【測域センサとは?】原理や特徴について分かりやすく解説
生産ラインや物流機器等に使われるセンサには様々な種類がありますが、その中の1つである「測域(そくいき)センサ」というものをご存じでしょうか?
測域センサは一般的な光電センサのように物体を検出するという役割自体は変わりませんが、様々なシーンに応用ができるとても高機能なセンサです。
ただ、「高機能なセンサ」と聞いても普通の光電センサと比べてどのような特徴やメリットがあるのか、いまいちピンとこない方もいるかもしれません。
この記事では、測域センサとはどのようなセンサなのか、どのような特徴やメリットがあるのかなどを出来るだけ分かりやすく解説していきますので、是非参考にしてください。
センサって本当に色んな種類があるね
測域センサは障害物の検出など、より高度な物体検出が可能です
測域センサとは?
引用先:北陽電機株式会社(PBS)
測域センサとは、本体前面にある窓から扇状の光を発して、物体までの距離や位置を測定できるセンサです。
測域センサには大きく分けて次の2種類あります。
エリア設定タイプ
エリア設定タイプは、どの範囲(エリア)に物体があったら信号を出すのか(検出エリア)をあらかじめ設定しておくことで、この設定した範囲内に物体が存在するとセンサが認識したら、接続している機器に信号を出力します。
エリア設定タイプは専用のソフトで直感的に設定することができるので、比較的扱いやすい測域センサです。
どの範囲にある物体を検出したいのかを事前に設定するのが、エリア設定タイプだよ
データ出力タイプ
データ出力タイプは、どの範囲に物体があるのかをリアルタイムでデータ出力する測域センサです。
例えば、右斜め45°の方向から2mの距離までセンサに近づいたとすると、測域センサはこの「右斜め45°の方向」という情報と「2mの距離」という情報をデジタルデータにして、接続されている制御機器に出力します。
この情報を制御機器側で上手く処理することで、物体の大きさや移動した方向などもセンサを通して把握することができます。
取り扱いには一定の知識が必要ですが、使い方次第で様々なシーンに応用が利く測域センサがデータ出力タイプです。
測域センサから出力される情報をどう処理するかがポイントですね
測域センサの原理
測域センサは次のような構造になっています。
引用先:株式会社 高木商会(IoTソリューションでの活用が広がる測域センサー 北陽電機)
測域センサを真っ二つにすると上の図のような構造になっています。
レーザー部分から出されたレーザー光は、投光レンズによって屈折されて「投光信号」として前方に照射されます。照射された光が物体に当たると、跳ね返った光が「受光信号」となって測域センサの方へ戻ってきます。
戻ってきた光は受光ミラーを介してAPD(アバランシェ フォトダイオード)と呼ばれる光を電気信号に変換する受光素子に集約され、電気信号となって制御回路へ送られます。
制御回路では、この出力された電気信号を処理して、照射された光が戻るまでの時間を計測し物体までの距離を算出します。
これが測域センサの検出原理です。
なお、この機構はモーターによって常に回転しており、下の図のように扇状の広い範囲をカバーすることができます。
引用先:北陽電機株式会社(エリア設定タイプ測域センサ)
かなり広い範囲の物体検出を測域センサ1つで対応ができます。
測域センサの特徴
測域センサには次のような特徴があります。
広範囲を検出できる
測域センサはセンサ機構をモーターで回転させながら光を飛ばしているので、非常に広範囲に渡って物体を検出することができます。
引用先:北陽電機株式会社(UST-05LN/LA)
図のように、センサーが物体を検出できる範囲が約180°〜270°もありますので、複数のセンサを取り付けなくても測域センサ1つで対応が可能です。
また、検出距離については短いもので半径3〜5m、長いものだと半径50mといった長距離を検出できる機種も存在します。
検出エリアを細かく設定できる
エリア設定タイプの測域センサの場合、物体の有無を判定する検出エリアをスキャンエリア内であれば自由かつ細かく設定することができます。
引用先:MonotaRO(測域センサ)
例えば上の図では、測域センサである「PBS」の検出範囲(スキャンエリア)の中から、縦3m×横2mの範囲を検出エリアとして設定されています。
この設定では、スキャンエリアに物体が入っただけでは測域センサは反応しませんが、設定された検出エリア内に物体が侵入した瞬間に、測域センサからの信号が出力されます。
逆に、検出エリアから物体が出ると信号はOFFになります。
エリア設定については、測域センサにパソコンを接続して専用ソフトを使って行います。検出エリアはエクセルで図を描画するように直感的に操作できるので、比較的簡単に設定が可能です。
引用先:北陽電機株式会社(エリア設定タイプ測域センサ)
四角形だけでなく丸形や星形など、設定範囲をいろいろな形に設定できるのも面白いポイントですね。
シーンに応じた様々な形にエリア設定できるよ
検出エリア内の出力範囲を段階的に決められる
引用先:北陽電機株式会社(PBS)
測域センサでは、設定した検出エリア内の出力範囲を段階的に決めることができます。
例えば、上の図では黄色の範囲を出力1、橙色の範囲を出力2、赤色の範囲を出力3となっています。この設定されたそれぞれのエリア内に障害物が入ると、対応した出力1〜3の信号が出力されます。
