【基礎知識】パラレル通信とシリアル通信の違いについて詳しく解説
工場には様々な設備が日々稼働しており、これらの設備は機械を制御するためにPLCやパソコン等と様々な情報伝達を行っています。
機器同士が情報を伝達することを「通信」と呼び、大きく分けて次の2種類があります。
- パラレル通信
- シリアル通信
この記事ではこれらの通信方式の違いについて詳しく解説していきます。
パラレル通信とシリアル通信はどちらも制御装置間の通信によく使われますが、現在ではシリアル通信が主流になっています。
言葉の意味について
まず通信方式の違いを解説する前に言葉の意味について考えてみましょう。
パラレルとは?
「パラレル」という言葉は「平行」であったり「並列」といった意味があります。
パラレルワールドという言葉もありますが、これは僕たちの世界とは別の次元に並行して存在する仮想世界という意味ですよね。
つまり、それぞれの事柄が同時に並行して進むこと、これが「パラレル」です。
シリアルとは?
「シリアル」という言葉には「一連の〜」とか「連続の〜」という意味があります。
ビジネス用語で「シリアルアントレプレナー」という言葉がありますが、これは新事業を何度も連続して立ち上げる起業家のことを指します。丁度イーロン・マスクみたいな人のことですね。
つまり、それぞれの事柄が連続で進むこと、これが「シリアル」です。
それぞれの通信方式の特徴
それぞれの通信方式について例を用いて特徴を解説します。
パラレル通信とは?
パラレルの意味は「それぞれの事柄が同時に並行して進むこと」でした。
つまり、複数のデータを並行させて同時に送受信する通信のことをパラレル通信と呼びます。
データを同時に送受信するので、一度に処理できるデータ量が多い代わりに、その分信号線を複数用意しなければならないデメリットが存在します。
パラレル通信の概要
パラレル通信のイメージ図が次のような感じになります。
AさんとBさんの間で必要な仕事道具の連絡を取りたいとします。
AさんとBさんの間には合計7本の通信経路が通っており、それぞれの通信経路にa1〜a7が割り当てられています。
a1〜a7には0もしくは1というデータを入れることができ、あらかじめ次のように取り決めておきます。
- a1:0=何もいらない 1=プラスドライバー
- a2:0=何もいらない 1=マイナスドライバー
- a3:0=何もいらない 1=モンキーレンチ
- a4:0=何もいらない 1=ハンマー
- a5:0=何もいらない 1=六角レンチ
- a6:0=何もいらない 1=スパナ
- a7:0=何もいらない 1=充電ドリル
ここで、イメージ図のAさんとBさんが行った通信内容を見てみると、a1から順番に「1」・「0」・「1」・「1」・「0」・「0」・「1」となっています。「0」となっていれば何もいらない、「1」となっていればそのデータに対応した道具がいるという意味になります。
なので、このデータのやり取りで行った内容は「プラスドライバー・モンキーレンチ・ハンマー・充電ドリルが必要」となります。
このように個別のデータを同時にやり取りする方式がパラレル通信です。
シリアル通信とは?
