【違いは何?】ローラーフォロアとカムフォロアの特徴について解説
産業用機械等の駆動部分でよく使われるローラー部品。
ローラー部品には様々な用途が有り、カム機構や搬送ローラー、台車の車輪など実に多種多様です。
引用先:キーエンス(カムの機能)
<カムCの回転を受けるためにローラーDを使用>
引用先:MISUMI(カムフォロア ローラーフォロア基礎知識と使い分け)
<荷物を搬送するためのコンベアローラーとして>
引用先:MISUMI(カムフォロア ローラーフォロア基礎知識と使い分け)
<直線動作する台車の荷重を受ける車輪として>
これらのローラー部品については、受ける荷重や設置する場所に応じて大きさや幅、ベアリングの種類などを設計・選定し、機械加工・組み込みなどの工程を経て作られます。
ただし、これらの工程を経てローラー部品を作るには、材料費や時間・労務費が掛かるため、あまり経済的とは言えません。
そこで役に立つのが「ローラーフォロア」及び「カムフォロア」という機械部品です。
このローラーフォロアやカムフォロアを上手く活用すれば、ローラー部品に掛かるコストを最大限抑えることが可能となります。
この記事では、ローラーフォロア及びカムフォロアの違いや特徴、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきますので、是非参考にして下さい。
ローラー部品って、1つ作るだけでも結構大変なんだよね〜
そんな時はローラーフォロアやカムフォロアがとても便利ですよ
ローラーフォロアとは?
引用先:THK(ローラーフォロア)
ローラーフォロアとは一般的なベアリングよりも外輪が分厚く作られているのが特徴で、そのまま軸に取り付けてローラーとして使うことができる製品です。
中にはボールベアリングのような鉄球ではなく、ニードルという針状の細長いコロが組み込まれており、ニードルベアリング特有の省スペースでありながら負荷容量が大きいというメリットを引き継いでいます。
ローラーフォロアには機械に取り付けるための軸が無いので、軸を別途製作する必要があるのですが、その分取り付けの自由度が高いというメリットがあります。
サイズはφ15㎜前後のものから、大きなものでφ150㎜ぐらいのものまでラインナップがあります。
ローラーフォロアの構造
引用先:THK(ローラーフォロア)
ローラーフォロアは分厚い外輪・内輪・ニードル・ケージ・側板・シールで構成されています。
外輪と内輪の間にはニードルローラーが組み込まれており、中のニードルがバラバラにならないようケージが保持器の役割を担っています。また、内部のグリースが外に漏れ出たり、ゴミが中に入らないようシール(Oリング)が取り付けられていて、側板によってフタがされています。
基本的にはボールベアリングやニードルベアリング等と同じような構造となっています。
この構造は各メーカーとも大体同じだよ
カムフォロアとは?
引用先:電波新聞(日本トムソンがインチ系カムフォロア拡充軸受内部の損傷を防ぐ)
カムフォロアとは、ローラーフォロアに最初から軸が取り付けられている製品で、ローラーフォロアと同様ローラー部分は肉厚の外輪とニードルが組み込まれています。
ローラーフォロアと違って軸を別途準備する必要がなく、簡単に取り付けられる点がメリットです。
サイズはφ10㎜〜φ150㎜ぐらいまでのラインナップが一般的ですが、中には「ミニチュア・カムフォロア」と呼ばれるφ5㎜ぐらいの小さなものも存在します。
カムフォロアの構造
引用先:THK(カムフォロア)
カムフォロアはローラーフォロアと同様、分厚い外輪・ニードル・ケージ・シール・側板に加えて、スタッドと呼ばれる軸 兼 内輪で構成されています。
ローラー部分はローラーフォロアと同じ構造ですが、これにスタッドが加わることで軸の付いたローラーフォロア=カムフォロアが出来上がります。
軸にはネジが切ってあり、付属のナットを使用することで簡単に取り付けることが可能です。また、ネジの反対側は六角穴もしくはドライバー溝があるので、ナットを回した際に軸が供回りしないように施工できます。
