【どれを選ぶ?】三菱電機製インバータのA・E・D・F・Bシリーズの違いについて

インバータのシリーズ毎の紹介
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産業用インバータの市場において主要なメーカーのひとつである三菱電機。

現行の三菱電機製インバータは大きく分けて以下のシリーズがラインナップされています。

  1. FREQROL-Aシリーズ
  2. FREQROL-A800Plusシリーズ
  3. FREQROL-Eシリーズ
  4. FREQROL-Dシリーズ
  5. FREQROL-Fシリーズ
  6. FREQROL-Bシリーズ

これだけ種類があると、自分の用途に合ったインバータは一体どのシリーズなのか?機種選びに迷ってしまっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、それぞれのシリーズにはどのような特徴があるのかを簡単にまとめてみましたので、インバータ選びの参考にして頂けますと幸いです。

なべ
なべ

三菱電機のインバータは種類が非常に豊富ですね

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三菱電機製インバータの特徴

三菱電機製インバータは全般的に次のような特徴があります。

効率的にモーターを駆動できる

三菱電機製インバータは独自の制御技術である「アドバンスト磁束ベクトル制御」や、「リアルセンサレスベクトル制御」など、一般的なV/F制御以外の様々な制御方式を簡単な操作で使うことが可能です。

これらの高度な制御方式を駆使することで、トルク特性や速度制御の精度が増し、より効率的にモーターを駆動することができます。

ひでくん
ひでくん

三菱電機のインバータは機能性が本当に高いよね

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使いやすい

三菱電機製インバータは、操作しやすいパネルや分かりやすいインターフェースなど、ユーザビリティが非常に優れています。

この点については慣れの部分もありますが、他メーカーから三菱電機製のインバータを触ると、多くの人がその使いやすさを実感すると思います。

なべ
なべ

ダイヤル操作なので、パラメータ設定がとてもやりやすいです

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便利なソフトウェアが使える

三菱電機製インバータには「FR Configurator(エフアール コンフィグレータ)」という専用のソフトウェアがあり、USBケーブル1本でパソコンと接続することができます。

このソフトウェアを使用することで、パラメータの書き込みや読み出し、駆動データの測定などが可能であり、日々のメンテナンス業務を効率的に行うことができます。

ひでくん
ひでくん

インバータの交換や運転管理など、保全業務には欠かせないツールだよ

三菱電機の通信ネットワークに対応

三菱電機には「CC-Link(シーシーリンク)」と呼ばれるネットワーク技術があり、PLCや対応している機器同士と接続することで、制御や情報のやり取りなどの通信を行うことができます。

三菱電機製インバータはこのCC-Linkに対応している機種があり、通信ケーブル1本でPLCと複数のインバータとで通信を行うことができ、

なべ
なべ

インバータの配線だけでなくパラメータ設定も最小限で済むため、交換がかなり楽になります。

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シリーズ別の特徴について

三菱電機製インバータのシリーズにはそれぞれ次のような特徴があります。

FREQROL-Aシリーズ

引用先:三菱電機株式会社(FR-A820-0.4K-1 特長)

FREQROL-Aシリーズ(以下Aシリーズ)は、三菱電機製汎用インバータの中で最上位のシリーズになります。

汎用インバータでできる高度な駆動方式や制御方式を全て網羅しており、オプションを追加すればネットワークに接続して通信することもできます。

ある程度の回生にも耐えることができるため、コンベアなど回生負荷の低い用途であれば、ブレーキユニットなどのオプションがなくても駆動することが可能です。もちろん、オプションを正しく選定すれば、クレーンの巻上装置など負荷の大きな用途も難なくこなしてくれます。

一方で、Aシリーズには高機能ゆえに価格が高いこと、同容量の他シリーズと比べて少し大きいというデメリットが存在します。そのため、動きが単純で負荷が低い用途ではオーバースペックになる可能性があり、省スペース化が難しい場合もあります。

「三菱電機の中で最高のインバータを使いたい」という方には最適の選択肢になるインバータです。

なべ
なべ

機能性重視ならAシリーズが最強です

FREQROL-A800 Plusシリーズ

引用先:三菱電機株式会社(FR-A820-0.4K-60CRN 特長)

FREQROL-A800 Plusシリーズ(以下A800 Plusシリーズ)は、Aシリーズをベースに特定の用途に特化させたインバータです。

A800 Plusシリーズにはクレーンの用途に特化させた「for CRANES」、巻取機の用途に特化させた「for Roll to Roll」、内蔵している冷却装置で自身を冷やすことができる「冷却タイプ」、物流機器の用途に特化させた「for Automated warehouse」という4種類がラインナップされています。

for CRANES

for CRANESはクレーンの巻上や巻下運転の制御がしやすいよう、専用の機能やパラメータが追加されています。主な機能としては荷物のずり下がり防止機能や落下検出機能、停止時の荷物の振れを抑える制振機能などです。

また、クレーンは振動が大きい装置であることから、基板の素子を樹脂で固めたりコーティングするなどして、耐振動性や耐環境性も向上させています。

特に使用環境の厳しいクレーンへの用途にうってつけのモデルになっています。

for Roll to Roll

for Roll to Rollは、紙や電線などを巻き取ったり引き出したりする装置(巻取装置・巻出装置)に最適化されたインバータです。

巻取装置や巻出装置では一定の力で引っ張り続ける張力制御が非常に重要で、巻き取り・巻き出し中に変化する速度やトルクを最適に保てるよう、様々な演算機能や制御機能が追加されています。

