検出器関係

【違いは何?】センサーのNPN出力とPNP出力について解説

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光電センサーや近接センサーの仕様を見ていると出力方式のところで必ず書かれている「NPN」や「PNP」という記述。「NPNオープンコレクタ」や「PNPオープンコレクタ」と表現されているメーカーサイトもあります。

センサーを購入するときに「NPN」や「PNP」という表現を見て

どっちを使ったらいいんだ?

と悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。

この記事では「NPN」出力と「PNP」出力の違いについて出来るだけ分かりやすく解説していきたいと思います。

なべ
なべ

一般的な制御の用途で使うのは圧倒的に「NPN」出力が多いですね

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そもそもセンサーってどうやって信号を出してるの?

何かを検出したときに信号を出したり切ったりしているセンサー、この信号の入り切りは「トランジスタ」と呼ばれる半導体素子を使って行っています。

こんな感じの部品ですね。これのメチャクチャ小さいものが中に入っているというイメージです。

このトランジスタがスイッチとして機能し電流の流れを入り切りします。

この電流の流れが「信号」として処理されるわけですね。

「NPN」と「PNP」の違いは、実はこのトランジスタの種類が違うことで生まれるんです。

トランジスタの種類の違いは、次の2種類の半導体の組み合わせによって変わります。

半導体の種類

センサーで使われるトランジスタは次の2つの半導体を組み合わせて作られます。

n型半導体

引用先:semi journal(p型半導体とn型半導体)

n型半導体はシリコン(Si)の中に不純物のリン(P)をごく微量混ぜることで作られる「不純物半導体」と呼ばれるものの一種です。

シリコンの中にリンが入ると、共有結合出来なかったマイナスの電子が1個余った状態になります。

なので、n型半導体に電圧を掛けると余った電子が+側に移動して電流が流れます。

引用先:新電元工業(n型半導体、p型半導体とは)

このような特性を持った半導体がn型半導体です。シリコンだけの半導体と比べてマイナスの電子が多いことからネガティブ(negative)の頭文字をとってn型と呼ばれています。

p型半導体

引用先:semi journal(n型半導体とp型半導体)

p型半導体はシリコン(Si)の中に不純物のホウ素(B)をごく微量混ぜることで作られる不純物半導体です。

シリコンの中にホウ素が入ると、今度は共有結合にマイナスの電子が1個足りない状態になります。このマイナスの電子が結合出来なかった部分を正孔(ホール)と呼びます。

引用先:新電元工業(n型半導体、p型半導体とは)

このp型半導体に電圧を掛けると、正孔は不安定なので近くの電子と結合しようとします。近くの電子が移動して正孔と結合してしまうと、移動した電子の抜けた部分がまた新しい正孔となります。これが繰り返されることで正孔がマイナス側へ向かって生成されて電流が流れます。

このような特性をもった半導体がp型半導体です。シリコンだけの半導体と比べて正孔が多いことからポジティブ(positive)の頭文字をとってp型と呼ばれます。

トランジスタの違い

センサーで使われるトランジスタは、n型半導体とp型半導体を組み合わせて次の2種類が作られています。

  • NPN型トランジスタ:NPN出力用
  • PNP型トランジスタ:PNP出力用

それぞれのトランジスタの違いについて解説します。

NPN型トランジスタ

NPN型トランジスタは次のような構造になっています。

NPN型トランジスタの構造

NPN型トランジスタは薄いp型半導体をn型半導体でサンドイッチした構造になっています。N・P・Nの順番で組み合わせているのでNPN型と呼びます。

それぞれの半導体には電極が取り付けられていて、それぞれ「コレクタ」・「ベース」・「エミッタ」という名前が付いています。

引用先:コアスタッフ株式会社(NPNとPNPの違い)

電圧を何もかけていない状態ではベースとエミッタの間に空乏層がある為、何処にも電流は流れません。

ではNPN型トランジスタのベースにプラス、エミッタにマイナスの電圧を加えてみます。するとどうなるのでしょうか?

