【ニードルベアリングとは?】特徴やメリット・デメリットについて解説
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ベアリングには様々な種類がありますが、その中のひとつに「ニードルベアリング」というものがあります。
“ニードル”と聞いて、「針?」と思うかもしれませんが、実際に針のように細いローラーが組み込まれていて、このようなベアリングを総称して「ニードルベアリング」と呼んでいます。
一口に「ニードルベアリング」と言っても、ボールが入っている一般的なボールベアリングと何が違うのか、よく分からないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、「ニードルベアリング」の特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説していきますので、是非参考にしてください。
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ニードルベアリングはボールベアリングにはない様々な強みがあります
ニードルベアリングの特徴
ニードルベアリングは以下のような構造をしています。
引用先:NTN御前崎製作所(製品紹介)
ニードルベアリングは”ニードル“という名前の通り、針状の細長いコロ形のローラー(転動体)が内蔵されていて、これが回転することでベアリングとしての機能を果たしています。
内部には保持器が有り、これがあることでローラーがバラバラにならず、常に一定の間隔が保たれるようになっています。
一方、一般的なボールベアリングの構造を見てみると、ニードルベアリングと仕組み自体に大きな違いが無いことが分かります。
引用先:NTN御前崎製作所(製品紹介)
つまり、一般的なボールベアリングと比べて、採用されている転動体の形状が異なるという点だけがニードルベアリングの特徴となっています。
ただ、この転動体の違いによって、ニードルベアリング特有の「薄さ」をはじめ様々なメリットを生み出しています。
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転動体が異なるだけで、そのベアリングの特性がかなり変わってくるよ
ニードルベアリングの種類
ニードルベアリングには主に次ような種類が存在します。
むき出しタイプ
ニードルと保持器だけで構成されているのが、むき出しタイプのニードルベアリングです。
引用先:日本トムソン株式会社(汎用ニードルケージ)
日本トムソンからは「ニードルケージ」、NSKからは「ケージ&ローラ」という製品名でラインナップされています。
このニードルベアリングは一般的なベアリングにある「外輪」と「内輪」が無いというのが特徴で、軸やハウジングに直接ニードルが当たって回転します。
ベアリング自体の厚さが非常に薄いため、スペースに制約のある箇所や、コンパクトな設計が求められる機械などへの使用に適しています。
また、メタルなどの滑り軸受けからの置き換え用として使うこともできるなど、様々な用途に活用できる点も、このベアリングの特徴の1つとなっています。
一方、むき出しタイプのニードルベアリングは軸とハウジングどちらにも固定ができないため、ベアリング本体が抜け出ないような構造を考える必要があります。
シェル形タイプ
引用先:日本トムソン株式会社(シェル形ニードルベアリング)
シェル形タイプは、むき出しタイプの外側にシェルと呼ばれる薄い外輪が組み込まれたニードルベアリングです。
むき出しタイプのニードルベアリングはハウジング側に固定が出来ませんでしたが、シェル形の場合はシェルとハウジングを圧入によって固定することができるため、別途抜け止めを考える必要がないというメリットがあります。
シェル部分のパーツが増えるため、むき出しタイプよりも若干外径が大きくなるものの、ベアリングとしてはかなり薄い部類に入ります。
ソリッド形タイプ
引用先:日本トムソン株式会社(旋削形ニードルベアリング)
ソリッド形タイプは削り出しで機械加工された外輪や内輪を使用しているのが特徴で、シェル形のものと比べて剛性が大きく、機械的な精度も非常に高いニードルベアリングです。
そのため、高荷重・高回転などの負荷条件に適した幅広いバリエーションがあり、内輪の有無も選択することが可能です。
ニードルベアリングの中では比較的厚みが出てしまいますが、それでも一般的なベアリングよりも薄く、省スペース設計には非常に適しています。
カムフォロア・ローラフォロア
引用先:日本トムソン株式会社(標準カムフォロアCF,CR)
引用先:日本トムソン株式会社(Cルーブローラフォロア)
カムフォロア及びローラフォロアは、そのままローラーとして使うことができる肉厚の外輪をもったベアリングのことを言います。
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一見するとボールベアリングのように見えなくもありませんが、実はカムフォロア・ローラフォロアにもニードルベアリングの構造が採用されています。
引用先:日本トムソン株式会社(Cルーブローラフォロア)
ローラー部分はソリッド形に近い構造ですが、直接負荷を受ける外輪は非常に肉厚に設計されており、さらに回転部分をニードルベアリングとすることで、コンパクトさと高耐荷重を両立させています。
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こうして見ると、ニードルベアリングは色んなバリエーションがありますね
ニードルベアリングのメリット
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ニードルベアリングには次のようなメリットがあります。
支持できる荷重が高い