冷却タイプ

インバータは熱が発生する装置であるため、特に大容量のインバータにおいては収納する制御盤の排熱装置が不可欠です。

冷却タイプはエアコン機能を自身で持っているインバータで、従来では排熱処理が難しかった環境でも条件次第で設置することが可能になります。

for Automated warehouse

for Automated warehouseは、スタッカクレーンと呼ばれる自動倉庫の中で稼働する装置に特化したインバータです。

自動倉庫とは、荷物を自動で棚へ入庫もしくは出庫してくれる装置で、その荷物の出し入れをスタッカクレーンが行っています。

スタッカクレーンには昇降・走行・フォーク(移載)の3動作あり、本来はPLCが大部分の制御を担当しています。for Automated warehouseは、この動作部分の制御をインバータだけで完結することができるほか、レーザー距離計等の検出器を直接接続することにより、位置決め制御まで行うことが可能です。

面倒な制御部分の設計工数を削減することができる、便利なインバータです。

ひでくん
ひでくん

これらの用途にマッチするなら、積極的に選びたいモデルだね

FREQROL-Eシリーズ

引用先:三菱電機株式会社(FR-E820-0.1K-1 特長)

FREQROL-Eシリーズ(以下Eシリーズ)は、三菱電機の中では中級クラスに位置していて、機能性と価格のバランスがとても優れているインバータです。使い勝手が非常に良いため、僕の職場ではもっとも使用頻度が高いシリーズとなっています。

EシリーズはAシリーズほど高機能が満載というわけではありませんが、必要十分な機能を一通り備えており、ほとんどの場合において事足りる性能を有しています。ブレーキユニットなどのオプションを適正に選定すれば、クレーンの昇降装置など負荷の大きな用途でも十分対応が可能です。

更に、サイズも小形なので盤の省スペース化にも一役買ってくれます。

「Aシリーズほどの機能は要らないが、ある程度の性能は欲しい」という最も多いニーズに応えることができるドンピシャなインバータがEシリーズです。

なべ
なべ

迷ったらEシリーズをまず検討してみてください

FREQROL-Dシリーズ

引用先:三菱電機株式会社(FR-D820-0.1K-008 特長)

FREQROL-Dシリーズ(以下Dシリーズ)は、Eシリーズを更に簡素化して、より使える機能を限定的にしたシンプルかつコストパフォーマンスに優れたインバータです。

「リアルセンサレスベクトル制御」が選択できなかったり、通信規格がRS-485のみであるなど、機能性だけを見ればEシリーズにも見劣りしますが、必要最低限の性能は十分有しています。

Dシリーズの最大の特徴としては、「簡単インバータ」というコンセプト通り「使いやすさ」に重きを置いている点です。配線部のカバーが扉式であったり、配線カバーが本体と一体化している(一部容量のみ)など配線がしやすく、FR Configuratorを使ってパラメータ設定する場合でも、電源不要でUSB-Cケーブル1本接続するだけで設定が可能です。

「機能性よりも使いやすさ・コスパ重視」という方にはとても良い選択肢になるのではないでしょうか。

ひでくん
ひでくん

USB-Cケーブルで接続できるのは、まだDシリーズだけだよ

FREQROL-Fシリーズ

引用先:三菱電機株式会社(FR-F820-0.75K 特長)

FREQROL-Fシリーズ(以下Fシリーズ)は、ポンプやファンといった回転時間の長いモーターの制御を最適に行えるように設計されたインバータです。始動トルクの向上や回転効率の最適化など、三菱電機の独自技術によってより高い省エネ効果を実現することが可能です。

更に、ポンプやファンなどの流量制御に不可欠なPID制御が充実しているほか、PID演算器を2個搭載していることで、ポンプの流量を調整しながらバルブの開閉量を調整するという、高度な制御もインバータ1台で行うことができます。

ポンプやファンなどの流体機械を駆動するモーターの制御は、積極的にFシリーズを選択するようにしましょう。

なべ
なべ

高効率モーターと組み合わせることで、より省エネ効果が高くなります

FREQROL-Bシリーズ

FREQROL-Bシリーズ(以下Bシリーズ)は、三菱電機製の耐圧防爆形モーターを駆動するための専用インバータです。

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耐圧防爆形モーターをインバータで駆動する場合、モーターとインバータの組み合わせが何でも良いわけではなく、セットで防爆検定を受けて合格した組み合わせでないと使用することはできません。

Bシリーズのインバータは、各容量ごとに対応するモーターとの組み合わせで検定を取っているため、防爆モーターをインバータで駆動したいというニーズに柔軟に応えられるよう、豊富なラインナップが準備されています。

しかも、BシリーズはAシリーズベースなので機能性や信頼性も優れています。

注意点としては、インバータ本体は防爆構造ではないこと、また使いたい制御方式(V/F制御・アドバンスト磁束ベクトル制御・ベクトル制御)によってもインバータの型式と組み合わせるモーターが変わってくるという点です。

特に、組み合わせに関しては、三菱電機の組合せ表をよく確認して、正しい組み合わせで使用するようにしてください。

ひでくん
ひでくん

防爆はいろいろと気を遣うね

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まとめ

以上、三菱電機製インバータについて、シリーズごとの特徴や違いについて解説しました。

三菱電機製インバータは、一見すると全部同じように見えてしまいますが、コンセプトや用途がシリーズごとに異なります。是非本記事を参考に、ご自分の用途に合った最適なシリーズを選ぶようにしてください。

シリーズごとの違いまとめ
  • FREQROL-Aシリーズ:高機能な最上位モデル
  • FREQROL-A800 Plusシリーズ:特定の用途特化モデル
  • FREQROL-Eシリーズ:バランスの取れたオールマイティモデル
  • FREQROL-Dシリーズ:使いやすさ重視のコスパモデル
  • FREQROL-Fシリーズ:ポンプ・ファン等の流体機械専用モデル
  • FREQROL-Bシリーズ:耐圧防爆形モーターの専用モデル

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ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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