【初心者向け】電流の測定方法を分かりやすく解説(正しい手順・注意点・おすすめ機器まとめ)

電流の測定は、設備や機械の健康状態をチェックするうえで欠かせない作業です。
ただ、初心者の方の中には、、、

電流ってどうやって測定したらいいの?

測定するためには何を使えばいいの?
など、電流測定に対して様々な疑問や不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、電流を測定するために必要な測定機器の選び方や使い方、正しい電流測定の手順から、作業時に気を付けるポイントまで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
これから電流測定に挑戦される方や、もう一度基礎をおさらいした方にとっても参考になる内容となっていますので、是非最後までチェックしてみてください。

電流測定はポイントさえ押さえれば難しい作業ではありません!
電流とは?測定する理由

まずは、「電流ってそもそも何だっけ?」というところからおさらいしましょう。
電流の基礎知識
電流とは、電線などに電気が流れる“量”’を表すもので、単位はアンペア(A)で表されます。
電流には大きく分けて「直流(DC)」と「交流(AC)」の2種類があり、それぞれ次のような特徴があります。
直流(DC)

直流とは、向きや大きさが変わらずに、電気が一方通行で流れるものを差します。
一番代表的なものは乾電池などのバッテリー類で、スマホやパソコンなどの電子機器類も、実は直流電流で動作しています。
交流(AC)

交流は直流とは逆で、電気の向きや大きさが周期的に変わるもののことを言います。
身近な例で言うと、家庭用コンセントから流れてくる電流は交流電流です。
ドライヤーや扇風機など、いろいろな家電製品が交流電流を使って動いています。
なぜ電流を測定する必要があるの?
装置や設備などの回路に流れる電流値を正しく把握することで、次のようなことが分かります。
特に、モーターやヒーターなど消費電力の大きな機器では、規定よりも大きな電流が流れていると故障や事故に繋がってしまいます。
そのため、メンテナンス時など定期的な測定が非常に重要になります。

特に交換作業を行ったあとなどは、必ず電流測定をする必要があるよ
クランプメーターとテスターを使った電流測定の手順

電流を測るときは、クランプメーターやテスターといった専用の測定機器を使うことが基本になります。
それぞれの測定機器の使い方について基本的な手順をご紹介します。
クランプメーターの測定手順
クランプメーターとは、先端が輪っか状になっている下の写真のような測定機器のことを言います。

これがクランプメーターですね。
この輪っか状の部分はレバーを押すと開くようになっていて、この輪の中に測定したい電流が流れている電線を通すことで、流れる電流を測定することができます。
それでは基本的な手順を見ていきましょう。
手順①:測定したい箇所を選ぶ
まずは、どの電線に流れる電流を測定したいかを確認しましょう。
クランプメーターで電流を測るときは、1本の電線だけをクランプメーターに通すことが、最大のポイントです。
例えば、三相電源であれば「R相」だけ、モーターであれば「U相」だけをクランプします。
家庭用のAC100Vだと「赤」か「黒」の線、どちらかを1本だけをクランプするイメージですね。
複数本まとめてクランプしてしまうと、電流が打ち消し合って正しい電流が表示されなくなってしまうので、必ず1本だけを測るようにしましょう。
手順②:クランプメーターのモードを設定する
次に、クランプメーター本体のダイヤルを「A」レンジに合わせます。

上の写真では、

と書かれているところになっています。この設定では”〜”の記号が付いていますので、測れる電流は「交流電流」になります。
もし、「直流電流」を測りたい場合は、

の記号が付いているレンジに合わせてください。このレンジが無い場合は、直流電流を測ることはできません。

直流電流を測りたい場合は、クランプメーターを買う時に測定できるかどうか確認しましょう
手順③:クランプメーターの輪っかに電線を通す


次に、クランプメーターの輪っかの部分に測定したい電線を通していきます。
電線を通すと言っても非常に簡単で、クランプメーターのサイドにあるレバーを押すとクランプの先端が開くので、その状態で電線を通して閉じるだけでOKです。



これで電流測定の準備は完了です。

基本的にはどの電線にクランプしてもOKだよ
手順④:電流値を読み取る
クランプメーターを取り付け終わったら、表示された数値を読み取ります。
電流が電線に流れている状態でないと電流値が表示されませんので、実際に電流を測定したい状態(装置や設備が動いているか)を確認しましょう。
以上で、クランプメーターによる電流測定は完了です。

