【初心者向け】点検ハンマーを使ったボルト・ナットの点検方法について解説
機械や車両などのボルトに緩みがないかチェックすることは、安全性や維持管理に欠かせない作業です。
ボルトが緩んでいると設備の不具合だけでなく、構造物の破損などの危険を誘発する可能性があります。
かと言って、日々の日常点検で全てのボルトを一つ一つ工具を使って締めて回ることは、仕事量的にも時間的にも大変な作業になります。
そこで、役に立つのが「点検ハンマー」です。
点検ハンマーはボルトやナットの緩みをチェックするために利用される便利な道具ですが、その使用方法を知らなければ意味がありません。
この記事では、点検ハンマーを使ったボルト・ナットの点検方法について解説していきますので、是非参考にしてみてください。
点検ハンマーはトラックやバスのホイールナットを点検するのによく使われているね
他にもジェットコースターのレールの点検など、様々なシーンで使われていますよ
点検ハンマーについて
点検ハンマーはまさに「点検」を行うために作られたハンマーです。別名「テストハンマー」と呼んだりもしますね。
点検ハンマーは次のような形をしています。
ハンマーのヘッド部分(金属の部分)は写真のように、円筒状になっている部分と尖っている部分とに分かれています。
一般的なハンマーと比べると特徴的な形をしていますね。
一般的なハンマーは写真の様にヘッドの部分は比較的大きめに作られています。一方で点検ハンマーの場合はヘッドの部分は小さめに作られていて、持ってみると非常に軽いです。
形から見ても、一般的なハンマーとは用途が違うということが分かります。
点検ハンマーは名前の通り、点検作業に特化した造りになっています。
点検ハンマーの使い方
点検ハンマーを使ってどうやってボルトやナットの緩みを点検するのかというと、叩いた時の音の高さで緩みの有無を判断します。これを「打検(だけん)」と言います。
具体的には、点検ハンマーでボルトやナットを順番に叩いていき、そのときの打撃音を耳でチェックします。また、叩くボルトやナットに指を添えて、指に伝わる振動も合わせて確認します。
「キーン・キーン」や「カーン・カーン」という乾いた高い音が鳴る
「ゴン・ゴン」や「ガン・ガン」という濁った低い音が鳴る
このような打撃音や指に伝わる振動の違い、叩いた時の感触から、「よく締まっているな」とか「あっ、緩んでいるな」という判断を行っていきます。
どの部分を叩くのか?
点検ハンマーで叩く場所はボルトやナットの角ではなく、面になっている平らな部分を叩くようにします。
逆にボルトやナットの角の部分、ボルトの先端などは叩かないようにします。
ボルトやナットの角を叩いても打撃音が響かないのと、だんだん角が丸くなってくるためスパナなどの工具の掛かりが悪くなります。
また、ボルト先端を叩くことについても角を叩くの同様で、打撃音が響かないことやボルトのネジ山を痛める原因になります。
点検ハンマーで打検するときは、必ずボルトもしくはナットの平らな面を叩くようにしましょう。
尖った部分は何に使うのか?
点検ハンマーは円筒状の部分でボルトやナットを叩きますが、反対側の尖っている部分は何に使うのでしょうか。
点検ハンマーはバスやトラック、フォークリフトなどのタイヤの取付ナットを点検するときにも使われますが、その際にタイヤの溝にはまった小石を取るのに使われたりします。
鉄の車輪などでは、表面のキズや段差の有無をこの尖った部分を使って点検します。また、クレーンなどではワイヤーロープを巻き取るワイヤードラムやシーブ(滑車)の溝部分にキズやストランド痕が無いかなども、この尖った部分で点検したりします。
このように、点検ハンマーはこれ1本で様々な点検ができるよう考えられた造りになっているわけですね。
点検ハンマーを使うメリット
点検ハンマーを使って打検を行うメリットは以下が挙げられます。
点検時間が削減できる
工具を使って1本1本締め付け確認しながら点検を行うと、1箇所当たりの点検時間が増え、トータルの作業時間が長くなってしまいます。
点検ハンマーによる打検作業は1本当たりの点検時間が数秒程度なので、点検作業の時間を大幅に削減することができます。
少ない人数で量がこなせる
点検ハンマーによる打検作業は、1本1本工具で締め付けて確認するよりも点検作業が早く進みます。そのため、点検する箇所が沢山あったとしても少ない人数で効率的に作業を行うことができます。
点検箇所が沢山ある場合は、点検ハンマーによる打検が最も効率的だよ!
