【ポイント解説】セーバーソーの特徴とメリット・デメリットについて
皆さんは「セーバーソー」を使ったことがあるでしょうか?
セーバーソーは平たく言うと「電動のこぎり」のことで、木材や樹脂製品だけではなく鋼材の切断にも使えるなど、様々な部材を切断することができる電動工具です。
セーバーソー以外にも切断工具は様々なものがありますが、それらと比べてセーバーソーはどのような特徴やメリットがあるのでしょうか?
この記事ではセーバーソーの特徴やメリット・デメリットに焦点を当ててポイントを解説していきます。是非参考にしてみてください。
セーバーソーは様々な場面で役に立ちます!
セーバーソーとは?
セーバーソーとはどのような工具なのか、ひとつずつ確認していきましょう。
セーバーソーの概要
セーバーソーとは、先端にブレードと呼ばれる刃を備えている電動工具で、このブレードがモーターの力で前後方向に高速動作します。
写真のようなセーバー(剣)の形をしたブレードを持ったソー(のこぎり)なので、セーバーソーと呼ばれるわけですね。
セーバーソーのブレードは、鉄を切断するために使用する「金切のこぎり」と同じような刃を持っていて、
この刃を部材に当てて目にも止まらぬスピードで動かすことによって、人間が金切のこぎりを引く何十倍ものスピードで切断することができます。
セーバーソーは木材や塩ビパイプなどの樹脂製品をはじめ、鉄板や鋼材といった鉄製品など様々な素材のものを切断することができます。
セーバーソーは解体の現場で大活躍しています。
セーバーソーの構造
セーバーソーは次のような構造になっています。
引用先:ハードウェアマート イノウエ(makita/マキタ 充電式レシプロソー)
上はマキタのセーバーソーの断面写真を引用させて頂いたものです。
左側にモーターが有り、そのモーターから出ている軸が歯車を回すことでクランクシャフトのように銀色のロッドを前後に動かす仕組みになっています。
まるで車のレシプロエンジンのような感じですね。
この前後に動作する銀色のロッドの先端にブレードが取り付けられているので、ロッドの動きに合わせてブレードが高速で動くという仕組みです。
引用先:HiKOKI(マルチボルト(36V)コードレスセーバーソー)
ちなみに、上図はハイコーキの構造図を引用させて頂いたものですが、モーターの回転力をロッドの前後動作に変換するという機構については概ね同じです。
他にも、手に伝わる振動を軽減させるためにバランサーウェイトを搭載したりと、各社で様々な工夫を凝らして使いやすさを追求し、差別化が図られています。
ブレードの種類
ブレードにはいくつかの種類があり、切断するものの大きさや現場の状況に応じて最適なものを選ぶ必要があります。
切断する素材
セーバーソーは解体用途で使うことが多いため、1つのブレードで様々な素材に対応している場合が多いです。
ただし中には専用のブレードがあったりするので、購入するときにどのような素材に対応しているブレードなのかを必ず確認するようにしましょう。
長さ
ブレードには短いもので100mm、長いものだと400mmぐらいのものまでラインナップがあります。
切断するものが厚かったり太かったりする場合は長いものが必要ですが、ブレードが長くなるほどブレたり曲がったりして扱いにくくなるので、切断する対象物に合わせて最適な長さを選択するほうが良いです。
できるだけ短いブレードの方が切断作業がしやすくなります。
厚さ
ブレードには0.9㎜ぐらいの薄いものから1.4㎜ぐらいの厚いものまでラインナップがあります。
薄いものの方が切断面が綺麗で発生する切削屑が少ないですが、分厚い部材や硬い素材のものを切ると時間が掛かったり、刃がすぐ駄目になったりします。