クランプメーターを使うと安全に電流値を測定することができます
テスターを使っての測定手順
電流測定機能を搭載したテスターを使って電流を測定することもできます。

写真のように、「直流電流」や「A」といった設定レンジがあるテスターであれば、回路の電流を測定することができます。
それでは順を追って、測定手順を見ていきましょう。
手順①:測定したい箇所を選ぶ
クランプメーターと同様、電流を測定したい箇所を選択します。
ここで注意点ですが、テスターで電流を直接測定する場合はあまり大きな電流を測定することが出来ません。
必ず、使用するテスターの取扱説明書を確認して、最大何アンペアまで測定できるのかを把握しておきましょう。

テスターの場合は、モーターなど大きな電流を測定する用途には向いていないよ!
手順②:テスターのモードを設定する
クランプメーターの時と同様、テスターのダイヤルを「A」レンジに合わせます。
測定したい電流が直流か交流か、だいたい何アンペアぐらい流れるのかなど、測定する条件に合わせて正しく設定しましょう。
手順③:テスターを”直列”に接続する
次に、測定したい箇所にテスターを直列接続していきます。
テスターで電流を測定する場合は回路を触ることになるので、必ず電源を切ってから行うようにしましょう。

感電には十分気をつけてください!
接続の状態を図で表すと次の通りです。

このようにテスターを接続します。テスターで電流を測定するときは、電源(乾電池)と負荷(電球)の間に割り込ませるようなイメージですね。
なお、間違いやすい接続方法として次のようなものがあります。

何が間違っているか分かりますでしょうか。
このテスターの接続方法は、電圧を測定したいときに行う「並列接続」です。
このような接続方法をしてしまうと、正しい電流を測定できないばかりか、ショートしてテスターが故障したりする原因にもなってしまうため、必ず直列接続するようにしてください。

実は、僕もテスターを並列接続して壊してしまったことがあるんだよな。。。
手順④:電源を投入する
正しくテスターを接続できたら、電源を投入して電流が流れる状態をつくります。
手順⑤:表示された電流値を読み取る
電流値を読み取ることができたら測定完了です。

電流測定はやはり非接触で行えるクランプメーターの方が、安全で簡単に行うことができます
電流を測るときに注意すべきポイント

電流を測定するときは、ちょっとしたミスが事故や機器の故障につながることもあります。
安全に、正確に測定するために、次のポイントを必ず守りましょう!

電流測定は手袋を着用するなど、感電対策もしっかり行って作業しよう
クランプメーターで測定するときの注意点
必ず「1本だけ」をクランプしよう
クランプメーターは1本の電線だけに流れる電流を測る機器です。
2本以上まとめて挟んでしまうと、電流が打ち消し合ってしまうため、必ず1本だけクランプして電流を測定するようにしましょう。
直流(DC)と交流(AC)のモードを間違えないようにしよう
クランプメーターには、交流だけ測れるもの、交流と直流どちらも測れるものなど、様々なタイプがあります。
モードの切り替えを間違えると正しい数値が表示されませんので、必ず測定対象と設定するダイヤルレンジが一致しているか確認しましょう。
電線はなるべくクランプの中心を通すようにしよう
クランプメーターで電線を挟むときは、できるだけクランプの真ん中に電線がくるようにしましょう。
電線が端に寄っていると、測定誤差が大きくなる場合があります。
狭い盤など、必ずしも真ん中に電線をセットすることができない場合もありますが、できるだけクランプの中心にくるように調整してください。
測定中は電線を動かさない
測定している最中に電線を動かすと、ノイズが入ったり、表示が不安定になることがあります。
クランプしたら、できるだけそのままの状態で数値を読み取りましょう。
インバータに接続されたモーターの測定は実効値が測れるものを使おう
インバータに接続されているモーターの電流を測定する場合、普通のクランプメーターでは波形の歪みによって、正しい電流値が測定できません。
このような場合は、”真の実効値”を測定できる「True RMS」のクランプメーターを使うようにしましょう。
「True RMS」に対応しているクランプメーターは本体に表示があります。

