引用先:株式会社 椿本チエイン(チェーン切断工具)
ピンの先端と外リンクが面一になるぐらいまで削ってください。
3.ピンを抜き取る
ピンのカシメ部分を削ることができたら、あとはピンを抜き取ることで外リンクと内リンクを分離することができます。
ピンを抜く時、昔は細い丸棒のようなものを使って抜いていましたが、椿本チエインから専用の抜き取り工具が売られています。
引用先:株式会社 椿本チエイン(チェーン切断工具)
まずは上の「一次パンチ」を使って、外リンクからピンを抜きます。
カシメを削ったピンに一次パンチを当ててハンマーで打撃すると、外リンクからピンが簡単に抜き取れます。
引用先:株式会社 椿本チエイン(チェーン切断工具)
次に使うのが上の「二次パンチ」です。
中に入りこんだピンが抜き取りやすいよう、先端は長く細い形状をしています。
これを中のピンに当てて叩いてやることでピンが抜け落ち、外リンクと内リンクを完全に分離することができます。
上記では専用工具を用いて解説しましたが、それに近い工具が手持ちであれば同じように作業が可能です。
専用工具が無かった時代は色々苦労していました。
チェーンカッター(チェーンスクリュー)を使う
次にチェーンカッターという専用工具を使ってチェーンを切る方法です。
チェーンカッターとはチェーンのピンを抜き取ることに特化した製品で、ピンのカシメ部分を削らないで作業ができるというメリットがあります。
メーカーによってはカシメ部分を削ってから使うよう注意書きがありますが、僕は削らずそのまま作業してしまっています。
無理やりピンを抜き取ろうとするとチェーンが壊れる可能性があるので、チェーンカッターを使う場合は慎重に作業を行うようにしましょう。
椿本チエイン製チェーンスクリュー
椿本チエインから売られている「チェーンスクリュー」という商品を使ってチェーンを切っていきます。
まずは、チェーンスクリューをチェーンの側面に取り付けます。
チェーンスクリューのチェーンを挟む部分はこのようになっており、持ち手部分を引くと挟む部分が開くような機構になっています。
このようにチェーンの側面にセットします。ピンを押し出す先端部分がピンの中心にくるように微調整を行いましょう。
チェーンにセットすることができたらこの手回し部分を時計回りに回していきます。
すると、先端がスクリューの力を利用してピンを押していき、外リンクからピンを抜き取ることができます。
ただし、1箇所だけピンを押し出していくと写真のような状態になることがあります。押し出したピンの反対側が引っ掛かって、プレートを押し上げてしまっています。
これは、この工具がチェーンの片方しか支持していないためです。
外した外リンクを見てみると、ピンの付け根が曲がってしまっていますね。このような状態になるまで無理にピンを押してしまうと、分解が困難になってしまうだけでなく残しておきたい内リンクも痛めてしまう恐れがありますので、慎重に作業するようにしてください。
もう一方のピンと合わせて何回も均等に押していくようにしていきましょう。
均等に押していくと、ピンから外プレートが綺麗に外れました。
再度チェーンスクリューをセットして内リンクからピンを抜き取ります。
目的の長さにチェーンを切ることができました。
尚、椿本チエイン製チェーンスクリューには以下のような特徴があります。
ハンドルを回す力が少なくて済む
椿本チエイン製チェーンスクリューは、後述するチェーンカッターよりもハンドルを回す力が少なくて済みます。そのため、何回か付け替えてピンを押し出す必要がありますが、回す力がそんなに必要なく作業が非常に楽です。
本体が軽い
本体重量は後述するチェーンカッターよりも軽いため、取り回しが非常にしやすいです。
1つで数種類のチェーンに対応している
今回使用した「RS-CS-B1」という製品は、これ1つでRS40〜RS60のチェーンに対応しています。なので、チェーンのサイズ毎に工具を用意しなくても済むというメリットがあります。また、これ1つで1列と2列両方のチェーンにも対応しています。
ピンを押し出す部分が短い
チェーンスクリューのピンを押し出す先端部分はそんなに長く有りません。そのため、ハンドルを締め切ったとしても一発でピンを出しきることはできません。何回かセットし直して段階的に押していく必要があります。
反対側の外プレートを変形させてしまう恐れがある
片側のプレートしか押さえていない構造であるため、1本のピンだけをずっと押し続けてしまうと反対側のプレートに変な力が加わって曲がってしまうことがあります。
チェーンの状態を見て何回か付け替えながら、均等にピンを押し出していくようにしましょう。
今回初めて使ってみたんだけど、結構便利な工具だったよ!
