【重要!】PLC(シーケンサ)用バッテリーの役割と交換方法について
最近の設備には必ずと言って良いほど使われている「PLC」。
PLCはProgrammable Logic Controller(プログラマブル ロジック コントローラ)の略で、入力された信号に対して予めプログラムされた手順通りに出力を行う制御装置ですね。このような制御方式を「シーケンス制御」と呼びます。
PLCは各社様々なメーカーから発売されていますが、一番有名なのが三菱電機製の「MELSEC(メルセック)シリーズ」ですね。三菱電機製のPLCは国内ではトップのシェアをほこっていて、PLCと言えば三菱という方も多いのではないでしょうか。
PLCのことを「シーケンサ」と呼ぶことも多いかと思いますが、実はこの「シーケンサ」とは三菱電機製PLCの商品名です。圧倒的シェアをほこる「シーケンサ」という呼び方が一般化し、他メーカーのPLCのことも「シーケンサ」と呼ばれるようになっていきました。
前置きが長くなって申し訳ありません。この記事ではそんなPLC(以下シーケンサ)に取り付けられているバッテリーの役割とその交換方法についてお伝えしていきます。
シーケンサのバッテリーは定期的に交換しましょう!
シーケンサ内バッテリーの役割
シーケンサのバッテリーの主な役割は「データ保持」です。
設備の1日の稼働が終わると機械の電源を切って退社されるのが、最も一般的な運用の仕方です。シーケンサに電源が供給されているうちは良いのですが、機械の電源が切れると必然的にシーケンサの電源も切れてしまうので、何も対策がされていないと中に入っているデータが消えてしまいます。
バッテリーはシーケンサの電源が切れても中の大事なデータが消えないよう、「データ保持」をしてくれるとても重要な部品になります。
バッテリーで保持しているデータは主に次の5つです。
・プログラム
プログラムはシーケンサを動作させる最も大事なデータとなります。僕たち技術者がシーケンサに対して制御プログラムを書き込むことで、シーケンサがプログラム通りに機械を動かしてくれます。プログラムは技術者が試行錯誤のうえ完成させた汗と涙の結晶なので、万が一消えてしまったら大変です。
・パラメータ
パラメータはシーケンサの基本設定です。例えばI/0の割り付けや、どのスロットにどのユニットが取り付けてあるか等ですね。これらの設定は自動的にシーケンサが認識してくれるわけではなく、技術者がパソコンのアプリケーションで設定を行ってシーケンサに書き込んでいます。なので、この情報が消えてしまうと、シーケンサ自身がどのような使われ方をしているか分からなくなるということですね。
・ラッチリレー
ラッチリレーは、プログラムでONさせたらプログラムでOFFさせるまでラッチ(保持)し続けることができるプログラム内の仮想リレーです。このラッチ状態はシーケンサの電源を切ってもバッテリーで保持されています。
・ラッチデバイス
ラッチデバイスは、プログラムで数値を格納しておけるデバイスの中で、シーケンサの電源を切ってもバッテリーで保持しておけるデバイスです。
・時計
シーケンサには時計機能が内蔵されており、時間の情報をプログラムで利用することが出来ます。異常履歴や動作履歴に用いられることが多いですね。この機能についても停電時はバッテリーにて保持がされています。
バッテリーの寿命
国内シェア1位の三菱電機と2位のオムロンについて、機種毎にバッテリの寿命目安を一覧表にまとめました。
・三菱電機
シリーズ名 | バッテリ | 寿命目安 |
FX3Uシリーズ | FX3U-32BL | 5年 |
FX2NCシリーズ | FX2NC-32BL | 3年 |
FX2Cシリーズ | F2-40BL | 3年 |
AnSシリーズ | A6BAT | 5年 |
QnSシリーズ | A6BAT | 5年 |
Qシリーズ | Q6BAT | 5年 |
・オムロン
シリーズ名 | バッテリ | 寿命目安 |
NXシリーズ | CJ1W-BAT01 | 5年 |
NJシリーズ | CJ1W-BAT01 | 5年 |
CP1シリーズ | CP1W-BAT01 | 5年 |
CJ1シリーズ | CPM2A-BAT01 | 5年 |
CJ2シリーズ | CJ1W-BAT01 | 5年 |
C200Hシリーズ | C200H-BAT09 | 5年 |
こうして見ると各社の平均バッテリー寿命は5年であることが多いですね。
メーカーによってはバッテリーが交換出来ない機種も存在します。例えば横河電機製のPLCがそうでした。CPUユニットにバッテリーが半田付けされていた為、バッテリーの寿命がきたらユニット本体ごと取り替える必要が有りました。(バッテリー寿命が10年と少し長めではありましたが)
各PLCメーカーや機種によって推奨交換時期が定められていますので、ご自分が管理されているシーケンサのバッテリー寿命を取扱説明書で確認し、交換周期を決めて管理するようにしましょう。
バッテリーの交換方法
バッテリーの交換方法についてのポイントは次の3ステップです。
バッテリーは「生もの」です。交換前に準備しましょう。
シーケンサの現状のプログラムを読み出してバックアップをとりましょう。
シーケンサの電源を必ず切って交換しましょう。
STEP1.バッテリーの準備
まずはバッテリーの準備です。バッテリーは万が一の場合に備えて予備として保管しておくのも良いかもしれませんが、メンテナンスとして交換するバッテリーについては必ず交換前に準備するようにして下さい。出来る限り新しいものを使用されることを推奨します。
