【定期的に点検しよう!】電磁接触器の接点点検とその重要性について
電路を開閉するのに欠かせない電気部品の1つが「電磁接触器」です。
電磁接触器は大きく分けて「接点」と「電磁石」という2種類の部品で構成されており、電磁石によって接点を開閉することで接続されている電路を開閉するという役割を持っています。
工場などでは下記の用途で使われる場合が多いです。
- モータの駆動
- ブレーキの開閉
- 電源の入り切り
これらを見ても分かる通り、電磁接触器は設備にとってとても重要な電気部品の1つと言えます。
この記事では、そんな電磁接触器の最も重要な部分である「接点」に着目し、点検方法やその重要性について解説していきます。
特に動作回数の多い電磁接触器の接点は定期的に点検しましょう
電磁接触器の接点とは?
接点とは接続された回路を入り切りする言わばスイッチです。
電磁接触器の接点には大きくわけて「主接点」と「補助接点」とに分かれます。
これらの接点にはそれぞれ次の役割があります。
- 「主接点」:モータなどの負荷を開閉(動作/停止)するために用いる
- 「補助接点」:制御機器などへの信号のON/OFFに用いられる
下の図で言うと「1L1ー2T1間」、「3L2ー4T2間」、「5L3ー6T3間」が主接点で「13NOー14NO間」が補助接点になります。
この電磁接触器にモータを接続して回転/停止させたい場合は下記のように接続します。
電源
- R:1L1
- S:3L2
- T:5L3
モータ
- U:2T1
- V:4T2
- W:6T3
ちなみに、補助接点を表示灯のON/OFF用のスイッチとして接続すれば、モータが回転しているときに表示灯が点灯するといった回路を作ることも可能です。
なぜ接点の点検が重要なのか?
電磁接触器の接点が開くときに「アーク」という火花が発生します。
家庭でドライヤーのスイッチを入れた状態でコンセントを抜くと、青白い火花のようなものがコンセントの中で発生しますが、これと同じような現象が電磁接触器の接点のところで起きます。
このアークが発生することによって、電磁接触器の接点が摩耗していくのです。
アークは電流や電圧が大きいほど発生しやすいという特徴があります。
したがって、モータといった比較的大きな電流が流れている負荷を開く(モータを停止させる)ときに、特に主接点がアークによるダメージを受けます。
設備においてモータの動作/停止は頻繁に行われることが多い為、この部分の点検が非常に重要になってきます。
接点のダメージについて
アークによってダメージを受けた接点について、写真を見ながら解説していきます。
新品の接点
まずは新品の状態の接点です。銅のような色の部品とシルバーの丸い部分が接触することで「ON」となります。この接触する部分にアークが発生することで段々摩耗していきます。
一定期間使用した接点
一定期間使用した接点の状態がこちら(可動接点は取り外しています)。
新品の時と比べて丸い部分が摩耗し、接点の周辺が熱で少し黒くなっています。
三菱電機の交換基準では、「一番摩耗している接点の厚みが新品の50%以下」になった時とされています。
この状態でもまだ使用は可能です。
交換時期に近づいている接点
表面が荒れて接点の角が欠けてしまっています。このような状態になってしまうと、あまり長くはもたない為なるべく早く交換しましょう。
電磁接触器はある程度サイズが大きい機種であれば接点のみ交換することが可能です。
ダメージを受け続けた接点はどうなるか?