無人搬送車などはこの機能を上手に活用していて、走行中に出力1のエリアに人などの障害物が入ると減速し、出力3のエリアにまで達すると一時停止、エリアから障害物が出ると走行を再開といった具合です。
人の接近距離に応じて警報音を変えるなど、様々な使い方ができます。
エリア設定のパターンを複数登録できる
引用先:北陽電機株式会社(エリア設定タイプ測域センサ)
エリア設定タイプの測域センサは、エリア設定が1パターンだけでなく複数パターン設定することができます。
上の図では”○”や”□”などの複数パターンある検出エリアを、1つの測域センサに設定されていることを示しています。
測域センサのスキャンエリア内であれば、多い機種だと何十パターンものエリア設定を登録しておくことができ、必要な時に設定したエリアに切り換えて使い分けることができます。
引用先:北陽電機株式会社(UGM-50LAP/LAN)
例えば上の図は、とある搬送台車の走行ルートを示しています。
この搬送台車は、測域センサを使って前方に障害物が無いか確認しながら走行しています。
図を見ると、ステーションを出て最初のラインの周辺をグルッと回り、次のライン間の隙間を通るときに、搬送台車は一時的に測域センサの検出エリアの幅を狭めて走行しています。(エリアを切り換えている)
これは、検出エリアが広い状態のまま狭い通路を通ってしまうと、ラインを障害物だと誤認識してしまうためですね。
このように状況に応じて検出エリアを使い分けることで、本当に検出したい物体だけに絞ることができます。
データ出力タイプの場合は、制御装置側で障害物の判断をする必要がありますね。
安全規格に対応したものもある
危険区域内に人が侵入したことを検知して、機械を即座に停止させるために使われる「セーフティセンサ」。人の命を確実に守るためにも、セーフティセンサは安全に関する国際規格の要求に準拠した設計がなされています。
測域センサの中には、この安全規格に準拠した「セーフティレーザースキャナ」というものが存在し、これを用いることで工場のラインやロボットの周囲に誤って人が侵入していないか、監視することができます。
引用先:北陽電機株式会社(UAM-05LPA-T301/T301C)
測域センサと安全監視は相性バツグンだね
セーフティレーザースキャナは、北陽電機以外にもキーエンスやオムロンなど、様々なメーカーから販売されています。
引用先:北陽電機株式会社(UAM-05LPA-T301/T301C)
引用先:キーエンス株式会社(セーフティレーザースキャナ SZシリーズ)
引用先:オムロン株式会社(セーフティレーザスキャナ OS32C)
安全センサを使う場合は、接続する機器や回路構成も安全規格に則っていないと意味がないので注意しましょう
測域センサのデメリット
様々な場面に1台で対応できる測域センサですが、少なからずデメリットも存在します。
価格が高い
測域センサは非常に高機能なセンサであるため、価格もそれなりに高額な部類に入ります。
一般的な光電センサの場合は安いもので7〜8千円程度ですが、測域センサの場合は屋内仕様でも10万円を超えてくる場合があります。
導入する場合は、測域センサであることの必要性を十分に検討しましょう。
測域センサの導入はそれなりにコストが掛かってしまいます
サイズが大きい
測域センサは様々な光学系やモーターを内蔵しているため、コンパクトなものでもある程度の大きさがあります。
比較的サイズの小さな北陽電機製UST-05LNでも、幅50㎜×奥行50㎜×高さ70㎜程のサイズ感です。
引用先:北陽電機株式会社(UST-05LN/LA)
屋外用や長距離タイプになると、更にサイズが大きくなる可能性があります。
引用先:北陽電機株式会社(UGM-50LAP/LAN)
外乱光に影響される場合がある
測域センサに太陽光などの強い光が直接当たると、センサの誤動作やエラーが発生することがあります。特に屋内と屋外を行き来する装置や、西日が差し込む環境などで使用する場合は注意が必要です。
測域センサには太陽光などでも誤動作しにくい「屋外型」がラインナップされていますので、外乱光で誤動作する恐れがある場合はこちらを選定しましょう。
引用先:北陽電機株式会社(URM-40LC/LCN-EW)
引用先:北陽電機株式会社(UXM-30LAH-EWA)
屋内仕様でも、使用周囲照度が「80,000 lx以下」以上の機種を選定すると、かなり外乱光の影響を受けにくくなります。
耐久性はそれほど高くない
測域センサはモーターによる回転機構を持っているため、落下などの衝撃や振動で故障するリスクがあります。
また、電源を入れると常にモーターが回転し続けることから、一般的な光電センサと比較すると寿命はどうしても短くなります。
北陽電機によると設計寿命は常温で5年ということですので、このことを念頭においてセンサ選定及びシステム設計を行う必要があります。
可動部分があるとどうしても寿命は短くなってしまうね
まとめ
以上、測域センサについて原理やその特徴について解説しました。
測域センサはアイデア次第で様々な使い方ができる、とても高機能かつ便利なセンサです。
実際、僕も測域センサのおかげで実現できたアプリケーションがあり、とても助かった経験があります。
デメリットも存在しますが、測域センサでないと解決できない課題があるのもまた事実、光電センサだけでは難しい問題に直面した際には、是非測域センサも検討してみてください。