シーケンサのバッテリーはコネクタが付いており、そのコネクタでシーケンサに接続します。
シーケンサのバッテリーはメーカーによってもちろん種類が異なりますし、機種によっても型式や形が違います。
なので、取扱説明書や実物を確認するなどして間違えないように購入してください。
STEP2.バックアップをとる
問題なくバッテリーを交換できればシーケンサの中のデータが消えることはありませんが、万が一の場合に備えて必ずバックアップをとるようにして下さい。
出来れば昔取ったバックアップではなく、現状動いているシーケンサのプログラムを交換直前に吸い出しておくことを推奨します。メンテナンスの過程でプログラムを改造している可能性があるからです。ご自分が管理されていない設備のシーケンサなら尚更です。
バッテリー交換前にシーケンサのプログラムを吸い出すクセを付けるようにしましょう。
STEP3.バッテリーを交換する
それではバッテリーを交換していきます。
シーケンサに一定時間通電する
交換するまでに電源が入っていた場合は良いのですが、交換直後まで電源が切れていた場合は10〜15分程通電するようにして下さい。
内部のコンデンサを充電しておくためです。
シーケンサの電源を切る
シーケンサの電源を切ります。三菱のQシリーズ等、そのままの状態でもバッテリーにアクセスできる構造のものもありますが、作業をする時は電源は必ず切りましょう。
理由は電源を入れた状態でバッテリーを抜き差しすると、まれに中のプログラムが書き換わってしまう恐れがある為です。実際にそのような状態になって不具合が起きた事例がありました。人によっては電源を切らないで作業する人もいますが、不具合防止の為必ず電源を切ってから作業して下さい。
シーケンサのバッテリーカバーを開ける
バッテリーカバーを開けてバッテリーが直ぐ取り外せる状態にします。機種によっては盤に固定されている状態でカバーが開けられるものもあれば、シーケンサを外さないとカバーが開けられない機種もあります。
カバーを開けるとバッテリーが見えるので、コネクタから抜けないようにバッテリーを取り出します。
三菱のFXシリーズのバッテリーはシーケンサ本体の上面もしくは底面に収納されています。なので、シーケンサの上下にケーブルダクト等がある場合は、本体を取り外さないと作業がやりにくいです。実際、僕の場合はそうして交換を行っています。
三菱のQシリーズにおいてもバッテリーはシーケンサ本体の底面に収納されています。
三菱のAシリーズの場合は、シーケンサ本体の正面にある扉を開けたところのスペースに収納されているので、交換はかなりしやすいです。
オムロンのC200Hシリーズの場合はシーケンサ本体の裏側に収納されています。なので、バッテリーを交換する場合は必ず本体をベースから取り外す必要があります。
このように、バッテリーの収納位置は機種によってまちまちです。
まだこの時点ではシーケンサのコネクタは抜かないで下さい。
新しいバッテリーを箱から出す
作業に直ぐ取り掛かれるように、新しいバッテリーを箱から出しておきます。
これが以外と重要です。
シーケンサはバッテリーを抜いても数分間(1分〜3分程度)は内部のコンデンサでデータを保持していますが、バッテリーをシーケンサから抜き取ってから新しいバッテリーを箱から出したりしているとタイムロスが発生します。人間は時間に追われると焦ってしまうものです。ミスを誘発しない為にも、段取りは確実に行いましょう。
細いマイナスドライバーも忘れずに。
バッテリーをシーケンサから取り外す
いよいよバッテリーをシーケンサから取り外します。バッテリーのコネクタにはただ差さっているだけのものと、爪を広げて抜き取るものの2種類があります。
バッテリーを抜き取る前にコネクタの向きを確認しておきます。コネクタの線の色で覚えておく(上が黒で下が赤みたいな感じで)と良いでしょう。
コネクタが小さくて手で持てないものについては、線を引っ張って抜き取って下さい。
新しいバッテリーを取り付ける
シーケンサからバッテリーを外したら、素早く新しいバッテリーをシーケンサに接続します。前述の通り数分程度は内部のコンデンサで保持していますので、焦らずに確実に行いましょう。
たまに、シーケンサから出ているバッテリコネクタのピンを曲げてしまう方がいます。データが消えてもバックアップがあるから大丈夫!という気持ちで、慎重かつ確実に作業を行って下さい。
爪が無いタイプのコネクタについては、シーケンサにコネクタを軽く差し込んだ後、細いマイナスドライバーを使用して優しく押し込みます。
シーケンサを復旧する
バッテリーの交換が終わったらシーケンサ内にバッテリーを収納し、元通りに復旧します。シーケンサを取り外す際にI/Oのコネクタを抜いた場合は、間違えないように戻して下さい。
シーケンサの電源を入れる
シーケンサの電源を入れてバッテリーエラーの表示が出ていないか確認します。エラーが表示されていなければ交換完了です。念のため、交換前にとったバックアップと照合して問題がないか確認できればベストです。
まとめ
以上、シーケンサ用バッテリーの役割と交換方法についてお伝えしました。
設備を安定稼働させるうえで、シーケンサのバッテリー管理は不可欠な要素の1つです。交換作業自体は手順を守って慎重に行えば決して難しい作業ではありませんので、是非自分のものにして頂ければと思います。
本記事が貴方の仕事の一助になれば幸いです。