【熱電対(ねつでんつい)とは?】原理や種類について分かりやすく解説

熱電対のイメージ
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熱電対(ねつでんつい)」と呼ばれるものをご存じでしょうか?

熱電対とは簡単に言うと「温度を測定するセンサー」のことで、工場のプラント設備から医療関係、自動車や家電製品に至るまで様々な分野で広く使われています。

熱電対を使用することで、様々な物体の温度を測定することができるのですが、その仕組みについては詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな熱電対の原理や種類について出来るだけ分かりやすく解説していきますので、是非参考にしてください。

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熱電対って何?

熱電対とは2種類の異なる金属の電線を繋げて作ったもののことで、この電線の先を測定したい物体に接続することで温度センサーとして機能するようになります。

熱電対の金属の組み合わせはとても沢山のバリエーションが有り、用途に応じて様々な組み合わせが使い分けられています。

熱電対を使って温度測定を行うには、熱電対に加えて専用の計測機器を使います。

なべ
なべ

ヒーターの温度を設定値に近づくよう制御する温調器にも熱電対は使われています

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どうやって温度を測定しているの?

熱電対は名前に「」の文字が入っているように、電気を利用した方法で温度の測定をしています。

熱電対の繋ぎ方

熱電対を使って物体の温度を測定する時、次の図のような繋ぎ方をします。

温度を測定したい対象物に片方の電線2本を繋いで1本の状態にし、導体が測定対象に触れるように取り付けます。測定対象にタップ穴などを明けることができれば、圧着端子などで取り付ける方が安定します。もちろん、テープなどで貼り付けるなどの方法でも測定は可能です。

熱電対として売られてる製品は、測定対象側は様々な形状のバリエーションがありますので、測定したいものの形や素材に合った最適なものを選ぶことができます。

計測機器側は熱電対を接続する部分にプラスとマイナスを接続します。熱電対は組み合わせる金属によってプラスとマイナスが決まっていますので、間違えないようにしましょう。

尚、ヒーターのようなとても熱くなるものを熱電対で測定する場合は、普通の電線を選んでしまうと被服が溶けてしまいますので、耐熱性が高いものを選ぶようにしてください。

ひでくん
ひでくん

これで温度が測定できるなんて不思議だね

温度測定の原理

熱電対では「ゼーベック効果」と呼ばれる現象を利用して温度測定を行っています。

ゼーベック効果とは「異なる温度の2種類の金属を繋げたとき、その温度差によって金属間に電圧が発生し電流が流れる」という現象を言います。

測定対象の温度がT1で計測機器側の温度がT2とすると、T1とT2で温度差が生まれてゼーベック効果によって電圧が発生し、+からーへ向かって電流が流れます。

この電圧・電流はT1とT2の温度差の大きさに応じて変化します。

つまり、計測機器はこのゼーベック効果によって発生した電圧の大きさを測定することで温度に換算しています。これが、熱電対による温度測定の原理になります。

熱電対の種類は何があるの?

2種類の金属の組み合わせである熱電対には次のような種類があります。

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K型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:ニッケル及びクロムを主とした合金(Ni-Cr)
  • ー側:ニッケル及びアルミニウムを主とした合金(Ni-Al)

測定可能範囲

  • 約-200℃〜1370℃

特徴

低温から高温まで幅広く対応でき、かつコストパフォーマンスにも優れるため、一般的に一番よく用いられている熱電対です。

E型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:ニッケル及びクロムを主とした合金(Ni-Cr)
  • ー側:銅及びニッケルを主とした合金(Cu-Ni)

測定可能範囲

  • 約-200℃〜900℃

特徴

JISが定める組み合わせの中で発生する電圧が最も高いため、精度よく温度を測定することができる熱電対です。酸化による経年変化がしにくいという特徴もあります。

T型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:銅(Cu)
  • ー側:銅及びニッケルを主とした合金(Cu-Ni)

測定可能範囲

  • 約-200℃〜400℃

特徴

電気抵抗が低い銅を素材として使用しているため、小さな温度変化に対しても電圧が発生しやすい特性を持っています。この特性を活かして、冷凍庫などの低温環境での温度測定に最も適した熱電対です。

N型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:ニッケル・クロム・シリコンを主とした合金(Ni-Cr-Si)
  • ー側:ニッケル及びシリコンを主とした合金(Ni-Si)

測定可能範囲

  • 約-200℃〜1300℃

特徴

K型熱電対と同様、低温から高温まで対応が可能な熱電対で、特に高温域に対してK型よりも安定した特性をもっています。また、酸化に強く長寿命です。

使用している金属が貴金属ではないため、プラチナなどの熱電対と比べて安価である点も特徴の1つです。

J型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:鉄(Fe)
  • ー側:銅とニッケルを主とした合金(Cu-Ni)

測定可能範囲

  • 約-40℃〜750℃

特徴

J型熱電対はE型に次いで発生する電圧が高いため、比較的精度のよい安定した測定が可能な熱電対です。また、素材に鉄を用いていることからコストパフォーマンスにも優れています。

ただし、高温域では酸化しやすいというデメリットがあるため、測定範囲が約550℃ぐらいまでの中温域での使用に適した熱電対です。

R型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:ロジウムを13%含むプラチナ合金(Pt-13%Rh)
  • ー側:プラチナ(Pt)

測定可能範囲

  • 約0℃〜1600℃

特徴

R型熱電対は熱電対の中でも高温安定性や耐久性が非常に高く、高炉の温度など非常に高い温度測定を行う用途に適しています。また、測定精度も高くバラツキが少なく安定しているため、医療用途など精度が求められる用途にも使用されています。