手持ちのクランプメーターは出来れば「True RMS」に対応したものに統一すると、使用時に迷わなくて安心です。
テスターで測定するときの注意点
必ず直列で接続しよう
電流測定は、測りたい回路に直列で繋ぐのが基本です。
もし間違えて並列につないでしまうと、テスターや回路に大きな負荷がかかって、最悪の場合、機器を壊してしまう危険があります。
測定レンジを正しく選ぼう
テスターのダイヤルは、必ず測定する電流に合ったレンジに設定しましょう。
小さいレンジで大きな電流を測ろうとすると、機器が焼損することもあるので注意です。
また、抵抗レンジや電圧レンジなど、電流レンジとは別の設定にしてしまっていないかも、合わせて確認してください。
絶縁と安全確認をしっかり行おう
テスターに電流が流れている状態で測定するため、感電のリスクには十分な配慮が必要です。
測定する前に回路や周囲の確認を必ず行い、導体部分が人体に触れたりしていないかなど、安全を最優先して作業しましょう。
おすすめの測定機器4選

最後に、電流測定でおすすめの測定機器についていくつかご紹介します。

僕の職場で使っている測定機器を厳選しました
クランプオンAC/DCハイテスタ 3288-20
引用先:HIOKI(クランプメーター 3288)
HIOKI製のクランプメーターである「クランプオンAC/DCハイテスタ 3288−20」です。
小形で薄型でありながら「True RMS」に対応しているほか、直流電流と交流電流どちらも測定することが可能です。
また、付属のテストリードを接続することでテスターとして使用することもできます。
最大で1,000Aまで測定することが可能なので、ほとんどの場合これ1台で事足りるのではないでしょうか。

1台で何役もこなしてくれるのが良いですね
共立電気計器 KEW2210R
引用先:共立電気計器株式会社(交流電流測定用クランプメータKEW2210R)
こちらも計測機器では大手の共立電気計器から販売されている、「交流電流測定用クランプメータ KEW2210R」です。
このクランプメーターは緑色の輪っかの中に電線を通すことで電流を測定できるのですが、この輪っかがゴムのように柔らかいため、電線が密集した狭い場所などでも楽にクランプすることができます。
また、クランプから測定器本体まで約1.8mのコードで繋がっているため、測定場所から距離を取ることができる点もメリットの1つです。
直流電流の測定には対応していませんが、「True RMS」にはバッチリ対応しています。

このフレキシブルなクランプはとても使い勝手が良いですよ
共立電気計器 KEW MATE 2001A
引用先:共立電気計器株式会社(KEW MATE 2001A)
同じく共立電気計器から販売されている、オープン型の簡易クランプを搭載したテスター「KEW MATE 2001A」です。
一般的なカードテスターに近いコンパクトなサイズながら、交流・直流を測定できるクランプメーターを備えていますので、電流をサッと測定したい場合などにとても重宝します。
「True RMS」に対応していないことや、オープン型であることから測定精度はそこまで高くありませんが、目安として電流値を把握したいときなどは、非常に便利に使えるテスターです。

携帯性が非常に高いのも良いですね
フルーク FLUKE 381

FLUKE(フルーク)はアメリカに本社を置く測定器メーカーで、この「FLUKE 381」もその1つです。
このFLUKE 381の最大の特長はディスプレイ部分が取り外せるという点にあります。
本体を盤などにセットしておけば、離れた位置で測定値を確認できるため、安全性や作業効率が大きく向上します。
さらに、付属するプローブを使用することで、電流の他に電圧・抵抗なども測定できるなど、非常に高機能なクランプメーターとなっています。
もちろん「True RMS」や直流電流の測定にも対応しています。

日本のメーカーにはない便利な機能が満載です

まとめ

以上、電流の測定方法について、正しい手順や注意点、おすすめの測定機器等についてご紹介しました。
電流測定は一見難しそうに感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば決して難しい作業ではありません。
正しい知識と手順を身に付けておくことで、トラブルの早期発見や長寿命化に繋げることができます。
装置や設備の健康状態を知るためにも、電流測定は欠かすことのできない重要な作業の1つです。
ぜひ本記事を参考にしながら、日々の電流測定をより安全に、そして確実に行っていきましょう。