引用先:能瀬精工株式会社(ステンレスカムフォロア)
引用先:能瀬精工株式会社(ステンレスカムフォロア)
尚、軸にはネジ側とローラー側にそれぞれ穴が空いており、そこに付属のグリスニップルを取り付けることができるようになっています。
使わない穴は付属のメクラで必ず塞いでおくようにしましょう
それぞれのメリット・デメリット
ローラーフォロアとカムフォロアにはお互いメリット・デメリットがありますので、特徴と共におさえておきましょう。
ローラーフォロアのメリット
取り付けの自由度が高い
ローラーフォロアはカムフォロアと違って軸が有りませんが、片側支持や両側支持など用途に応じて使い分けがしやすい点がメリットです。
予備在庫の削減がしやすい
ローラーフォロアは軸を替えることで幅広い用途に使用できるため、サイズさえ合わせることができれば予備品の種類を減らすことが可能です。
ローラーフォロアのデメリット
軸が別途必要になる
取り付け自由度が高い分、軸を別途準備する必要がある点が逆にデメリットとも言えます。軸の種類が一律で、カムフォロアでも対応できるような場合であれば、ローラーフォロアの方がコストが高くなってしまいます。
ローラー側面から軸が出っ張る
ローラーフォロアは軸と一体構造ではないため、別途準備した軸には抜け止めの加工が必要になります。
これによってローラー側面から軸が少し出っ張るため、この部分のスペースを設計上確保する必要があります。
軸の長さや取り付け方法に制限がない点がローラーフォロアの特徴だね
カムフォロアのメリット
取り付けが簡単
カムフォロアは装置に取り付けるための軸がすでに組み込まれているため、別途軸を準備する必要がありません。また、取り付け用のナットやグリースニップル・メクラなども付属してくるため、細かい部品がある程度最初から揃っている点もメリットです。
コストダウンがしやすい
カムフォロアはローラーフォロアと比べて準備する部品が少ないため、部品のコストダウンがしやすいというメリットがあります。設計段階でカムフォロアを積極的に採用しておけば、後々のメンテ費用を抑えることができます。
ローラー部分の省スペース化が図れる
カムフォロアはローラー側面からの軸の飛び出しがほとんど無いため、この部分におけるスペースを削減することができます。
カムフォロアのデメリット
取り付け方法がある程度限定される
カムフォロアは軸の向きや大きさが決まっているため、ローラーフォロアほど取り付けの自由度は高くありません。
昔、特注で軸の長さが標準より長いものを作ってもらったことがありますが、納期が掛かることと、ずっと作ってくれるかどうかが分からないため、そのような対応はおすすめしません。
軸が取り外せない
カムフォロアは軸が取り外せない構造であるため、カムフォロア交換の際に軸が邪魔になることがあります。
この点を考慮していない装置だと、後で取り付け・取り外しができなくなる可能性があるため、設計には十分注意・配慮が必要です。
ナット部分が出っ張る
カムフォロアは穴に軸を通してナットで締め付けて固定するため、この部分が必ず取付面から出っ張ってしまいます。
引用先:THK(取付け)
ここで、取り付けるところにタップ穴を切ってねじ込むという方法を思いつきそうなものですが、これについてはメーカーの1つであるTHKではやらないようアナウンスがされています。
引用先:THK(取付け)
Aの方法は振動等で緩んで破損の恐れがあるため、考えないようにしてください。
尚、カムフォロアの中にはTHKの「CF-SFU形」のように、ビス1本で簡易固定できるものが存在します。
引用先:THK(簡易取付け形 CF-SFU形)
引用先:THK(取付け)
振動や衝撃荷重がある箇所には向きませんが、ナット部分が飛び出ないメリットがありますので、選択肢の1つとして覚えておくと役に立ちます。
カムフォロアは安く簡易な設備によく使用されています
機械加工したローラー部品と比べるとどうか?
