【薄形(小形)リミットスイッチの特徴とは?】メリット・デメリットについて解説
産業機械などの装置の制御によく使われている「リミットスイッチ」。
一般的によく使われるのは、下の写真の「標準形」と呼ばれるリミットスイッチです。
実はリミットスイッチはレバーの形以外にも様々な形状をしたものがあって、「薄形(小形)」と呼ばれるリミットスイッチが存在します。
引用先:MonotaRO(オムロン 小形リミットスイッチD4C-)
上の写真が「薄形(小形)」と呼ばれるリミットスイッチです。
※以下「薄形(小形)」=「薄形」という
標準形と呼ばれるリミットスイッチとはかなり形が異なりますね。
この薄形リミットスイッチは標準形と違ってサイズが小さく・薄く作られているのが特徴で、標準形にはないメリットが存在します。
この記事ではそんな薄形リミットスイッチについて詳しく解説していきますので、是非参考にしてみてください。
リミットスイッチって本当に色んな種類があるよね〜
それぞれの特徴を活かして上手に活用しましょう
薄形リミットスイッチとは?
引用先:MonotaRO(オムロン 小形リミットスイッチD4C-)
薄形リミットスイッチとは小形リミットスイッチとも呼ばれ、標準形のリミットスイッチと比べて小さく・薄く作られています。
リミットスイッチのアクチュエータの種類も多彩で、よく使われるローラーレバー形をはじめローラープランジャ形やロッド形など、標準形ほどではありませんが一通りの種類がラインナップされています。
引用先:MonotaRO(オムロン 小形リミットスイッチD4CC)
中には「センターローラーレバー形」と呼ばれる先端にローラーレバーが付いているものもあり、薄形という特徴を最大限活かすことができるアクチュエータも存在します。
センターローラーレバー形は薄形リミットスイッチにしかなアクチュエータだよ
薄形リミットスイッチはアズビル(旧山武)も昔作っていたのですが、現在はオムロンしか作っていないという状況になっています。
ただ、取付互換性はありますので、元々アズビル製の薄形リミットスイッチを使っていたところにオムロン製のものを取り付けることは可能です。
薄形リミットスイッチの特徴
薄形リミットスイッチの特徴は次の通りです。
薄い
繰り返しにはなりますが、薄形リミットスイッチの最大の特徴が「薄さ」です。
引用先:オムロン(WL-N / WLG)
標準形のリミットスイッチは本体の厚みが約42㎜、ローラーレバー形の場合は合計約60㎜の厚みになりますが、
引用先:オムロン(D4C)
薄形のリミットスイッチの場合は本体の厚みが約16㎜ほどしかなく、ローラーレバー形の場合であっても合計約50㎜となります。
引用先:オムロン(D4C)
ちなみにセンターローラーレバー形の場合は、上図のように本体からレバーがはみ出ないので、本体の厚み16㎜以内に納めることもできます。
このように、標準形と比べて非常に薄く作られているのがこの薄形の最大の特徴となっています。
特に小形機械によく使われている印象ですね
ケーブル内蔵
薄形のリミットスイッチは、光電センサと同じように本体にケーブルが内蔵されているのが特徴です。
引用先:MonotaRO(オムロン 小形リミットスイッチD4C-)
ケーブルの引き出し口は樹脂で固めてあるため、別途パッキンを用意するなどの防水処理を自分たちで行う必要もありません。
ケーブルは3種類あり、一般的なVCTF・耐油性VCTF・環境に配慮したSJT(O)ケーブルの中から用途に合わせて選択することができます。
ちなみに、薄形リミットスイッチにはケーブル内蔵タイプの他に、コネクタ接続ができるタイプもラインナップされています。
引用先:DigiKey(D4CC-4024)
接続するケーブルはオムロンのXS2Fシリーズで防水コネクタを使用しているので、防水性を保ちながら定期交換する場合にもこちらの方が有利です。
高いシール性
薄形リミットスイッチはケーブル引き出し口のモールド処理に加えて、アクチュエータの稼働部分にもパッキンやダイヤフラムを設けることで、高いシール性を実現しています。
引用先:MISUMI(D4CC-4032)
稼働するスライド部分にはOリングがあり、さらにその先端にはダイヤフラムという機構が備わっています。
ダイヤフラムとはポンプによく使われている仕組みで、次のような構造をしています。
引用先:株式会社エイチツー(ダイヤフラムポンプの基礎知識)
ダイヤフラムはゴムで出来ており、スイッチが入っている部屋の入り口をこのダイヤフラムがフタをしています。このダイヤフラムの上からアクチュエータがスイッチを動作させるので、内部にゴミなどの異物が侵入しにくくなるというわけですね。
他にもスイッチ自体に保護キャップをかぶせてあるなど、合計3重のシール構造で内部への異物侵入を防いでいます。
粉塵の多い雰囲気での使用に最適だよ
標準形と置き換えができる
薄形リミットスイッチは標準形リミットスイッチとサイズが異なりますが、オプションの専用プレートを使用することで簡単に置き換えることができます。
引用先:MonotaRO(小形リミットスイッチ専用取りつけプレート)
引用先:オムロン(D4CC)
引用先:オムロン(D4CC)
このようなオプションをメーカ純正で出してくれているのは嬉しいですね。
重ねて使うことができる
薄形リミットスイッチは本体表面に凹凸があり、その凹凸を合わせることで合計6個まで重ねて取り付けることができます。
標準形ではできない取り付け方なので、スペースの問題など設計上の課題を解決できる手段になるかもしれません。
ただし、ローラーレバー形の場合は重ねることができないため、プランジャ形やセンターローラーレバー形など、本体の厚みからはみ出ないタイプのアクチュエータである必要があります。
また、鉄板に取り付ける際は厚さ6㎜以上であることとされていますので、使用するブラケットの設計等には注意するようにしましょう。
