【レベル測定器とは?】特徴や使い方について基本を解説
建築現場や機器の据え付けにおいて重要な作業である「レベル測量」作業。
レベル測量とは地面や床の高低差を確認・測定する為の作業で、地面や床の「どこが高くて、どこが低い」のかを知るために行います。
そのレベル測量を行ううえで欠かせない機器がオートレベルに代表される「レベル測定器」です。
この記事では、レベル測量で使用する「レベル測定器」の特徴や使い方について解説していきます。
僕の職場では定期点検で機器の水平を見るのに使っているね
レベル測定器は建設現場だけでなく、産業機器の保全など様々なシーンで広く活用されています
レベル測量の目的
レベル測量には次のような目的があります。
地面・床の高低差を正確に把握する
レベル測量の大きな目的の1つが、地面や床の高低差を正確に測定し把握することです。
ビルや家屋などを建築したり産業機械などを据え付ける際に、その場所の起伏や傾斜を事前に把握しておかないと、正確な建築計画を立てることができません。
傾きのない構造物を据え付けるためにも、レベル測量は非常に重要な役割を担っています。
基礎部分の水平確認
建築物の基礎や設備の土台部分など、重要な部分が水平になっているかの確認のためにもレベル測量は行われます。
構造物の基礎や土台はその後の施工の基準にもなっていくので、この部分に狂いが生じていると取り返しのつかない事態に発展してしまう可能性があります。
据え付け・組み立て時の水平確認
工場内の産業機器の据え付け・組み立てにもレベル測量は行われます。レベル測量というよりもレベル測定という言い方が合っているでしょうか。
レールや周辺機器の据え付け、装置の組み立てを行う際にレベル測定を行い、部材間の高低差や組み立て精度などが許容値内に収まっているか確認し、逸脱していれば調整を行うなどの作業を行います。
産業機器の品質を保つためにも、このレベル測定は非常に重要な作業となっています。
水の流れを調査する
水は高いところから低いところへ流れる特性があります。
レベル測量により路面の傾斜や高低差を正確に測定することで、水がどの方向に流れるかを知ることができます。
例えば、雨水・排水路の設計や水勾配、洪水などの災害対策など、水がどの方向に流れやすいかをレベル測量によって求めることで、地形に適した設備の設置や対策を行うのに役に立ちます。
レベル測定器の種類
レベル測定器には主に以下のような種類があります。
オートレベル
引用先:株式会社トプコン(オートレベル AT-Bシリーズ)
オートレベルとは、本体に自動補正機能が付いたレベルのことで、最初に大まかな調整をするだけで細かな傾きは自動補正して水平を保ってくれます。
引用:Amazon(アカツキ製作所 KOD 丸型アイベルマグネット付水平器 RM25)
オートレベルの横には「円形気泡管」と呼ばれる上の写真のような水平器が付いていて、気泡が円の真ん中に入るように調整ネジで調整すれば、あとは自動補正機能が効くようになります。
測定する時は「スタッフ」と呼ばれる目盛付きの棒を1人が持ち、もう1人がその棒の目盛をレベルから覗いて読み取るという方法で行っていきます。
現場ではこのスタッフのことを「バカボー(馬鹿棒)」と呼んだりもします
レベル測量の現場で最も一般的なレベル測定器が、このオートレベルです。
デジタルレベル
引用先:株式会社トプコン(デジタルレベル DL-500シリーズ)
デジタルレベルは、従来測定者がレベルを覗いて読み取っていた数値を自動で読み取ってくれるという、とてもハイテクなレベル測定器です。
専用の「スタッフ」を使って測定を行う必要がありますが、ボタン1つで正確な数値を瞬時に読み取ってくれるだけでなく、測定データを内部メモリに保存してくれる機能も備わっています。
測定者の負担を軽減してくれるだけでなく、ヒューマンエラーなどのミスが発生しにくいというメリットがあるのがデジタルレベルです。
レベル測量で目を悪くする人もいるので、デジタルレベルは助かるね
ティルティングレベル
引用先:株式会社ソーキ(ティルティングレベル TS-3A)
ティルティングレベルはオートレベルにある「円形気泡管」に加えて、傾斜調整用の「気泡像」を微調整するレベル測定器です。
レベルを覗くと上の図のような気泡が見えます。この気泡は中心で真っ二つになっていて、この気泡が綺麗なUの字になるようダイヤルを回して調整します。
この気泡が綺麗なUの字になっている状態が、レベルが正しく水平であることを示しています。
ティルト方向(縦方向)にも動くレベルであることから、ティルティングレベルと呼ばれるわけですね。
このティルティングレベルは精度が非常に高い反面、この気泡像の調整が面倒なのがデメリットで、最近ではこの部分を自動補正してくれるオートレベルの方がよく現場では使われています。