機械加工で製作したローラー部品と比べて、ローラーフォロア・カムフォロアはどのようなメリットがあるのでしょうか。デメリットも含めてお伝えしていきます。
ローラーフォロア・カムフォロアのメリット
設計の手間が省ける
機械加工で製作するローラー部品は外径や内径、ベアリングの入れ方や抜け止めの加工など、何かと設計に手間を要します。
また、許容荷重の計算についても専門の設計者が都度行う必要が出てきます。
ローラーフォロア・カムフォロアはサイズや許容荷重が寸法表等で公開されていますので、負荷容量の計算や細かい設計などの手間を最小限にすることができます。
組み込みの手間がない
機械加工でローラー部品を製作する場合、製品として使えるようにするにはローラー本体・ベアリング・カラー・止め輪等を組み込む手間が発生します。
ローラーフォロア・カムフォロアはこれらが1つになった製品であるため、「組み込む」という一手間を省くことができます。
コストダウンができる
機械加工品は材料費もさることながら、加工や組み込みの労務費も相まってかなり部品代が高くなります。
ローラーフォロア・カムフォロアは1つ数千円ぐらいで入手できるため、機械加工品と比べると圧倒的に部品代が安くなります。
上手に活用すれば、かなりのコストダウンが可能となります。
短納期で入手できる
ローラーフォロア・カムフォロアは既製品であるため、一般的なベアリングと同様に在庫さえあれば短納期で入手が可能です。
機械加工品は短くても2〜3週間は必要になるため、予備品がない場合は緊急時の対応が困難になります。
摩耗しにくい
ローラーフォロア・カムフォロアはローラー部分が非常に硬い素材で出来ているため、長年使用しても摩耗しにくいという特徴があります。
僕の経験上、ローラー部分の摩耗が原因で交換したことは一度もありません。
中のベアリングが壊れたり、スラスト方向にガタが生じて交換が必要になることはありますが、外輪の摩耗による不具合が起きにくいのがメリットです。
品質が安定している
機械加工品は加工する業者の技量等によって、出来上がった製品の品質にバラツキが発生することがあります。
外径に若干の誤差が生じたり、穴の公差が+寄りになり過ぎてベアリングをはめ込んだ時に緩くなってしまったりなどですね。
ローラーフォロア・カムフォロアは寸法表の許容差から逸脱しないよう正確に作られていますので、製作上のミスや誤差による不具合が発生しにくいメリットがあります。
ローラフォロア・カムフォロアにはたくさんのメリットがあるね
ローラーフォロア・カムフォロアのデメリット
形・サイズ・材質に制限がある
ローラーフォロア・カムフォロアは既製品であるため、サイズや材質を細かくユーザー側で決めることが出来ません。
機械加工品の場合はニーズに合った材質やサイズを設計者で決めることができるため、全体的な自由度は機械加工品に分があります。
相手側の摩耗が進みやすい
ローラーフォロア・カムフォロアは非常に硬い素材で出来ているため、ローラー側が摩耗することはほとんど有りませんが、ローラーが当たる相手側の素材が弱いと、そちら側の摩耗が進みやすくなる場合があります。
交換しやすいローラー側を相手より弱い素材にしたいという意図がある場合には、ローラーの硬質さが逆にデメリットになることがあります。
構造物に直接当てるような使い方の場合は、機械加工品で素材の調整をした方がいいかもしれません
作っているメーカー
ローラーフォロアやカムフォロアはベアリングの一種であるため、ベアリングを製造しているメーカーであれば、ほとんどの場合ラインナップされています。
NTN
ベアリングと聞いてまず最初に思い浮かぶメーカーが「NTN」という方も多いのではないでしょうか。
NTNはベアリング製造の最大手で、幅広い種類のベアリングを手掛けており、もちろんローラフォロア・カムフォロアも製造しています。
まずはNTNのラインナップから探してみることをおすすめします。
NSK
「NSK」は正式名称「日本精工株式会社」と言い、NTNと同じくベアリングメーカーとして非常に有名な会社です。
強度などの信頼性も高く、NSK製のベアリングを好んで使用されている設計者や保全者も多い印象です。
ローラーフォロア・カムフォロアのバリエーションはそんなに多くありませんが、抑えておきたいメーカーの1つです。
IKO(日本トムソン)
「IKO」は「日本トムソン株式会社」が展開しているブランド名称で、NTN・NSKと共に有名なベアリングメーカーの1つです。
IKOはとにかくベアリングのバリエーションが非常に豊富で、IKOにしかないようなベアリングも多数取り揃えているのが特徴です。
ローラーフォロア・カムフォロアのラインナップも多種多様なので、他メーカーで欲しい製品が見付からなかった場合に、覗いてみるとドンピシャの製品が見付かるかもしれません。
THK
「THK」は「LMガイド」や「ボールねじ」といった直線運動用の製品が有名なメーカーですが、実はローラーフォロアやカムフォロアも製造・販売しています。
取り付けの説明や選定など、ホームページには様々な情報が詳しく記載されていますので、疑問に思うことがありましたら、覗いてみると非常に参考になるかと思います。
製品選びに迷ったら、まずは上の4メーカーから探してみることをお奨めします
上手に選定・活用しましょう
以上、ローラーフォロア・カムフォロアの特徴やメリット・デメリット等について解説しました。
ローラーフォロア・カムフォロアはサイズ・材質等の制限があるものの、上手に選定・活用すれば様々なメリットを享受できる製品です。
特に部品代や労務費のコストダウンには非常に有効的な製品ですので、この点にお困りの方は是非本記事を参考にして頂けますと幸いです。