図のように、エミッタのn型半導体の中にある電子がベースのp型半導体へ向かって流れていきます。エミッタの電子がベースに流れていくと、ベースの正孔とエミッタの電子が結合してベースからエミッタ方向へ電流が流れます。

このとき、エミッタから流れてきた電子はベースを通り越してコレクタの方へ大量に流れ込んでいきます。これは、ベースの正孔よりもエミッタの電子の方が数が多いためですね。

電子の流れる方向と電流の方向は逆となるので、この場合はコレクタからエミッタへ向かって電流が流れることになります。

これがNPN型トランジスタの動作原理です。

つまりこのベースとエミッタに加える電圧を制御することで、コレクタとエミッタ間の電流を制御(ON/OFF)できるわけです。

このようにベースとエミッタ間の電流を制御して、コレクタとエミッタ間をスイッチのようにON/OFFする方式のことをオープンコレクタと呼びます。

PNP型トランジスタ

PNP型トランジスタの構造は次の通りです。

PNP型トランジスタの構造

PNP型の場合は薄いn型半導体をp型半導体でサンドイッチした構造になっています。NPN型とは逆の構造をしていますね。

P・N・Pの順番で組み合わせているのでPNP型と呼びます。

PNP型トランジスタにも「コレクタ」・「ベース」・「エミッタ」の電極がそれぞれに取り付けられています。

引用先:コアスタッフ株式会社(NPNとPNPの違い)

PNP型トランジスタについても、電圧をかけていない状態では空乏層により電流は流れません。

PNP型トランジスタの場合はエミッタにプラス、ベースにマイナスの電圧をかけます。するとどうなるのかというと

エミッタのp型半導体の中にある正孔がベースのn型半導体の方へ流れ込んでいきます。ベースの中にはマイナスの電子が入っているので、エミッタの正孔とベースの電子が結合してエミッタからベースへ向かって電流が流れます。

このとき、結合しきれなかったエミッタの正孔がベースを通り超してコレクタの方へ流れ込んでいきます。正孔の方が数が圧倒的に多いからですね。

この場合、正孔の流れる方向が電流の流れる方向になるため、エミッタからコレクタへ向かって電流が流れていきます。

NPN型トランジスタとはまさに逆の動きですね。

これがPNP型トランジスタの動作原理です。

センサーへの接続

NPN型トランジスタとPNP型トランジスタの動作原理が分かったところで、次は各出力方式のセンサーをどのように接続するのか解説していきます。

NPN出力

NPN出力のセンサーはNPN型トランジスタを使って下の図のように回路が組まれています。

引用先:北陽電機株式会社(トランジスタ出力)

NPN出力の場合はセンサーの電源を図のように正しく繋ぎ、出力は負荷のマイナス側に、プラス(+V)を負荷のもう一方にそれぞれ接続します。

NPNの場合、B:ベースにプラス・E:エミッタにマイナスの電圧をかけるとC:コレクタからE:エミッタへ向かって電流が流れるんでしたね。

センサーが動作すると、内部の制御回路によりベースとエミッタに電圧が加えられます。

すると、コレクタからエミッタを通って電源のマイナス(0V)までの回路が出来上がるので、接続した負荷に電流が流れるようになります。

センサーを使ってブザーやリレーのコイルを動作させたい時は、このように接続します。

PNP出力

PNP出力のセンサーはPNP型トランジスタを使って下の図のように回路が組まれています。

引用先:北陽電機株式会社(トランジスタ出力)

PNP出力のセンサーの場合は、センサーの電源を図のように正しく繋ぎ、出力は負荷のプラス側に、負荷のもう一方はマイナス(0V)にそれぞれ接続します。

PNPの場合はNPNとは逆で、E:エミッタにプラス・B:ベースにマイナスの電圧をかけることで、E:エミッタからC:コレクタへ向かって電流が流れるんでしたよね。

センサーが動作すると内部の制御回路によりエミッタとベースに電圧が加えられ、エミッタからコレクタへの回路が形成されます。

これにより、コレクタと電源のマイナス(0V)に接続されているコイルやブザーなどの負荷を駆動することができるようになります。

NPN出力とPNP出力の特徴について

センサーの出力にはNPN出力とPNP出力の2種類があるのは分かりました。それぞれの出力方式にはどのような特徴があるのでしょうか?