FUJITAN製チェーンカッター
僕が所有しているのは「FUJITAN」製チェーンカッターなのですが、チェーンカッターと検索して最初に出てくるのが「片山チエイン」製のチェーンカッターです。
このタイプのチェーンカッターは、チェーンの両側を押さえてピンを抜き取ることができるというメリットがあります。このメリットがどのように影響してくるのか、実際に作業して確かめてみましょう。
まずはチェーンをチェーンカッターにセットしていきます。
黒色のローレットの部分を反時計方向に回して内側のチェーンを挿入するところを開き、チェーンが本体に挿入できる状態にします。チェーンを本体に挿入したら、黒色のローレットを今度は時計方向に回してチェーンを挟みます。
今回カットするチェーンはRS60なのでRS60用を使います。
黒色のローレットの先端にはくぼみが有り、チェーン側面から出ているピンが丁度そのくぼみに入り込むようになっています。
しっかりとチェーンをホールドできたら、外側のハンドルを回していきます。
ハンドルの先端がチェーンのピンを最後まで押し出してくれるので、一発で外プレートからピンを取り外すことができます。
椿本チエインのチェーンスクリューとは違ってチェーンを両方で押さえているので、反対側の外プレートが曲がらずにスムーズにピンを抜くことが可能です。
外リンクを変形させることなく分解することができました。
この形のチェーンカッターについては次のような特徴があります。
外プレートが変形しにくい
両端からチェーンを押さえてピンを抜き取る構造であるため、1本のピンをずっと押し続けてもチェーンの変形が起こりにくいです。なので、最初のセットさえしっかり行えば、ピンの抜き取りに失敗するという確率はかなり低いかと思います。
押し出す部分が長い
ピンを押し出す部分の先端が非常に長いため、椿本チエイン製チェーンスクリューのように何回も付け替えなくても、一発でピンを完全に抜き取ることができます。
ハンドルを回す力がある程度必要
椿本チエイン製チェーンスクリューと比べて、特に外プレートからピンを押し出す最初の方で回す力がかなり必要になります。
外プレートからピンが抜けてしまえば途端に回す力が軽くなりますが、やはり最初はかなりハンドルが重い(かたい)です。
なので、1日に何回もチェーンをこの工具で切っているとかなり疲れてしまうと思います。
チェーン1種類にしか使えない
椿本チエイン製チェーンスクリューは1つで何種類ものチェーンに対応していますが、この手のチェーンカッターについては基本的にチェーン1種類しか使うことが出来ません。
なので、切るチェーンの種類がRS40・RS50・RS60と3種類あるとしたら、チェーンカッターも3種類必要になってきます。
2列のチェーンについても同様で、対応するものを準備する必要があります。
重い
椿本製チェーンスクリューと比べて重く、持ったときにズッシリときます。
そのため切るチェーンの種類がたくさんあると、その分荷物が多く重くなります。
ただ、重いということはそれだけ本体が頑丈ということですので、壊れにくいというメリットはあります。
チェーンカッターと言えばこれですね、僕も非常にお世話になってきた製品です。
まとめ
以上、ローラーチェーンの切り方や使用する工具について解説してきました。
チェーンを切る作業は「外プレートからピンを抜く」ことであり、今ではそのための専用工具がたくさん販売されています。
用途や好みに合わせて幅広く選択することができますので、是非ご自分にあった工具を選んでみてください。