より大きく硬い部材を切断する場合は厚めのブレードを選ぶようにしましょう。
刃の数
ブレードには刃の数が多いものと少ないものの2パターンがあります。
刃の数が多いブレードは刃の少ないものと比べて切断に時間が掛かりますが、切り口が綺麗に仕上がるというメリットがあります。また、切断時のセーバーソーが暴れにくく安定した作業がしやすいという特徴もあります。
逆に刃の数が少ないと切り口が若干荒くなりますが、刃の数が少ないブレードよりも速く切断することができます。
切断したものを製品として取り扱う場合は刃の数が多いブレード、切断したものは基本的に廃棄する解体仕事のような場合は刃の数が少ないブレードを選ぶ方が良いでしょう。
ちなみにブレードの刃の種類で「コンビ刃」と呼ばれるものがあります。これは刃の数が多い部分と少ない部分がミックスされたハイブリッドタイプのブレードになります。
引用先:株式会社TJMデザイン(手壊し能力を高めるレシプロソーブレード発売のお知らせ)
これによって、スピーディーな切断が可能となるだけでなく刃の耐久性が増すなど、様々なメリットを享受することができます。ただし、製造コストが上がってしまうため価格が高くなるデメリットがあります。
真っ直ぐか湾曲しているか
セーバーソーのブレードには「真っ直ぐ」タイプと「湾曲」タイプの2種類があります。
引用先:HiKOKI(セーバーソー用)
引用先:HiKOKI(セーバーソー用)
切断のスピードは湾曲しているブレードの方が上ですが、真っ直ぐのブレードよりも全長に対する有効長が短くなるため、切断できる対象物の厚さに制限が掛かります。
切断するものの大きさに合わせて使い分けましょう。
セーバーソーのブレードって色んな種類があるんだね〜
セーバーソーとレシプロソーの違いについて
「セーバーソー」で検索していると同じような電動工具で「レシプロソー」というものが出てきます。
セーバーソーとレシプロソー、いったい何が違うのでしょうか?
答えは基本的に「同じもの」です。
厳密に言うと、メーカーによって指す電動工具は同じですが「呼び方」が違うということです。
セーバーソーという呼び名は使用する刃の形状(セーバー=剣)から、レシプロソーという呼び名は刃を動かす構造(レシプロ=往復運動)から、それぞれ由来しています。
メーカーによって名称が異なると覚えておけば良いと思います。
セーバーソーを使うメリット
切断用途にセーバーソーを選択することでどのようなメリットがあるのかをまとめました。
鉄の切断時でも火が出ない
セーバーソーの最大のメリットの1つが、木材や塩ビパイプはもちろん鋼材を切断しているときでも火が出ないという点です。
鋼材の切断で他によく使われる道具として切断砥石が挙げられます。いわゆるグラインダーを使う方法ですね。
他にもアセチレンと酸素を使ったガス切断という技術もあります。
これらの方法でももちろん鋼材を切断することができますが、セーバーソーとの大きな違いはいずれも火花や裸火が発生する「火気作業」に該当してしまうというところです。
火気作業は一定のリスクを伴うため、工場によっては手続きが面倒くさかったり、塗料工場や化学プラントなど安全上火気作業ができない場合もあります。
火気作業に敏感な職場ではなかったとしても、周辺に燃えやすいものが沢山あるような環境下においては、グラインダーやガス切断はかなり気を遣います。
その点、セーバーソーによる切断作業は火が出ない「ノンファイアー施工」が可能であるため、火が使いにくい・使えないケースにおいて大きなアドバンテージがあります。
他にも火が出ない切断工具としてジグソーやバンドソーなどがあります。
火が出ないのはとても大きなメリットだね!