使い方の幅が広がりますね
薄形リミットスイッチのメリット
薄形リミットスイッチは次のようなメリットがあります。
狭いスペースでも取り付けられる
薄形リミットスイッチの最大特徴である「薄さ」を活かすことで、標準形では取り付けられなかった限られたスペースにも取り付けることができます。
また、重ねて取り付けることができることから、よりコンパクトな設計にも対応が可能です。
近年の設備は限界設計による小形化が進んでいるので、省スペースに対応しやすいという特徴は非常に大きなメリットになります。
交換がしやすい
薄形リミットスイッチはケーブルが内蔵されているため、交換がしやすいというメリットがあります。
一般的にはリミットスイッチを交換するときは次の手順で行います。
このように合計7ステップが必要ですが、薄形リミットスイッチの場合は本体を開けたりキャプコンの付け外しが不要なので、かなり工程を短縮することができます。
さらに、コネクタタイプの薄形リミットスイッチを使用すれば
という3ステップで交換が完了できます。
内部へ異物が侵入しにくい
薄形リミットスイッチは、ケーブルの引き込み口とアクチュエータの可動部、両方とも高いシール性を備えていますので、粉塵の多い雰囲気での使用でも内部への異物侵入がしにくいメリットがあります。
一方、標準形のリミットスイッチについては、各所にパッキンが備わっているものの、接続する際にカバーを開けたりキャプコンを外したりする必要があるため、内部への異物混入のリスクを伴います。また、キャプコンが古かったり誤ってカバーに異物を挟んでしまったりすると、新品のリミットスイッチであっても異物侵入の可能性があるため注意が必要です。
元々の高い密閉性に加えて、交換中でも常にシール性が保たれている薄形リミットスイッチは非常に大きな利点を持っています。
価格が安い
薄形リミットスイッチは、標準形のリミットスイッチと比べて価格が少し安いです。
例えば、標準形のWLCA2-N(ローラーレバー形)だと価格は7,200円(2024年11月現在)ですが、薄形のD4C-1420(ローラーレバー形 VCTF)だと価格は¥5,500円(2024年11月現在)となっています。
このように、同じタイプのアクチュエータであれば薄形リミットスイッチの方が安価で手に入れることができます。
上手に使えばコストダウンも可能だよ
薄形リミットスイッチのデメリット
次に、薄形リミットスイッチのデメリットについてです。
動作させても音がしない
薄形リミットスイッチは高いシール性をほこっているためか、レバーを手で動かしても「カチッカチッ」という音が聞こえません。
そのため、点検等でリミットスイッチを確認する際、作動しているかどうかを音で確認することができないデメリットがあります。
標準形の場合は「カチッカチッ」という音がなるため、スイッチが動作しているか・どれぐらいアクチュエータを動かしたら作動するかなどを耳で確認することが可能です。
動作したかどうかを目で確認できる表示灯付きタイプもありますが、電源を入れていないと表示灯が点灯しないため、耳で確認ができる標準形リミットスイッチの方が点検はしやすいです。
個人的にはこれが一番のデメリットと感じています
若干不具合が起きやすい傾向にある
薄形リミットスイッチは可動部にゴム素材を沢山使用しているため、長期間使用すると中で動きが悪くなって不具合を起こすことがたまにあります。
症状としては、アクチュエータを作動させて戻したときに、内部スイッチのONからOFFへの復帰が遅れる(しばらくONしっぱなしになる)という現象が経験上最も多いです。
頻繁にそのような現象が発生するわけではありませんが、標準形のリミットスイッチと比べると不具合が比較的多い点が、薄形リミットスイッチのデメリットです。
表示灯の切り替えができない
リミットスイッチには動作状態を目で確認できる表示灯付きタイプがラインナップされています。
引用先:オムロン(リミットスイッチの表示灯の動作確認を向上)
引用先:MonotaRO(小形リミットスイッチD4CC)
動作表示灯付きリミットスイッチは、標準形の場合はカバーの表面に、薄形の場合はケーブルの引き込み部分にそれぞれ搭載されています。
動作表示灯には、動作しているときに点灯する「動作時点灯」タイプと、動作していないときに点灯する「不動作時点灯」タイプの2種類が存在します。
標準形リミットスイッチの動作表示灯の場合は、カバーを開けて中のランプホルダを上下入れ替えることで「動作時点灯」と「不動作字点灯」の切り替えが簡単に行えます。
引用先:オムロン(WL-N / WLG)
一方、薄形リミットスイッチの場合は、点灯方式を型式で指定して購入するため、あとから点灯方式を切り替えることができません。
そのため、購入してから用途が変わったりすると、新たに型式を指定して買い直す必要があります。
特に予備品として保有する場合などは、動作表示灯付きを選んでしまうと用途が限られてしまうため十分注意して購入するようにしてください。
点灯方式が異なっても使うことは可能だよ。でもLEDは全く点灯しないので注意してね
まとめ
以上、薄形リミットスイッチの特徴とメリット・デメリットについての解説でした。
薄形リミットスイッチは様々なメリットを持ったとても便利なリミットスイッチです。
薄く小さなサイズと高いシール性を活かして上手に活用していきましょう。
- 薄いサイズ
- ケーブル内蔵を内蔵している
- 高いシール性を持っている
- 標準形と簡単に置き換えできる
- 重ねて使用できる
<メリット>
- 狭いスペースでも取り付けられる
- 交換がしやすい
- 内部へ異物が侵入しにくい
- 価格が安い
<デメリット>
- 動作させても音がしない
- 若干不具合が起きやすい
- 表示灯の切り替えがあとからできない