【豆知識】ベアリングの型番の意味って何?見方を詳しく解説
機械を動かすのに欠かせない機械部品の1つ「ベアリング」
ベアリングの型番を検索すると「6005」とか「6310ZZ」とか、めちゃくちゃ種類が沢山あって「なんかややこしい!」と思ったことはないでしょうか?
メンテで交換する為に図面で型番を調べた時「本当にこれで合ってるのかな?」と都度疑問を持ってしまうこともしばしば。
一見すると数字や記号の羅列にしか見えないベアリングの型番ですが、実はベアリングの仕様を表している意味のある表記なんです。
この記事では、そんなベアリングの型番の見方について覚えておくと便利な豆知識をお伝えします。
型式の見方を覚えておくと、とっても便利ですよ!
1.型番の表記
引用:(有)大西エアーサービス:ベアリング呼び番号の見方
ベアリングの型番は上記のような数字や記号で表されます。
①形式番号
形式番号はズバリ、ベアリングの構造を表す数字・文字になります。
「6」:深溝玉軸受
深溝玉軸受は写真のように最も一般的な軸受(ベアリング)ですね。
「7」:アンギュラ玉軸受
見た目は普通の深溝玉軸受と似ていますが、ラジアル荷重(真上から真下に掛かる荷重)とアキシアル荷重(横方向に掛かる荷重)を同時に受けられるよう、ベアリングの外輪と玉と内輪それぞれの接触面に角度を持たせた構造になっています。
同じサイズの深溝玉軸受と比べるとアンギュラ玉軸受の方が定格荷重が大きくなります。
「NU」:円筒コロ軸受
円筒コロ軸受はその名の通り、軸受の玉の部分が円筒状のコロになっているのが特徴です。円筒になっているので、玉と比べてより大きなラジアル荷重を受けることができます。
他にもメーカーやベアリングの構造によって色々表記がありますが、主なところはこれぐらいかなと思います。一番仕事の中で出てくる表記は「6」の深溝玉軸受ですね。
②直径系列
直径系列は内径寸法に対する外径寸法の比率を表しています。
数字の「7」から始まって「7」「8」「9」「0」「1」「2」「3」「4」と数字が進むに従って外径寸法が大きくなっていきます。
なので、例えば同じ内径寸法のベアリングがあったとして、直径系列が「8」のものよりも「2」のものの方が大きなベアリングになるというわけですね。
③内径番号
軸を通す内輪の内径寸法を表す数字になります。
具体的には「00」:10mm、「01」:12mm、「02」:15mm、「03」:17mm、「04」:20mm、「05」:25mm、「06」:30mm・・・と続きます。
実はこの内径番号を5倍すると内径寸法が計算できます。
例えば「06」であれば6×5=30mm、「08」であれば8×5=40mmといった具合です。例外として内径番号「00」〜「03」の内径寸法は単純に5倍ではないので、この表記が出てきたときは調べるか内径寸法を覚えておくと良いでしょう。
④シール・シールド記号
シール・シールドはベアリングの側面に取り付けられている部品で、ベアリングの中にある玉をホコリ等から守るためにあります。
下の写真がシール無し(オープン)のベアリングです。側面には何もなく中が丸見えなのが特徴ですね。④の部分に表記がないベアリングがオープンになります。
オープンのタイプは減速機の中といった油に常に浸っているような箇所に使われていることが多いですね。
「Z」or「ZZ」:シールド付
④の部分に「Z」もしくは「ZZ」が表記されているとシールド付になります。
下の写真がシールド付のベアリングです。オープンのベアリングに金属製のシールドが取り付けられていることで、ベアリングの内部を保護する役割があります。
シールドと内輪・外輪は密着しているわけではないですが、ある程度ホコリ等の侵入を防いでくれます。また、内部のグリースが逃げにくくなるような効果もあります。
「Z」と「ZZ」何が違うのかというと、「Z」は片側シールドで「ZZ」は両側シールドになります。
片側シールドはベアリングの片方だけシールドが付いていて反対側はオープン、両側シールドは反対側にもシールドが付いているという仕様になります。
「LU」or「LLU」:接触形ゴムシール付
④の部分が「LU」「LLU」と表記されていたら接触形ゴムシール付になります。
