【シックネスゲージ(すきまゲージ)とは?】特徴や使い方について解説
シックネスゲージを皆さんは使われたことがあるでしょうか?
シックネスゲージとは「すきまゲージ」や「サーチャー」とも呼ばれ、”シックネス(thickness)=厚さ”という名前の通り「物」と「物」の隙間(厚さ)を測定するための道具です。
設備や車のメンテナンスをされている方であれば、無くてはならない測定工具ではないでしょうか。
一方で、シックネスゲージを使ったことがない方からすると、「それって何?」や「どうやって使うものなの?」といった疑問が浮かんでくるかと思います。
この記事では、シックネスゲージとはどのようなものなのか?、どのようにして使うのか?これらの疑問についてお答えしていきます。
シックネスゲージはメンテナンス作業には必須の測定工具です
シックネスゲージとは?
シックネスゲージとは、写真のように様々な厚さの金属の板がトランプの様にセットになっている工具です。この金属の板を「リーフ」と言い、このリーフを物と物の間に差し込んでその隙間の距離を測定します。
このリーフは厚いもので1.0㎜、薄いものだと0.03㎜ぐらいが一般的ですが、高く良いものになると0.01㎜から最大5.0㎜のものまで存在します。
シックネスゲージのJIS規格
シックネスゲージは日本工業規格(JIS規格)によって規格化されています。
形状
引用先:東京シクネス株式会社(シクネスゲージ)
引用先:東京シクネス株式会社(シクネスゲージ)
シックネスゲージには普通形状の「A型」と、先端がテーパーになっている「B型」の2種類があり、長さや厚さについてもJIS規格で細かく決められています。
長さ
リーフの端から端の長さは「75㎜」「100㎜」「150㎜」「200㎜」「300㎜」の計5種類です。
厚さ
リーフの厚さも厳密に決められていて、厚みに対してどれぐらい刻むかが規格化されています。
呼び寸法 | 呼び寸法の段階 |
0.01〜0.15㎜ | 0.01㎜ |
0.20〜1.00㎜ | 0.05㎜ |
1.10〜3.00㎜ | 0.10㎜ |
リーフの厚みが0.01〜0.15㎜だと0.01㎜刻み、0.20〜1.00㎜だと0.05㎜刻み、1.10〜3.00㎜だと0.10㎜刻みで種類が増えていきます。
リーフ構成
セットになっているリーフの枚数に対して、組み合わせるリーフの厚みの内訳が細かく決められています。10枚組だとこの組み合わせ、25枚組だとこの組み合わせ、といった具合ですね。
また、リーフの組み合わせだけでなく組み合わせる順序も決まっていて、比較的厚さのあるリーフが外側で薄いリーフが内側にくるにようになっています。
組み合わせるリーフの内訳については種類が多いので、ここでは割愛させて頂きます。
厚み・幅・長さの許容差
リーフの厚さと幅、長さの許容差については以下の表の通りです。
呼び寸法の範囲 | 厚さの許容差 | 幅の許容差 | 長さの許容差 |
0.01以上0.06以下 | ±0.003 | ±0.5 | ±1 |
0.06を超え0.10以下 | ±0.004 | ||
0,10を超え0.30以下 | ±0.005 | ||
0.35 | |||
0.35を超え0.65以下 | ±0.008 | ||
0.65を超え3.00以下 | ±0.010 |
当たり前ですが、リーフの厚みが一番厳しく許容差が決められています。
幅方向に対する反りの公差
リーフの幅方向に対しての反りの公差については以下の通りです。
呼び寸法の範囲 | 幅方向に対する 反りの公差 |
0.01以上0.006以下 | − |
0.06を超え0.10以下 | |
0.10を超え0.30以下 | |
0.35 | 0.003 |
0.35を超え0.65以下 | 0.004 |
0.65を超え3.00以下 | 0.005 |
リーフの厚さが0.35㎜を超えてきたら、厚さに対応した公差が適用されてきます。
硬さ
リーフの測定面の硬さが400HV以上とするよう決められています。
硬さが400HV以上のJIS規格品となると材質は炭素鋼素材一択になります。
ステンレスや真鍮などの場合はこの硬さが担保できないため、これらの金属ではJIS規格に適合したシックネスゲージの製作はできないようです。
表面粗さ
リーフの表面粗さは呼び寸法0.50㎜以下ではRa0.4、呼び寸法0.50㎜を超える場合はRa0.8とされています。
Raとは算術平均粗さと言い、表面の凸凹の高さを平均して数値化したものです。この数値が小さいほど表面は滑らかになります。
リーフが薄いと差し込む時に曲がりやすいため、厚いリーフと比べてより表面を滑らかに仕上げるようJIS規格で定められています。
シックネスゲージはJISでかなり細かく規格化されているんだね
シックネスゲージの使い方
シックネスゲージの使用手順は次の通りです。
