【ボルト長さの決め方】通しボルトの適正な長さとその重要性について
機械や部材を締結するとき、使用するボルトの長さが不適切であると不具合発生等の恐れがあります。
本記事では部材を通しボルトで締結する(ボルトとナットを使用して締結する)際に必要なボルト長さについて、その計算方法と重要性を解説します。
ボルトの長さが不適切だと思わぬトラブルに発展することがあります。適正な長さを選定するように心掛けましょう。
ボルト長さの計算方法について
ボルトの適正な長さ「L」は以下の式で表されます。
L=a+b+c
「a」は締め付ける部材の厚さ、「b」はナットと座金の厚さ、「c」はナットの側面から3ピッチ(ネジ山3つ)分の長さを意味します。
ここで、図の「D」はボルトの外径(軸の直径)なのですが、「b+c」は1.5D(D×1.5倍)が目安となります。
このように算出した適正な長さのボルトを選定することで、十分な締め付け強度を得ることができます。
各種座金・ナットの厚み及びピッチの目安
各種要素の厚みやピッチについて一覧表にしました。
厚みは全てmmでナットは1種、ピッチは並目としています。ご参考にして頂ければ幸いです。
呼び径 | 平座金 | ばね座金 | ナット | ピッチ |
M3 | 0.5 | 0.7 | 2.4 | 0.5 |
M4 | 0.8 | 1.0 | 3.2 | 0.7 |
M5 | 1.0 | 1.3 | 4.0 | 0.8 |
M6 | 1.6 | 1.5 | 5.0 | 1.0 |
M8 | 1.6 | 2.0 | 6.5 | 1.25 |
M10 | 2.0 | 2.5 | 8.0 | 1.5 |
M12 | 2.5 | 3.0 | 10.0 | 1.75 |
M14 | 2.5 | 3.5 | 11.0 | 2.0 |
M16 | 3.0 | 4.0 | 13.0 | 2.0 |
M18 | 3.0 | 4.6 | 15.0 | 2.5 |
M20 | 3.0 | 5.1 | 16.0 | 2.5 |
M22 | 3.0 | 5.6 | 18.0 | 2.5 |
M24 | 4.0 | 5.9 | 19.0 | 3.0 |
M30 | 4.0 | 7.5 | 24.0 | 3.5 |
計算例
例えば、M10のボルトで合計の厚みが20mmの部材を図のように締結するとします。
M10の平座金の厚みは2.0mm、ばね座金の厚みは2.5mm、ナットの厚みは8.0mmなので、
①a=2.5【mm】+2.0【mm】+20【mm】
=24.5【mm】
②b=2.0【mm】+8.0【mm】
=10.0【mm】
③c=1.5【mm/ピッチ】×3【山】
=4.5【mm】
ここで「b+c」を1.5Dで求めると、
④b+c=10【mm】×1.5
=15【mm】
②+③と④の大きい方を採用すると考えると
ボルトの適正長さ「L」は
L=24.5【mm】+15【mm】
=39.5【mm】≒40【mm】
よって、ボルトの適正長さは首下から40mmとなる。
ボルトの長さが不適切だとどうなるか?
取り付けたボルトの長さが不適切だった場合、次のようなトラブルに発展する恐れがあります。
締め付け強度の不足による緩み
選定したボルトが短いとネジのかみ合い長さが少なくなる為、十分な締め付け強度が得られない場合があります。
このような軸力が低下している状態で外力が加わることで、ネジの緩みに繋がっていきます。
他の部品との干渉
逆に選定したボルトが長すぎると、ナットから突出した余剰分が他の部品と干渉してしまう恐れがあります。
特にクレーンや走行台車等の動く装置において、突出したボルトの先端に当たって破損するといった不具合がたまに見受けられます。
ボルトの長さを変える場合は、ボルトの先端がどこかに当たらないか慎重に確認するようにして下さい。
適正な長さのボルトを選定しよう
以上、通しボルトで部材を締結する際の適正なボルト長さについて、その計算方法と選定の重要性についてお伝えしました。
適正な長さのボルトの在庫がなく、仕方なしに適当なボルトを使ってしまったというケースがよく見受けられます。そのような状態で放置してしまうと、稼働中にトラブルが発生して客先に多大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。
ボルト長さの重要性を理解し、必ず適正な長さのボルトを使うよう心掛けましょう。