僕もこのレベルの調整をしたことがありますが、180°回転させると気泡がズレるので、これを合わせるのにとても苦労しました
水平器
水平器はオートレベルなどと異なり、何㎜の高低差があるかというような精密な測量は出来ませんが、水平器にある気泡管を見ることで、概ねの水平や垂直を瞬時にチェックすることができます。
例えば配管が水平になっているかチェックしたり、家具や床が傾いていないかチェックしたりなど、主に工事現場などで職人さんが都度素早く確認を行う場合によく用いられています。
水平器には写真のような気泡管タイプのほかに、デジタル表示してくれるデジタル水平器や、気泡管とデジタルのハイブリッドタイプもあります。
職人さんには必須の道具だね
レーザーレベル
引用先:株式会社トプコン(ローテーティングレーザー RL-H5A)
レーザーレベルは、本体から照射されたレーザー光を基準に、測定場所の水平を見るための電子工具です。
難しい操作を必要とせず、機器の水平出しも自動でやってくれるので、現場での取り扱いが非常にしやすいメリットがあります。また、レーザーの照射範囲が数百メートルという非常に広範囲である特徴もあります。
オートレベル等と比べると精度は若干劣りますが、土木現場など様々なシーンに対応が可能です。
用途に合わせた使い分けが大切ですね
オートレベルでの測定方法
一般的なよく使われているオートレベルの使い方について説明していきます。
レベルの設置場所を決める
まずはレベルの設置場所を決めていきます。
レベルの設置場所は出来るだけ安定した場所で、測定場所との延長線上に障害物などが無い位置にします。
測定する箇所が点在していると、レベルを振ったときに障害物でスタッフが隠れてしまう可能性があるので、なるべく見通しの良い場所を選定するようにしましょう。
レベルの三脚を設置する
設置場所を決めたら、レベルの三脚を設置していきます。
レベルの三脚の先端は通常尖った形状をしていますので、地面に突き刺すように三脚を固定します。
路面がコンクリートなど突き刺すことが出来ない場合は、先端を段差に当てるなどして上から抑えても動かないよう設置します。
三脚の高さについては、測定者が長時間測定を行っても楽なように、最適な高さを決める必要があります。無理な体勢で長時間測定作業を行うと、腰などを痛める原因になりますので、測定者の体に合わせて調整を行いましょう。
レベルを三脚の上に乗せて大まかに調整する
三脚を設置できたらレベルを三脚の上に乗せます。
レベルの三脚の天板は大きく分けて「球面タイプ」と「平面タイプ」があり、球面タイプであればレベルの円形気泡管を本体の置く角度で大まかに調整できるので便利です。
引用先:ムラテックKDS株式会社(レベル用平面三脚)
円形気泡管の気泡がある程度真ん中に来たら、三脚の天板にあるネジをレベル本体にねじ込んで固定します。
レベルを落とさないように注意してね
レベルの調整ネジで水平出しを行う
レベルを三脚に固定できたら、レベルの土台部分にある3箇所の整準ネジを回して、気泡が円の中心にくるように調整を行います。
このとき、レベルの円形気泡管は必ず反射ミラーを介して見るようにします。
引用先:株式会社NTジオテックス(オートレベル Nikon AS-2/AS-2C)
理由は、見る角度によって気泡と円の位置関係に誤差が生じるためで、調整する際は必ず反射ミラーを使用するようにしてください。
測定箇所にスタッフを立てる
レベルの設置・調整が終わったら測量を開始していきます。
オートレベルでのレベル測量作業は、基本的に測定者とスタッフを持つ補助者の計2名で行います。
スタッフとは目盛付きの棒のことで、下の写真のように伸び縮みさせられる伸縮タイプもあります。
引用先:Amazon(太平産業 アルミスタッフミニ 3m3段 M-33FZ 011-1309)
場合によっては直尺を使用する場合もありますし、無ければコンベックスで代用するという方法もあります。
スタッフを立てる位置はなるべく平らなところを選定し、石やゴミなどがあれば可能な範囲で取り除きます。
屋内など周囲が暗いと、測定者が目盛を読み取れない場合がありますので、照明等で目盛を照らして明るくするなどの配慮も忘れないようにしてください。
尚、あまりに明るくしすぎると今度は反射して目盛が見えないということも有りますので、その場合はスタッフをひねって少し角度をつけてやると見やすくなります。
レベルを覗いてスタッフの目盛を読み取る
レベルをスタッフの方に向けて目盛を読み取ります。
レベルの上面には「ピープサイト」という照準器が有りますので、このピープサイトを利用するとスタッフとレベルの向きを大まかに合わせることができます。
引用先:株式会社トプコン(オートレベル AT-Bシリーズ)
ある程度レベルの向きが決まったら、レベルを覗きこんで「合焦つまみ」を回して、スタッフの目盛にピントを合わせていきます。この段階でスタッフが見付からない場合は、「全周微動つまみ」を回すことで左右方向(パン方向)に動かすことができます。