NPN出力の特徴

日本でよく使われる

日本の設備において、制御に使用するセンサーはNPN出力が一般的です。PLCなどの設備を制御する機器においては、NPNに対応しているものがほとんどです。

その為、日本国内においてPLCなどに接続して使用する用途ではNPN出力のセンサーを選択する方が無難でしょう。

センサーの品種が豊富

日本ではNPN出力のセンサーが一般的に使われるというところから、やはりセンサーの種類は圧倒的にNPN出力のものが多いです。

機種によってはNPN出力とPNP出力を選んで購入することが出来ますが、何も指定しなければNPN出力のセンサーになります。

出力が地絡すると負荷が誤動作

NPN出力の出力線が地絡してしまった場合、負荷に電圧がかかる(負荷のプラスから地面の0Vへ向かって電流が流れる)回路が出来上がってしまう為、負荷が動作してしまう可能性があります。(リレーならON、ブザーなら音が鳴る、表示灯なら点灯する・・・etc)

場合によっては機械が勝手に動作してしまうということもあり得ます。

この点はNPN出力のデメリットと言える部分です。

PNP出力の特徴

ヨーロッパでよく使われる

ヨーロッパの産業界においてはPNP出力のセンサーが一般的によく使われます。そのため、PLCの入力についてもPNPに対応したものがスタンダードとなります。

なので、例えばシーメンスといった海外メーカーのPLCを選定する場合などは注意が必要です。

逆に日本で設計・製作した制御装置をヨーロッパなどの海外に納入する場合も、事前の確認や打ち合わせで仕様をしっかりと決めておくことが肝要です。

安全関連のセンサーはPNP出力

ライトカーテンなどの安全用途で使用するセンサーについては、PNP出力のものが多いです。特に人間を守ることを目的とするセーフティセンサーについては、PNP出力しかないものもあったりします。

なぜ安全用途のセンサーがPNP出力なのかというと、センサーの出力線が万が一地絡したとしても負荷に電圧がかからない(出力の線が地絡=0V、負荷が繋がっている線も0Vなので電流が流れない)ので、負荷の誤動作が起きにくい為です。

安全専用PLC(セーフティコントローラー)についても入力はPNPに対応しています。

NPN入力の機器でも使えなくはない

PNP出力のセンサーを一般的なPLCで使う場合、リレー受け(センサーにリレーを繋いで間接的に信号を入力する)すれば何とか使うことは可能です。逆もしかりですが。

なので、どうしてもPNP出力のセンサーしかないという場合でも、リレーを使って工夫すれば何とかはなるので、1つの打ち手として覚えておくといいでしょう。

まとめ

以上、センサーのNPN出力とPNP出力について解説しました。

トランジスタの違いなど構造的に考えると難しいのですが、

  1. NPN出力出力に電流が入っていく
  2. PNP出力出力から電流が出てくる

このように覚えて頂ければ良いかと思います。

設備メンテナンスをされている保全マンの方であれば、必ず直面したことがある事柄でしょう。これを機に是非覚えて頂いて今後の仕事に活かして下さい。

皆さんの仕事の一助になれば幸いです。

ABOUT ME
なべ
なべ
エンジニア
設備保全一筋20年の保全マン。
専門は電気であるが、機械関係の仕事にも携わっている。
現在は営業・設計・製作・工事までを1人でこなすハードな毎日を送っている。
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