養生が楽
セーバーソーは火気作業を伴う切断方法とは違い養生が非常に楽です。
グラインダーやガス切断の場合は火の粉が周辺に散乱するため、火の粉養生を隙間無く確実に行う必要があります。養生に使うシートについても普通のブルーシートでは燃えてしまうため、スパッターシートなどの燃えにくい素材のものを使わなければなりません。
セーバーソーの場合は細かい切削屑が飛びますが着火源にはならないため、ブルーシートなど燃えやすいありきたりの素材のもので養生が可能です。
また、火気作業で必須の消火器や水の入った消火バケツなどの準備も必要ありません。
施工後の切削屑の清掃はしっかりと行いましょう
狭い場所でも使いやすい
セーバーソーは先端が比較的長く細い形状であるため、狭い場所や奥まったところにある物の切断がしやすいです。
ガス切断の場合は火口を奥まで突っ込めば比較的狭い場所でも作業が出来ますが、グラインダーの場合は狭い場所や奥まったところでの作業はかなりやりにくく、本体が跳ねて指を挟むなどの危険性も伴います。
特に解体作業を行う場合は、狭く奥まった箇所の部材を切断することも多いので、セーバーソーがあるとかなり重宝します。
狭い箇所の切断作業はセーバーソーが本当に便利ですね
切断面が綺麗
セーバーソーで切断した部材の切断面は非常に綺麗です。なので切り口が綺麗な状態でないと都合が悪い場合に重宝します。
僕の場合だと、穴に通してあるシャフトを切断して抜き取るといった場合に、このメリットが生きてきます。切断面が綺麗だと、シャフトの切り口が穴に引っ掛かったりすることがなく、スムーズに抜き取り作業ができます。
切断面が綺麗だという点においては、グラインダーの場合も同様ですね
一方、ガス切断の場合は切断面が溶けてしまうので、切り口がかなり荒れた状態になったり、溶接のように周辺の鋼材とくっついたりすることもあります。
切断した部材の取り扱いのしやすさを重視するのであれば、セーバーソーで切断した方が良いでしょう。
切断した直後の鋼材が熱くなりにくい
グラインダーなどの切断砥石やガス切断で鋼材を切断すると、切った直後の鋼材はかなり熱くなります。特にガス切断した鋼材は水を掛けても中々冷めないため、手で持てるようになるまでかなり時間が掛かります。
セーバーソーで切断した鋼材は多少熱は帯びているものの持てないほどではないため、切断後直ぐに撤去することができます。
ガス切断した部材はバーベキューの鉄板ぐらい熱くなってるからね〜
バッテリー式のものを選択できる
セーバーソーはコード式とバッテリー式どちらも各メーカーからラインナップされています。
特にバッテリー式の場合は延長コードなどを引き回さなくてもいいため、解体現場での作業など近くに電源がないような場所で非常に重宝します。
バッテリー式だからといってコード式よりも切断能力が落ちるということもなく、コード式の連続作業をとるかコード式の持ち運びのしやすさをとるか、ニーズにあった選び方が可能です。
やっぱりバッテリー式の方が便利ですね
セーバーソーのデメリットについて
セーバーソーのデメリットについても理解しておきましょう。
切断に時間が掛かる
セーバーソーは「のこぎりの刃を引いて切断する」仕組みであるため、部材の種類にもよりますが他の切断方法と比べて時間が掛かる場合があります。
特に昔の鋼材を切断する場合は注意が必要で、同じ材質の鉄で出来ているはずでも品質が悪いことがあり、セーバーソーの刃が全然進まないという恐れがあります。
セーバーソーで切断作業を行う場合は、周囲の環境や作業工程の検討・刃が立たなかった場合の切断砥石やガスなどの準備といった事前検討・段取りをしっかり行うようにしましょう。
昔の設備を解体するときは必ず別の切断手段を準備しておきましょう。
真っ直ぐ切るのが難しい
セーバーソーは片手で扱えないことやガイドに沿って切るといったことが出来ないため、真っ直ぐ綺麗に切ることが難しい電動工具です。刃が少しでも斜めに入ってしまうと、それを修正することは非常に困難です。
木板や鉄板のような平らな部材を切断する場合は、ガイドに沿って切断ができるジグソーの方が便利でしょう。
切断する対象物に合わせて最適な工具を選択するようにしてください。
替え刃が高い
セーバーソーのブレードは消耗品としては少し高い部類に入ります。
そのため、大量の解体作業や硬い素材のものを切断するなど、頻繁に刃を交換する必要が生じた場合にトータルの消耗品費が結構掛かることがあります。
替え刃の5本入りをホームセンターで買うと、だいたい¥3,000〜¥4,000円程しますので、仕事中に替え刃が無くなってしまうとそれだけでもかなり痛い出費になります。
セーバーソーの刃が大量に必要となる場合は、安く仕入れられるところである程度の予備数を確保しておくことをお奨めいたします。
まとめ
以上、セーバーソーの特徴とメリット・デメリットについてお伝えしました。
セーバーソーにはデメリットがありますが、火気を出さずに部材を切断できるなどメリットも多い電動工具の1つです。
解体作業だけでなく部品の交換工事など、様々な場面で使える電動道具を是非活用してみてください。