持ち歩く工具を軽量化できる
ボルトやナットの緩み点検は、バスやトラックなどの地上にある機器だけでなく、高所にある設備やジェットコースターのレールなど、危険な環境にある箇所でも行われます。
そのような環境での作業において、持ち歩く工具はできるだけ軽量である方が作業がしやすく、落下させてしまうなどのリスクを減らすことができます。
打検作業は点検ハンマー1本で行えるため、持ち歩く工具を最小限に抑えることができます。
点検作業が安全に行える
工具を使った締め付け作業は、体勢を整えながら力を込める必要があるため、体力の消耗やバランスを崩しての転倒・転落など、安全上のリスクが常に伴います。
高所での作業であれば尚更です。
点検ハンマーによる打検は、締め付け作業のように力を込める必要がないため、体力の消耗が少なく、工具が外れてバランスを崩すといった安全上のリスクを低減することができます。
特に高所での点検作業は、点検ハンマーを使った打検の方が安全に作業ができます!
点検ハンマーのデメリット
続いて、点検ハンマーを使った打検作業のデメリットについてです。
音の聞き分けは慣れが必要
締まっている箇所と緩んでいる箇所を両方叩いたとき、熟練の人であれば直ぐに打撃音の違いが分かるのですが、あまり経験のない方が聞いても音の違いが分からないということがあります。
経験をある程度積んで音を聞き分けられるようになってから、初めて効率的に行える作業になります。
締まっているナットと緩んでいるナットを実際に叩き比べて音の違いを自分で確認してみましょう。
締め付け具合の違いまでは分かりにくい
点検ハンマーの打検は「締まっている」と「緩んでいる」が両極端であれば簡単に分かるのですが、締め付け具合の違いについては非常に分かりにくいです。
なので、しっかりと締まっていなくても「それなり」に締まっていたら、打検してもほとんど違いが分かりません。締め付け具合が「それなり」だと、時間が経つと緩んでしまう可能性があります。
締め付け具合についても熟練の作業者であれば聞き分けられる人がいますが、その域に達するにはかなりの経験が必要になります。
塗装が剥がれる
特に屋外の設備になると、ボルトやナットの部分まで塗装されている場合が多いです。
その上から点検ハンマーで叩いてしまうと、その部分の塗装が割れて剥がれてしまい、ボルトやナットがむき出しになってしまいます。
塗装が剥がれると外観を損ねてしまうだけでなく、その部分から錆が発生する可能性が高くなります。
点検ハンマーで打検する場合は、塗装されていない箇所に限定するなど、点検する場所を事前に決めてから行うようにしましょう。
屋外の塗装されているボルトやナットはあまり打検しないほうがいいかもしれないね
塗装が割れていたらボルトやナットが動いたサインかもしれません。その時はしっかりと点検しましょう
まとめ
以上、点検ハンマーを使ったボルト・ナットの点検方法について解説しました。
点検ハンマーを使った打検作業は様々な業界で行われている非常にポピュラーな手の年方法です。点検ハンマー1本で手軽かつ効率的に作業が行えることが最大のメリットです。
その反面、打撃音の微妙な違いの聞き分けなど、慣れやコツが必要な作業でもあります。
是非、この打検作業をマスターして頂き、日々の点検の効率化を図ってみてください。点検ハンマーを使って様々な箇所を叩きながら音の違いをご自分の耳で聞き分ける練習をすれば、きっとご自分のものにすることができますよ。