スタッフにピントが合うと、次のような見え方になります。
レベルを覗くと十字の線が見えるので、横線がスタッフのどの目盛を指しているかを読み取ります。
十字の線が薄い場合は、接眼レンズの視度調整ダイヤルを回すと調整できるよ
上図の場合、十字の横線が146cmと147cmの中心にあるため「146.5cm」と読み取ることができます。直尺やコンベックスなどの場合は、単純に横線が指している目盛の部分を読み取ればOKです。
このようにして、スタッフを立てた場所の目盛を読み取って記録していきます。
スタッフが傾いていると正しい数値が読み取れませんので、測定者が補助者に都度支持をしてあげましょう
測定したデータの解析
では、測定したデータをどのように解析すれば路面の高低差が分かるのでしょうか。
基準地点の数値
まずは基準地点を1つに決めて、その基準地点の数値を測量データの基準とします。
例えば、この基準地点の数値が「300cm」であれば、この「300」という数値を基準として他の測量データを解析していきます。
測量点Aの数値
次に測量点Aについて見ていきます。
例えばこの測量点Aの読み値が「250cm」だったとします。すると、基準地点の「300cm」と比べて「50cm」差があることが分かります。
このとき、スタッフの目盛の数値が下から上に向かって増えていっていることを考えると、測量点Aは基準地点よりも「−50cm」であることから、「50cm路面が高い」ということになります。
測量点Bの数値
続いて、測量点Bを見ていきます。
測量点Bの場合は、読み値が「400cm」だったとします。この場合、基準地点「300cm」と比べて今度は「100cm」多いという状態になります。
測量点Aと同様に考えると、今度は基準地点に対して「+100cm」であることから、「100cm路面が低い」ということになります。
このように、基準地点の数値に対して測量点の読み値が+方向なのか−方向なのかを計算し、路面の高低差を導き出していきます。
これが測定データの基本的な解析方法になります。
レベル測量時の注意点
レベル測量時の注意点についてまとめました。
レベルを三脚に乗せたまま放置しない
レベル測量中に休憩などでレベルから離れる場合は、必ず面倒でも本体を三脚から下ろして収納ケースにしまっておくようにしましょう。
第三者が誤ってぶつかってしまったり、風などで倒れてレベル本体に強い衝撃が加わってしまうと、故障や精度低下の原因になってしまいます。
レベルの不調は外観上では分かりませんので、こまめに片付けるようにしてください。
レベルを三脚に乗せたまま担いで移動しない
測定箇所から移動する際に、三脚にレベルを乗せたまま担いで移動する人をたまに見かけますが、これも壁などにぶつけて衝撃を与えてしまう原因になりかねません。
移動する際は必ず三脚からレベル本体を外して収納ケースに入れ、慎重に持ち運ぶようにしましょう。
レベルを車に積みっぱなしにしない
レベルを現場に持って行くのを忘れないために、常に車にレベルを積みっぱなしにすることも避けるようにしましょう。
車に積みっぱなししていると、走行中の振動がレベル本体に伝わり続けることになってしまうため、本体に余計な負担が掛かり精度低下の原因になることがあります。
レベルは必ず使用する現場にのみ持って行くようにし、それ以外は車から降ろして安全な場所で保管するようにしてください。
レベルは精密機械なので取り扱いには注意です
スタッフの目盛の向きを間違えないようにする
測量用スタッフは目盛の向き(下から上に数値が増えていく)が一律なので間違える可能性は低いですが、測量用スタッフの代わりに伸縮スケールなどを使用する場合は注意が必要です。
引用先:Amazon(シンワ測定 3倍尺 のび助 一方向式2A 3尺2寸 併用目盛 65190)
測量用スタッフは上下逆に立てると数字が反対になるため、間違ってもすぐ分かりますが、伸縮スケールのように数字が横向きのものの場合は、上下逆に立てても間違いに気付かないことがあります。
上下逆に立ててしまうと、高低差の方向も逆になるため正しい数値分析が出来なくなります。
目盛の向きを間違えないよう、スタッフを立てる補助者は注意しましょう。
ミリ単位の測定が必要な時は伸縮スケールが必要になるケースがあるから、その場合は注意してね
まとめ
以上、レベル測定器の種類やその特徴、使い方等について解説しました。
レベル測定器は土地の傾斜や高低差だけでなく、機器の据え付けやメンテなど様々なシーンで活用できる器具です。
最近ではとても便利な製品が増えてきましたので、現場の測量作業も大分楽になったのではないかと思います。
それぞれの器具の特徴を理解いただき、ご自分の現場にあった最適なレベル測定器を選んでください。
本記事が参考になりましたら幸いです。