使用しているのがロジウムやプラチナといった貴金属であるため、K型熱電対等と比べるとやはりコストは高くなります。

特性が近い熱電対で「S型熱電対」と呼ばれるものがあり、こちらは+側のロジウムが10%と含有量が少ないため、若干特性が落ちるもののコストを落とすことが可能です。

R型とS型は特性の違いがあまりないことから、R/S型と称されるケースもあります。

B型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:ロジウムを30%含むプラチナ合金(Pt-30%Rh)
  • ー側:ロジウムを6%含むプラチナ合金(Pt-6%Rh)

測定可能範囲

  • 約600℃〜1800℃

特徴

B型熱電対はR/S型熱電対に更にロジウムの含有量を増やすことで、より高温域の測定に特化させた熱電対です。その最大測定温度が約1800℃と、市販で購入できる熱電対の中では測定できる温度が最も高い部類に入ります。

逆に、測定対象の温度が600℃未満の場合は、発生する電圧が小さくなるという特性があるため、用途として適さないというデメリットがあります。

ロジウムの含有量が多いことからコストも高くなります。

C型熱電対

金属の組み合わせ

  • +側:レニウム5%を含むタングステン合金(W-5%Re)
  • ー側:レニウム26%を含むタングステン合金(W-26%Re)

測定可能範囲

  • 約800℃〜2320℃

特徴

C型熱電対はレニウムという融点が非常に高い金属を使用した、熱電対の中で最も高い温度測定が可能な熱電対です。高温環境化において安定した精度や耐久性をもち、長期間の使用にも耐えることができます。

反面、非常に酸化しやすいという特性があるため、大気中での使用が難しいというデメリットがあります。そのため、C型熱電対を使用する場合は、真空もしくは不活性ガスなどを充填した還元雰囲気(酸素のない雰囲気)で使用する必要があります。

用途や使用環境が限定されてしまう特殊な熱電対ですが、宇宙関係や核関係などの特定の分野においては必要不可欠な存在です。

なべ
なべ

JISで規定された熱電対はS型熱電対を含めて合計9種類です

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熱電対のクラス分け

熱電対には温度の許容誤差ごとに規定されたクラス(階級)分けがされています。そのため、用途に応じた熱電対の種類の選定に加えて、許容できる温度の精度に応じたクラス(階級)を選ぶ必要があります。

熱電対のクラス分けはISO60584で規定されていて、精度ごとにクラス1〜クラス3の3つに分類されています。

種 類許容差のレベル分け
クラス1クラス2クラス3
許容差600℃以上800℃未満
±4.0℃
600℃以上1700℃未満
±0.0025×t℃
800℃以上1700℃未満
±0.015×t℃


許容差0℃以上1100℃未満
±1.0℃
0℃以上600℃未満
±1.5℃
1100℃以上1600℃未満
±0.003×(t-1100)+1℃
600℃以上1600℃未満
±0.0025×t℃
許容差-40℃以上375℃未満
±1.5℃
-40℃以上333℃未満
±2.5℃
-167℃以上40℃未満
±2.5℃
375℃以上1000℃未満
±0.004×t℃
333℃以上1200℃未満
±0.0075×t℃
-200℃以上-167℃未満
±0.015×t℃
許容差-40℃以上375℃未満
±1.5℃
-40℃以上333℃未満
±2.5℃
-167℃以上40℃未満
±2.5℃
375℃以上1000℃未満
±0.004×t℃
333℃以上1200℃未満
±0.0075×t℃
-200℃以上-167℃未満
±0.015×t℃
許容差-40℃以上375℃未満
±1.5℃
-40℃以上333℃未満
±2.5℃
-167℃以上40℃未満
±2.5℃
375℃以上800℃未満
±0.004×t℃
333℃以上900℃未満
±0.0075×t℃
-200℃以上-167℃未満
±0.015×t℃
許容差-40℃以上375℃未満
±1.5℃
-40℃以上333℃未満
±2.5℃
375℃以上750℃未満
±0.004×t℃
333℃以上750℃未満
±0.0075×t℃
許容差-40℃以上125℃未満
±0.5℃
-40℃以上133℃未満
±1.0℃
-67℃以上40℃未満
±1.0℃
125℃以上350℃未満
±0.004×t℃
133℃以上350℃未満
±0.0075×t℃
-200℃以上-67℃未満
±0.015×t℃
許容差426℃以上2315℃未満
±0.01×t℃
※表内の「t」は測定温度の絶対値を表す
ひでくん
ひでくん

クラス3→クラス2→クラス1になるごとに精度が良くなっていくよ

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まとめ

以上、熱電対の原理や種類について解説しました。

熱電対には以下の種類があり、それぞれ得意とする温度範囲や用途が異なります。

  • K型熱電対:低温から高温まで幅広く使える最も一般的な熱電対
  • E型熱電対:発生する電圧が最も高く、全体的に精度が高い
  • T型熱電対:低温域での使用に適している
  • N型熱電対:高温域の安定性が高く、K型よりも耐酸化性に優れる
  • J型熱電対:中温域に適しており、コストパフォーマンスが高い
  • R/S型熱電対:高温域に強く、耐酸化性も非常に高い
  • B型熱電対:高温域に特化している反面、低温域での使用には適さない
  • C型熱電対:超高温域まで測定できるが、耐酸化性が低い

クラス分けも考慮しながら、ご自分の用途にあった熱電対を正しく選ぶようにしましょう。

ご参考までに、熱電対を利用した温度計測器類がHIOKIから販売されていますので、ご興味があればチェックしてみてください。

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ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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