接点の開閉によってダメージを受け続けると以下のような不具合が発生する恐れがあります。
接点の接触不良
接点の接触面が摩耗や破損で荒れてしまうと、接点の接触抵抗が増えたり正常に導通出来なくなるなどして、モーターが動作しなかったり単相運転などの不具合が発生する可能性が高くなります。
接点の溶着
接点に短絡等の理由で高い電流が流れると、その時に発生する熱によって接点同士が溶けてくっ付いてしまうことがあります。これが「溶着」です
溶着はモーター焼損等による不具合によって大電流が流れて発生する場合が多いですが、接点の不良によって接触部が熱を持つことで発生する場合もあります。
接点が溶着すると設備が停止しないなどの誤動作が発生し、大変危険な状態になってしまうことがあります。
接点の点検方法
接点は電磁接触器のカバーを外すことで簡単に点検することができます。
以下のSTEPで点検していきましょう。
STEP1:点検する電磁接触器を決める
使用している電磁接触器の台数が少ない場合は良いですが、何十台何百台と使用している場合は点検するのも一苦労です。
使用台数が多い場合は、個々の電磁接触器の使用状況を洗い出して、どれぐらいの頻度で点検を行うべきかリスト化するのがおすすめです。
ポイントは以下の通りです。
- 1日当たりどれぐらい動いている(開閉している)か?
- 使用用途は何か?(電源用orモータ駆動用orブレーキ用・・・etc)
やはり1日の動作回数が多い電磁接触器の方が摩耗が速いです。また、電源用といった電流があまり流れない状態での開閉よりも、モータを駆動する用途のものの方が痛むのも速くなります。特に大きめのモータはそれが顕著です。
クレーンの巻上装置といった、モータが大きくて1日に何回も動作させるような用途に使用しているものを優先的に点検していきましょう。
尚、最近のサイズが小さい電磁接触器はカバーが取り外せないものも増えてきました。そのような電磁接触器は、これまでの故障履歴やメーカが定める開閉耐久回数を踏まえて、使用期限を決めて定期的に交換すると良いと思います。
STEP2:電源を切る
電磁接触器に接続されている一次側の線に電圧が来ている可能性があります。
必ず電源を切り検電を行って電圧がきていないことを確認しましょう。
安全の確保が第一です!
STEP3:電磁接触器のカバーを取り外す
それでは電磁接触器のカバーを取り外していきましょう。
三菱電機の場合は、電磁接触器の両端にマイナスドライバーを差し込むところがあります。
このような状態で両端をこじればカバーが簡単に取り外せます。
ちなみに僕が電磁接触器のカバーを開ける時に愛用している工具が下のようなものになります。
本来はシールを取り外す為の工具なのですが、先端の形状が丁度よくてとても使いやすいので気に入って愛用しています。
他にもカバーの両端を手でつまんで外すタイプや、大きな電磁接触器になってくるとカバーがビス止めになっていたりします。状況に応じて使用する工具を使い分けて下さい。
STEP4:接点を点検する
カバーを解放したら接点を点検します。
電磁接触器の接点へは光があまり差さないので、ハンデイライトなどの照明を当てて点検しましょう。
著しい摩耗や接点の欠けが見られた場合は交換計画を立てるか、予備があれば交換するようにして下さい。
都度、接点の写真を撮って記録を残しておくのも良いかもしれません。
尚、接点は必ず上側の接点と下側の接点を点検するようにして下さい。上側の接点が問題なくとも、下側の接点が悪くなっている場合もあります。
下側の接点については、取り付けてある場所によっては点検しずらい場合があります。そんな時は鏡を使うと点検しやすくなります。
STEP5:カバーを戻して復旧する
点検が終わったらカバーを確実に復旧して下さい。
カバーが確実に取り付けられていないと、設備の稼働中にカバーが外れてしまうことがあります。
接点のカバーは接点にゴミ等の異物が入らないようにする為と、接点で発生したアークを消弧する役割も兼ね備えています。
不具合を発生させない為にも、最後は必ずチェックするようにしましょう。
まとめ
以上、電磁接触器の接点の点検方法及びその重要性について解説しました。
電磁接触器の接点は使用すると消耗していく、いわゆる「消耗品」です。
定期的な点検を確実に行うことで、接点不良に起因する不具合をある程度未然に防止することが出来ます。
電気設備はいきなり故障することも多く、電気関係の保全マンの方々におかれては毎日大変かと思いますが、この記事を今後の保全活動に活かして頂ければ幸いです。