【寿命を延ばす】ワイヤーロープにグリースが必要な理由とおすすめ製品について

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産業機械だけでなく私達の生活にも欠かせない、縁の下の力持ち的な存在である「ワイヤーロープ」。

クレーンやエレベータ、橋梁やロープウェイなど、様々な分野でワイヤーロープは使用されており、効率的な搬送や移動を安全に行うために日々活用されています。

そんなワイヤーロープの性能を維持し、寿命を延ばすために必要不可欠なのが「潤滑」です。

日々のメンテナンスにおいて、ワイヤーロープに適正なグリースを塗布して潤滑状態を保つことで、ワイヤーロープの摩耗・劣化を防ぎ、寿命や安全性を大きく向上させることができます。

ワイヤーロープは常に荷重を受け続けているため、ワイヤーロープが万が一切れてしまうと、大きな事故に繋がる可能性があります。

この記事では、ワイヤーロープの潤滑状態を保つべき理由と、潤滑状態を維持するためにどのようなグリースを使用すればいいかを解説していきます。是非参考になさってください。

なべ
なべ

ワイヤーロープにはワイヤーロープのためのグリースがあります

ひでくん
ひでくん

歯茎には歯茎の治療薬みたいな感じ。。。?

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ワイヤーロープにグリースを塗布する理由について

新しくワイヤーロープを購入する場合、メーカーの方であらかじめグリースが塗布されてから出荷されるため、購入直後はそこまで潤滑に対して気を使う必要はありません。

ただし、ワイヤーロープを実際に使用し始めると、シーブやドラムと接触したり時間の経過と共に蒸発するなどして、徐々に油分が減少していきます。また、屋外にある装置では雨などによって油分が流れ落ちることもあります。

麻心入りのワイヤーロープについては内部にグリースが充填されており、使っていると中からグリースが染み出してきて長く潤滑状態を保ってくれますが、それも段々減少していきます。

よって、時間の経過と共に減少していくワイヤーロープの油分を補給するためにも、定期的にグリースを塗布して潤滑状態を長く保つことが重要となってくるのです。

ワイヤーロープの油が切れるとどうなるのか?

油切れを起こしているワイヤーロープを使い続けるとどのような弊害があるのでしょうか?

摩耗が早まる

グリースなどの潤滑油には金属の表面に油膜を形成し、金属同士の摩擦を低減する役割があります。

ワイヤーロープから油分が失われると、金属でできた素線同士が直接擦れ合うことになり、摩耗が著しく早まってしまう原因になります。

また、ワイヤーロープだけでなくシーブやドラムなどにも油膜を介さず直接触れることになりますので、ロープ表面だけでなくシーブ・ドラムの溝にも悪影響を及ぼします。

腐食・錆が発生する

金属の腐食や錆は、空気中の酸素や水分、浮遊している化学物質等と接触して化学反応が起こることで発生します。

油膜には、これら腐食・錆の原因となる酸素や水分などが金属と直接接触するのを防ぐ役割も担っています。

なべ
なべ

歯車などの金属部品も同様ですね

ワイヤーロープ用グリースの特徴

世の中には様々な種類のものが存在していますが、それぞれのグリースには用途・特性が明確に定められており、油であれば何を使用しても良いというわけではありません。

グリースにはワイヤーロープに適したものが明確に存在しており、それ以外の種類のものを使うとかえって寿命が短くなってしまう可能性があります。

ワイヤーロープに塗布するグリースと一般的なグリースとでは何が違うのでしょうか?

付着性が高い

付着性とは物体の表面にくっついた油膜の剥がれにくさのことを指します。

つまり、「付着性が高い」とは金属に付着した油膜がより剥がれにくいことを意味します。

一般的な固形グリースの中には付着性が低いものも多く、そのようなグリースを塗布してしまうと使用中に飛散するなどして、ワイヤーロープ表面に油分が残りにくくなってしまいます。