「Z」・「ZZ」と同じように、「LU」が片側ゴムシール付で「LLU」が両側ゴムシール付です。
「ZZ」等のシールドと異なる点はシールが外輪と内輪に「接触している」というところです。つまりゴムシールが接触して隙間を埋めてくれているので、ベアリングの中にホコリ等がかなり入りにくい構造となっています。
なので、例えば屋外の設備であるとか、ホコリが堆積しやすいところによく使われている印象ですね。
ただし、シールが外輪と内輪に接触しているので高回転の部位にはあまり向きません。モータ電流を測ってみるとやはり電流値が少し高くなります。
このあたりは周囲の環境や設備能力を勘案して、シールドにするのかシールにするのかオープンにするのかを考えて選定する必要があります。
ちなみに、「LU」・「LLU」はメーカーがNTNの場合の表現になります。メーカーがNSKの場合は「DU」・「DDU」と表記されています。
他にも様々な仕様のシールがありますが、よく使われるのは上記2種類かなと思います。
⑤内部すきま
内部すきまとは、ベアリングの内輪もしくは外輪のどちらかを固定して、もう一方を上下に動かした場合に生じる移動量のことを言います。いわば「遊び」というやつですね。
CM:電動機用ラジアル内部すきま
「電動機用」ということですが、様々な用途に使える一番ポピュラーなものになります。ベアリングを買うときに内部すきまを特に指定しない場合は、この「CM」でくることが多いですね。モーターのローターからギアやローラーまで、幅広く使えるので迷ったらこれでいいかと思います。
CN:普通すきま
「CM」と比較して同じか僅かにすきまがある(1μmぐらい隙間量が多い)のが「CN」です。特別な条件が無ければ「CM」もしくは「CN」でも特に大差はありません。
C3:普通すきまより大
「C3」は「CN」と比較して1μm程すきまが多い仕様になります。この「C」の数字が大きくなるほどCNと比較して隙間量が多くなっていきます。「C2」になると「CN」より隙間量が少なくなります。
ベアリングの内部にすきまを持たせる目的は主に2つあります。
1つは運転中の温度上昇で発生した熱で起こる鉄の膨張を考慮し、あらかじめ遊びを設けておくというもの。
もう1つが大きな荷重や衝撃荷重に耐える為に、焼きばめ等で外部から圧縮された状態で取り付けることがあるのですが、その際に生じるすきまの減少を考慮しておくというものです。
これらを考慮して最適な内部すきまのベアリングを選定しないと、寿命や振動の発生に影響を及ぼすことになります。
機械の稼働条件は環境によって大きくされますので、設計者にとってこの最適な内部すきまの選定はかなり難しいのではないかなと思います。
⑥潤滑記号
ベアリングの中にあらかじめ封入されているグリースの種類を表しています。
2AS:アルバニアグリースS2
深溝玉軸受で特にグリースを指定しないで注文すると、標準で封入されてくるのがこの「2AS」になります。
使用温度範囲が-25℃〜120℃とかなり幅広いので、特殊な環境でない限りは問題なく使用することができます。
5K:マルテンプSRL
マルテンプというグリースは冷凍倉庫などの-25℃以上にもなるような環境下でよく使われているグリースになります。
使用温度範囲が-40℃〜150℃と高温側にも2ASより幅があるので、2ASでは対応できないような特殊な環境下ではこの「5K」が選定されます。
また、「5K」についても汎用扱いなので手に入りやすいのも特徴の1つですね。
他にも様々な用途に対応するグリースの銘柄が用意されています。使用用途に応じて使い分けて下さい。
2.表記の意味を理解すれば役に立つ
以上、ベアリングの型番の表記についてお伝えしました。
ベアリングの型番表記には他にも種類やバリエーションがありますが、一番よく使われている深溝玉軸受の表記を覚えると他にもある程度応用が利くようになります。
ベアリングの型番表記をある程度覚えておけば型番だけである程度の仕様が分かりますし、図面で型番を見たときに「何かおかしくないか?」といったことに気付けて、現場での不適合発生を事前に防止することにも繋がります。
是非今後の仕事に中に活かしていって下さい。