【パワーサプライとは?】仕組みとその役割について詳しく解説
家で使う家電製品や設備の制御盤の中にある制御機器など、私たちの身の回りにある電子機器は「直流電源」で動作しています。
ですが、家庭内コンセントや工場の電源は全て「交流電源」で供給されています。
電子機器は直流電源で動作するのに、交流電源しか供給されないのであればそのままでは使うことは出来ません。
そこで必要になるもの、それが「パワーサプライ」です。
この記事では主に制御盤内で使われるパワーサプライについて、概要とその役割を解説していきます。
パワーサプライは設備の制御機器を動かすのに必要不可欠な機器です。
パワーサプライとは
パワーサプライを一言で言うと「直流安定化電源」です。英語で書くと「POWER(電源)SUPPLY(供給)」という意味になります。
パワーサプライとはコンセント等の交流(AC)電源から直流(DC)電源を作り出し、安定的に接続した機器へ直流の電気を供給するという機器の総称を言います。
パワーサプライは設備の制御盤の中には必ず使われており、無くてはならないとても重要な機器の1つです。
オムロンやIDEC、TDKラムダやコーセル等が有名どころですね。
引用先:オムロン スイッチング・パワーサプライ(S8VK-G12024)
引用先:TDKラムダ AC入力電源(RWS50B-24)
引用先:コーセル LHPシリーズ(LHP300F)
パワーサプライの仕組み
パワーサプライには構造の違いから次の2種類があります
スイッチング方式
スイッチング方式は入力された交流電源を半導体を使って高速にスイッチングすることで所定の直流電源を得る方式です。スイッチングレギュレータとも呼ばれます。
引用先:松定プレシジョン(リニア電源とスイッチング電源の違い)
まずは「商用ライン」の「整流回路」部分のダイオードの性質を利用して一旦交流から直流に変換します。一度整流してしまうとトランスでは電圧を変換することが出来ない為、ここで重要な役割を果たすのが半導体素子による高速スイッチングです。
高速スイッチングにより再度交流に変換して「高周波トランス」に送り込み直流電源を作るのですが、安定した直流電圧を出力する為に「制御回路」部分でスイッチングのパルス幅や周波数を制御します。制御された電源は「整流・平滑部」を通って二次側へ出力されます。
スイッチング方式は小型軽量で効率が良いのがメリットですが、電圧変換にスイッチングを行っている為にノイズが発生するというデメリットも存在します。
とは言え、発生するスイッチングノイズは各メーカーの技術によってかなり低減されているので、ユーザー側で特別なノイズ対策を行う必要は有りません。
制御装置用に使われるパワーサプライはこのスイッチング方式が主流となっています。スマートフォンを充電するときに使うUSB充電器はスイッチング方式を採用しています。
リニア方式
リニア方式は入力された交流電源をトランスを使って直接電圧を変換して整流し、所定の直流電源を得る方式です。
引用先:松定プレシジョン(リニア電源とスイッチング電源の違い)
「商用ライン」から入力された交流電源は「トランス」部分で一旦低い電圧に変換され、「整流回路」部分のダイオードによって整流されたあと各回路を通って直流電源が出力されます。
リニア方式は半導体などの多くの部品を使うスイッチング方式と違って、構造がシンプルでノイズの発生が少ないのが特徴です。
その代わり、スイッチング方式と比べて低効率であることから発熱しやすく、トランスを有していることから本体が重く大きくなってしまうというデメリットがあります。
リニア方式のパワーサプライはノイズ発生の少なさから、オーディオ機器やノートパソコンのACアダプタといったノイズを嫌う機器の電源装置で広く用いられています。
パワーサプライの役割
パワーサプライの役割は大きく分けて次の2つがあります。
交流電源から直流電源へ変換
1つ目は交流電源から直流電源へ変換(AC-DC変換)して電子機器へ電源を供給する役割です。AC-DCコンバータと呼ばれることもあります。
設備の制御用に使われるPLCであったり光電センサーやロータリーエンコーダなどの検出機器は、一部の仕様のものを除いて直流電源で駆動するものがほとんどです。
これらの機器に直流電源を供給するためにAC-DC変換のパワーサプライを盤内に設置することで使用が可能になります。
パワーサプライは出力電圧や容量など様々な仕様のものがあるので、設置する条件を考慮して適正な機種を選定することが大切です。
直流電源から直流電源へ変換
制御用のパワーサプライは交流電源から直流電源に変換するものの他に、直流電源から直流電源に変換するものが存在します。DC-DCコンバータと言われたりもしますね。
例えばDC48Vの直流電源からDC24Vに電圧を変換するといった具合です。
設備には供給される電圧が交流電源である場合の他に、バッテリーを積んで駆動する装置があったりします。フォークリフトやAGV(無人搬送車)などですね。
フォークリフトやAGVはDC48Vのバッテリーで動作しているので、光電センサーといったDC24Vの電源で動作する機器を接続する場合に、降圧仕様のパワーサプライで電圧を下げて使用します。
逆に車のバッテリーといったDC12VでDC24Vを接続したい場合は、昇圧使用のパワーサプライで電圧を上げることで使用が可能になります。
他にも、入力側と出力側の直流電圧が同じで電圧が安定しない場合などにも、DC-DC変換のパワーサプライを使うことで対策を取ることができます。
プラスマイナス電源を出力
オペアンプなどプラスマイナス電源(±DC12V等)が必要な場合、プラスマイナス出力ができるパワーサプライを使うことで解決することができます。
TDKラムダ製のNND30シリーズは±DC12Vと±DC15Vを出力することが可能です。
引用先:TDKラムダ(NND30-1515)
他にも、並列接続が可能な機種で使用上の注意さえ守ることが出来れば、2台を組み合わせてプラスマイナスの電源を作ることもできます。
引用先:オムロン ±(プラスマイナス)出力のつくり方
あまり使うことがないかもしれませんが、情報として覚えておくと重宝します。
まとめ
以上、パワーサプライの概要とその役割についてお伝えしてきました。
パワーサプライは様々な場面で直流電源を得ることができる、設備にとって不可欠なとても重要な機器です。
接続する機器の定格電圧や負荷する容量によって適正な機種を選定する必要がありますので、「用方容量」を守って正しく使ってくださいね。
- パワーサプライはスイッチング方式とリニア方式がある
- パワーサプライには次の役割がある
- 交流電源から直流電源へ変換
- 直流電源から直流電源へ変換
- プラスマイナス電源を出力