一方、ワイヤーロープ用のグリースは付着性が非常に高いため、長期間油膜を維持することができます。

浸透性が良い

浸透性とは液体などが中へ浸透していく性質のことを指します。

ワイヤーロープ用のグリースは、塗布した際にワイヤーロープへの浸透性が高くなるよう設計されているため、外面だけでなく内部の潤滑状態も維持してくれます。

ワイヤーロープは外面だけでなく内部でも錆が発生することがあり、目視では分かりにくいことから、内部の潤滑を維持することは非常に重要です。

油膜強度が高い

ワイヤーロープには、様々な環境要因によって常に油膜を落とそうとする力が働いています。このため、ワイヤーロープに形成される油膜は強固で剥がれにくいことが求められます。

特に屋外で使用されるワイヤーロープは、雨風以外にも湿気や紫外線、塩や温度変化などワイヤーロープにとっては有害な沢山の要因があります。

ワイヤーロープ用のグリースは、これらの様々な環境要因に耐えうるだけの油膜強度を有しており、長期間に渡って安定した潤滑効果を維持してくれます。

ひでくん
ひでくん

これらの特性を持ったグリースを選ぶことが大事なんだね

おすすめのワイヤーロープ用グリース

これらを踏まえて、ピックアップしたワイヤーロープ用グリースをご紹介していきます。

日々のメンテナンスで使用しやすく、持ち運びが容易なスプレータイプが非常におすすめです。

ワイロール エアゾールR(東京製綱)

ワイヤーロープ界でトップに君臨する東京製綱が開発して販売している「ワイロール エアゾールR」です。

東京製綱が開発したというだけあって性能が非常に高く、スプレータイプという利便性から最もおすすめできるワイヤーロープ用グリースです。

このグリースは赤ロープグリースに分類されますが、色は透明なのでワイヤーロープが黒くなることもなく、塗布した後も見栄えが良いです。

様々なワイヤーロープに対応できますので、迷ったらまずはこの「ワイロール エアゾールR」をおすすめします。

ワイロールR-HS(東京製綱)

引用先:丸三機械商事株式会社(ワイヤーロープグリス ワイロール R-HS 16kg)

同じく東京製綱から販売されている「ワイロールR-HS」です。

このロープ油も赤ロープグリースに分類されるため、透明に近い色をしています。

ワイロールR-HSは一斗缶に入っている液状タイプのロープ油で、別の容器に移して刷毛やブラシなどを使ってワイヤーロープに塗布していきます。

特に岸壁にあるような大型のクレーンについては、ワイヤーロープが何千mとあったりするので、塗布する量が多い設備をメンテナンスされている方を中心に、よく使われているロープ油です。

ダフニーホワイトオープンギヤオイル(出光興産)

引用先:株式会社イエローツール(ダフニーホワイトオープンギヤーオイル№3 420ml【出光興産】)

出光興産から販売されている「ダフニー ホワイト オープンギヤーオイル№3 」のスプレータイプです。

“オープンギヤーオイル”という名称から開放歯車専用ではあるのですが、ワイヤーロープ用グリースとして使うこともできる潤滑油となっています。

機械のメンテナンスではワイヤーロープの他に開放歯車も一緒に点検したりしますので、このオープンギヤーオイルが1本あると非常に重宝します。

色は赤ロープグリースと同じく透明なので、外観を損ねたり周囲を汚したりすることなく塗布することができます。

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住鉱モリロープスプレー(住鉱潤滑剤)

引用先:CAINZ DASH PRO【住鉱潤滑剤 スプレー (ワイヤーロープ用グリース)モリロープスプレー】

住鉱潤滑剤から販売されている「住鉱モリロープスプレー」です。

このグリースは二硫化モリブデンという高温耐性・耐摩耗性・耐圧性に優れた成分を配合しており、ワイヤーロープ用グリースに必要な浸透性・付着性も兼ね備えた高性能な商品です。

他にも、フォークリフトのリーフチェーン(フォークを上下させているチェーン)の潤滑にも使用できるそうです。

なお、モリブデン成分が含まれているため、色が黒色であることには注意が必要です。

まとめ

以上、ワイヤーロープにグリースを塗布する理由やおすすめの製品についてお伝えしました。

ワイヤーロープの油切れは摩耗や腐食を早めることに直結するため、定期的なグリースの塗布による潤滑状態の維持が不可欠です。

ワイヤーロープをなるべく長く安全に使用するためにも、日々のメンテナンスをしっかりと行っていきましょう。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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