測定値の目安を調べる
まずは測定する対象の規定値を確認しましょう。
車のエンジンの組み立てであればバルブクリアランスなどの規定値、モーターのブレーキであればブレーキギャップの規定値などですね。
点検や組み立てを行うにあたっては、隙間の規定値が必ずあるはずなので、事前に確認しておきましょう。
測定面を清掃する
測定する規定値が確認できたら、実際にシックネスゲージからリーフを取り出します。
リーフを取り出したら、いきなり測定を始めるのではなく測定面の清掃を行ってください。
リーフの表面にゴミなどが付着していると、正しく測定できなかったり隙間にゴミを混入させてしまう原因になります。
ウエスなどで表面を軽く拭き取るだけで結構です。
目的の厚さにリーフを重ねる
清掃が終わったら規定値を基準にして必要な厚みのリーフを選び、残りのリーフは本体のケースに収納します。
リーフ一枚で目的の厚みにならない場合は、リーフを複数枚重ねて目的の厚みにします。
この時、以下の点に注意しましょう。
- 重ねるリーフの枚数はなるべく少なくなるようにすること
- 厚いリーフで薄いリーフを挟むように組み合わせること
- リーフはなるべく厚さが近いもの同士で組み合わせること
複数枚重ねる場合は、挿入するときに薄いリーフが曲がったりすることがあるので、組み合わせには十分注意してください。
隙間にゲージを差し込む
リーフを測定したい隙間に対して真っ直ぐ平行に差し込みます。
引用先:新潟精機株式会社(シクネスゲージ)
隙間にリーフを差し込んだときにユルユルの状態であれば少しずつリーフを足し、適度な抵抗感を感じるまで何度か隙間に差し込んでいきます。
上記を繰り返しながら無理なく入る厚みが見付かれば、その厚みが隙間の測定値になります。
しっくりくる厚みが見付かった後も、もう1段厚くした状態で再度隙間に挿入してリーフが入らないことを確認しましょう。
隙間を調整する
測定した隙間を規定値に調整する必要がある場合は、リーフの厚みを規定値に合わせて隙間に差し込み、リーフを動かしながら調整を行います。
リーフを動かしながらでないと適度な抵抗感を感じることが出来ず、適正な隙間に調整することが出来なくなります。
必ず差し込んだときの感触を確かめながら調整を行うようにしましょう。
リーフを差し込んだ時の感触は「キツ過ぎず・ユル過ぎず」です
使用上の注意点
シックネスゲージを使用する際には、以下の点に特に注意してください。
無理矢理突っ込まない
シックネスゲージのリーフの厚みは、1.00㎜以上の厚いものから0.01㎜という薄いものまで実に様々です。
特に0.01〜0.10㎜ぐらいの薄いものになると、炭素鋼素材で出来ていたとしても非常に柔らかく折れ曲がりやすいため、取り扱いは特に注意が必要です。
引用先:シンワ測定株式会社(狭い隙間、どうやって測る?「シックネスゲージ」とは?)
何とか入るからと隙間に無理矢理突っ込もうとすると、特に薄いリーフは折れ曲がったり裂けたりすることがあります。また、リーフの測定面が擦れて厚みが変わったり、数字が消えて見えなくなってしまったりもします。
少しずつ感触と厚みを確認しながら作業を行うようにしてください。
薄いリーフが折れ曲がってるシックネスゲージはよく見るね
測定結果に個人差が生じやすい
シックネスゲージによる隙間の測定は、差し込んだ時の加減が人によって微妙に異なるため、測定結果にバラツキが出る場合があります。
感覚によるところも大きいため、個人差が生じやすい点には注意しましょう。
結果のバラツキを最小限にするためには、何度も測定して平均値を取ったり複数人で測定して確認し合うなどの工夫が有効的です。
使用後は手入れを忘れずに
シックネスゲージでの測定が終わったら、リーフの測定面に付着した汚れを拭き取って防錆用に油を薄く塗布します。
JIS規格対応のシックネスゲージは炭素鋼素材で作られているため、表面の油分が少ないと錆びてしまうことがあります。
リーフが錆びてしまうと厚さが変わったり、引っ掛かってスムーズに差し込めなかったりと様々な不具合が生じてしまいます。
使用後は必ず手入れを行い、専用のケースに収納して保管するようにしましょう。
尚、JIS規格には対応していませんが、ステンレス製もしくは真鍮製といった材質のシックネスゲージであれば耐食性に優れているため錆びにくいです。
シーンに応じて使い分けるのも良いでしょう。
シックネスゲージで錆は大敵です
まとめ
以上、シックネスゲージの特徴や使い方についてお伝えしました。
シックネスゲージはリーフの組み合わせや長さ、材質などによって多種多様な種類がラインナップされています。
用途に合った最適なシックネスゲージを選定し、本記事を参考にして正確な測定作業を行ってください。
シックネスゲージはデリケートな精密測定器具です。使用後は必ず丁寧に手入れを行って、大切に使いましょう。