シリアルの意味は「それぞれの事柄が連続で進むこと」でした。
つまり、複数のデータを1つずつ連続で送受信する通信のことをシリアル通信と呼びます。
パラレル通信のようにデータを同時に送受信するのではなく、1つずつ連続で送受信するところが大きな違いになります。
シリアル通信の概要
シリアル通信のイメージ図は以下の通りです。
パラレル通信で使用したイメージ図をシリアル通信に置き換えました。
通信する内容はパラレル通信の時と同じですが、シリアル通信にすると通信経路の数が1本になります。この経路を使用して、必要な道工具のデータを1つずつ連続で伝送します。
シリアル通信の場合は、通信を開始したら「順番にa1・a2・a3・a4・a5・a6・a7とデータを送るよ」というふうに決めておきます。
シリアル通信でAさんとBさんが行った通信内容を見てみると、連続で「0・1・0・1・1・0・0」と伝送しています。「0」ならいらない、「1」ならその道具がいるという意味になります。
つまり、通信した内容は「マイナスドライバー、ハンマー、六角レンチが必要」ということになります。
このように、データを1つの通信経路で順番に連続でやり取りするのがシリアル通信です。
パラレル通信のメリット・デメリット
パラレル通信のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
データ通信が高速
データ通信を複数の通信経路で同時に行うので、1つずつ通信を行うシリアル通信よりも高速というメリットがあります。
簡単なハード構成で実現できる
設備間のPLC同士で2〜3個の信号を通信したいという時などは、簡単なハード回路の追加改造で実現できる場合があります。
工場設備やクレーン等との簡単な通信は、まだまだパラレル通信の機器が現役で活躍しています。
デメリット
通信線の本数が多くなる
パラレル通信はやり取りするデータの数だけ通信経路が必要になる為、必然的に通信線の数が多くなります。
配線数が多くなるということは、配線作業の労務費や材料費が増えるということになり、コストアップに繋がってしまいます。
通信の内容を後から追加しにくい
シリアル通信の場合は知識さえあれば、プログラムの変更で簡単に通信の内容を後からでも自由に変えたり追加したりすることが出来ます。
パラレル通信の場合は、通信の内容を後から追加するとなると配線を増やす必要が有り、状況によってはかなり面倒なケースが発生します。
長距離の通信には不向き
パラレル通信の場合、それぞれのデータの到着タイミングが重要です。通信のたびにデータの到着タイミングがバラバラだと、正常に通信することが出来ません。
長距離の配線になると通信経路の長さや曲がり具合など、通信経路ごとに条件が異なることから到着タイミングのバラツキが顕著に表れてきます。
また、通信経路が多いことからノイズの影響を受けやすく、発生するノイズの量も必然的に増えます。
このような理由から、パラレル通信は長距離通信に不向きと言えるのです。
シリアル通信のメリット・デメリット
シリアル通信のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
配線が少なくてすむ
シリアル通信はデータ量がどんなに多くても通信回線は1本で済みます。その為、データ量が多くなるほどパラレル通信よりもシリアル通信の方がコストを抑えることができます。
通信の内容を後から変更しやすい
シリアル通信の場合は後から通信の内容やデータ量を増やすことになっても、大きな改造を伴わずに対応が可能です。ソフトウェア関係の知識があれば、プログラムを変更するだけで済むからです。
通信距離を長くできる
シリアル通信の場合は1本の通信経路でデータを順番に処理していくので、通信距離が長くなったとしても、それぞれのデータの到着タイミングがズレにくいという特徴があります。
また多少の影響は受けるにせよ、パラレル通信よりはノイズに強いです。
これらの理由から、シリアル通信は通信距離を長くできるというメリットがあります。
デメリット
通信速度が遅い
パラレル通信と違って、1本の通信経路で順番にデータを処理していくという方式上、通信速度がどうしても遅くなるというデメリットがあります。
ただし、設備やシステム間の通信でこのデメリットが致命的になるケースは少なく、現在ではこのデメリットは技術革新によって段々解消されてきています。
機器の扱いが少し複雑になる
設備やシステムの間でシリアル通信を行う場合、実現には専用機器などのハードウェアに対する知識と、プログラムといったソフトウェアに対する知識、これら両方の専門的な知見が不可欠です。
パラレル通信で別設備のPLC同士を通信させる場合、入力ユニットと出力ユニットを繋ぐことさえ出来れば、専用の機器や知識が無くてもある程度の通信を実現することが可能です。
ただ、シリアル通信の場合は簡単な内容の通信であっても、専用の機器を使用し相応のプログラムを作成する必要があります。
まとめ
以上、パラレル通信とシリアル通信の違いについて解説しました。
現在ではシリアル通信が主流になってきていますが、工場設備などのFA業界ではまだまだパラレル通信もよく使われています。
両方式にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、状況に応じた最適な方法を選択して上手く活用してください。
内容 | パラレル通信 | シリアル通信 |
導入コスト | 機器:安い 工事費:高い | 機器:高い 工事費:安い |
配線の多さ | 多い | 少ない |
通信距離 | 短い | 長い |
通信速度 | 速い | 遅い |
改造の しやすさ | しにくい | しやすい |