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ニードルベアリングは、同径のボールベアリングと比べて負荷できる定格荷重が大きいというメリットがあります。
例えば、外径がφ55㎜、幅13㎜のNTN製ボールベアリング「6006」と、外径φ55㎜、幅20㎜のNTN製ソリッド形ニードルベアリング「RNA4907R」で比較してみます。
基本動荷重 | 基本静荷重 | |
6006 | 14.7kN | 8.30kN |
RNA4907R | 32.0kN | 50.0kN |
両者を比較すると、基本動荷重と基本静荷重どちらもニードルベアリングの方が高いことが分かります。
これは、ニードルベアリングに内蔵されているコロが細長いローラ状になっているため、一般的なボールベアリングと比べて接触面積が大きくなるからです。
これにより、同径のボールベアリングよりも高い荷重を受けることが可能となっています。
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「6006」を2個並べて使っても「RNA4907R」の方が受けられる荷重が高くなるね
非常にコンパクト
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ニードルベアリングは負荷できる荷重に対して、一般的なボールベアリングと比べてサイズが相対的に小さく非常にコンパクトです。
また、ベアリング自体の厚みが薄く、外径に対して内径が大きい点も特徴の1つとなっています。
引用先:能瀬精工株式会社(ニードルベアリング)
そのため、高荷重が掛かる場合でも大きなベアリングを使用せずに済み、また、径の太い軸を使用する際でも、省スペース化を図ることが可能になります。
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高負荷が要求されるわりにハウジングの大きさに制限がある場合など、ニードルベアリングのコンパクトさが武器になります
ニードルベアリングのデメリット
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一方で、ニードルベアリングには次ようなデメリットがあります。
スラスト方向の荷重に弱い
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ニードルベアリングはラジアル方向の力にはとても強いですが、スラスト方向の力には弱いというデメリットがあります。
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ラジアル方向とは軸に対して垂直方向、スラスト方向とは軸に対して平行方向のことを指します。
つまり、ニードルベアリングは上下に真っ直ぐ掛かる荷重に対してはめっぽう強いのですが、斜めに引っ張るなどスラスト方向に力が掛かってしまうと、寿命が短くなったり破損するなどの原因になってしまいます。
その点、ボールベアリングの場合はスラスト方向の力にもある程度耐えてくれるので、吊り上げ用途など斜めに荷重の掛かるような場合には、ボールベアリングの方が使いやすいかもしれません。
ちなみに、このボールベアリングとニードルベアリングの特性を同時に活かした、複合形ニードルベアリングと呼ばれるユニークな製品があります。
引用先:日本トムソン株式会社(複合形ニードルベアリング)
日本トムソン株式会社にラインナップされていますので、気になる方はチェックしてみてください。→→リンク←←
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カラーを入れるなどして、スラスト方向に動かないように構造を工夫すれば、ニードルベアリングの寿命を伸ばすことも可能だよ
コストが高くなる場合がある
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ニードルベアリングは一般的なボールベアリングと比較して相対的に割高になります。
例えば、メリットのところで挙げたNTN製ボールベアリング「6006」と、NTN製ソリッド形ニードルベアリング「RNA4907R」で価格比較してみます。
「6006」の場合は、Amazonで価格を調べてみると1個で500円ぐらい、シール付きのZZでも700円ぐらいでした。一方、同じAmazonで「RNA4907R」を見てみると、1個で1,800円ぐらいで販売されています。
同じぐらいの基本動荷重性能を持つ「6307」でもAmazon価格で約1,000円と、やはり大きさや価格だけで単純に比較すると、ニードルベアリングの方がどうしてもコストが高くなってしまいます。
省スペースで高荷重に対応できるというメリットがある反面、部品のコストがアップする可能性がありますので、適切な用途や環境で使用することが重要です。
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特性を理解して上手に使い分けましょう
まとめ
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以上、ニードルベアリングの特徴やメリット・デメリットについて解説しました。
ニードルベアリングは転動体に細長いコロ状のローラーを使用することで、省スペース化を実現しつつ高荷重に対応できるというメリットがある一方で、スラスト方向の荷重に弱いことやコストが高くなる可能性があるデメリットも存在します。
ただ、適切な用途で最適な機種を選定すれば、ニードルベアリングのメリットを最大限享受することができ、その結果、設備の課題を解決できるかもしれません。
是非、本記事の情報を参考にしていただき、メリットを最大限に活かした最適なベアリング選びを行ってください。