【光電センサの点検方法】基本的な手順や注意点について解説
工場などの様々な産業機器に使われている光電センサ。
光電センサはワークなどの物体を検出するために欠かせないものであり、設備の自動化を実現するうえで非常に重要な役割を果たしています。
設備をトラブル無く安定的に稼働させるためには、光電センサを常に最適な状態に保つことが重要であり、日頃の点検が必要不可欠です。
しかし、光電センサの点検と一口に言っても、どのような手順で行えばいいのか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、光電センサの点検方法について基本的な手順や注意点等について解説していきますので、是非参考にしてみてください。
ホコリの多い環境・稼働率の高い設備は月1回の点検が望ましいですね
設備の自動運転を停止する
まずは一番大事なことですが、設備の自動運転を必ず停止させてから点検作業を始めるようにしましょう。
光電センサは自動動作のトリガ(引き金)になっていることも多く、設備が自動運転出来る状態のまま光電センサを遮ってしまうと、設備が勝手に動作して挟まれてしまう危険性があります。
実際、自動運転ができる状態のまま点検作業を始めた作業者の方が、設備に挟まれて重篤な状態になってしまった事例があります。
他にも、誤って作業範囲外の設備に立ち入って挟まれるなど、僕の周りでも様々な災害事例が報告されています。
必ず自動運転の停止と作業の範囲を作業者全員で確認してから、点検を始めるようにしてください。
自動設備の安全対策はしっかり行わないといけないね!
光電センサは自動起動のきっかけとして使用されているものも多いので、事前の安全対策は非常に重要です
センサのレンズ面を清掃する
光電センサはホコリなどがレンズ面に堆積すると誤動作する可能性がありますので、まずはレンズ面を乾いたウエスなどで綺麗に清掃します。
光電センサのレンズ面はほとんどがプラスチック製ですので、アルコールやパーツクリーナー・シンナー等の溶剤を付けて拭くと、レンズ面を痛める原因となってしまいます。必ず乾いたウエスもしくは水で湿らせたウエスで拭き取るようにしてください。
レンズ面にはホコリ以外にも設備から飛散した油が付着していたり、結露によって曇ったりする場合もあります。
尚、回帰反射形(ミラー反射形)の光電センサの場合は、反射板が曇っていたり汚れていたりしても誤動作する可能性がありますので、こちらについても同様に清掃しましょう。
- レンズ面を乾いたウエスもしくは湿らせたウエスで拭き取る
- アルコールなどの溶剤は使用しない
- 回帰反射形は反射板も合わせて清掃する
特に縦向き付いているセンサはホコリが溜まりやすいので注意しましょう
光軸の状態を確認する
光電センサの清掃が終わったら、次は光軸の状態を確認します。
光電センサは、光を飛ばす投光器と光を受ける受光器とに分かれており、投光器から飛ばした光を受光器が正常に受け取っている状態のことを「光軸が合っている」と表現します。
つまり、投光器から飛ばした光の直線上に受光器が無いと正常に動作できないということですね。
光軸が合っているかどうかの確認は、光電センサの受光器に付いている表示灯の点灯状態を見て確認します。
例えば、オムロン製の光電センサ「E3Zシリーズ」の場合は、緑の安定表示灯と橙の動作表示灯が受光器に有り、この表示灯の点灯状態で光軸が合っているかを確認できます。
引用先:オムロン株式会社(FAQ05702)
緑の安定表示灯はセンサの受光器が正常に光を受け取っている時に点灯し、橙の動作表示灯は信号が出力されている時に点灯します。
つまり、センサをダークオンで使用している場合は「緑」点灯・「橙」消灯となり、ライトオンで使用している場合は「緑」点灯・「橙」点灯となっているのが正常となります。
もし、目的の用途以外の点灯・消灯の仕方をしていたり、何も検出していないのに表示灯が点滅しているなどしていたら、センサの光軸が合っていないと判断できます。
次にセンサの光を手でさえぎってみて、表示灯の「橙」のみが点灯もしくは消灯するかを確認します。確認できたら手をどけて、表示灯が元に戻ることを確認します。
これを繰り返して、表示灯が正常に切り替わっていたらOKです。
もし、正常に表示灯が切り替わらないようであれば、光軸が合うようにセンサ本体を動かして調整しましょう。
なお、この表示灯の状態はセンサや反射板の清掃だけで正常に戻る場合もあります。
表示灯の仕様は光電センサのメーカによって若干異なりますので、必ず使用しているセンサの取扱説明書を確認してください。
- 受光器の表示灯を見て光軸が合っているかを点検する。
- 光を手でさえぎって表示灯が正常に切り替わるか確認する。
センサ本体の劣化で光量が低下して光軸が合わなくなる場合もあるよ
取付ビスの緩みがないか確認する
光電センサはM3〜M4ぐらいのビスで固定されていますので、それらに緩みが無いかを確認します。
一つ一つドライバーを使って締め付け確認をしても良いのですが、センサの数が多いと時間が掛かりますので、その場合はセンサ本体を手で掴んで揺すってみて、動いている感触が無いかを確認する方法が有効的です。
もし取付ビスが緩んでいたら、センサ本体が「カクッカクッ」と動く感触が手に伝わってきます。
もちろんセンサ本体だけでなく、センサを取り付けているブラケット自体の取付ビス(ボルト)にも緩みが無いかを確認してください。
なお、センサを手で揺すったときに緩みがなくとも、受光器の表示灯が付いたり消えたりすることがあります。その場合はセンサの光軸がギリギリの状態なので、揺すっても表示灯が点滅したりしないよう調整しましょう。
- センサの本体を手で揺すって動いている感触がないか確かめる
- センサを揺すって表示灯の状態が変化する場合は調整を行う
センサの動作を確認する
センサの清掃・光軸確認・緩み確認を行ったら、最後にセンサの信号が正常に入力されているかを確認します。
センサの信号確認は光軸確認の時と同様、センサを手などで動作させて信号が正常に入力されているかを見ます。
光電センサはPLCに直接接続されている場合が多いので、点検作業はセンサの光をさえぎる人とPLCの表示灯を確認する人と二手に分かれて行うのが一般的です。
もしリレーなどの継電器でセンサからの信号を受けている場合は、実際にリレーが動作するか、リレーのLEDが点灯するかなどから判断しましょう。
なお、光電センサの信号が正常に入力されていても、コネクタの接触不良などから信号のチャタリング(ON/OFFを繰り返す)を起こしてることもあります。このような現象が疑わしい不具合が報告されている場合は、センサを動作させながらコネクタ等を軽く揺らすなどして、入力が途切れたりしないかを確認する方法が効果的です。
- センサの動作確認はPLCやリレーの表示を見て行う
- 2名以上で役割分担を決めて作業を行う
- 不具合が報告されている場合は、より入念に点検を行う
動作確認まで行うことができたら、光電センサの点検はカンペキです
定期的な点検が設備のトラブルを防ぐ
以上、光電センサの点検方法について基本的な手順や注意点等について解説しました。
光電センサは非接触で物体を検出できる反面、ホコリなどの汚れや光軸ズレ等で誤動作する可能性のある機器です。
しかし、定期的な点検・調整を確実に行っていけば、光電センサに起因する設備のトラブルを未然に防止することができます。
昨今の設備には光電センサが沢山使われているので、実際に点検される方は非常に大変かと思いますが、毎日の積み重ねが着実に実を結んでいきます。
設備の安定稼働に向けて頑張っていきましょう、お疲れ様です!