【タイミングベルトとは?】特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説
タイミングベルトは車のエンジンに用いられている部品で、車を動かすために非常に重要な役割を担っています。
機械に詳しくなくても、車に乗られる方であれば「タイミングベルト」という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
でも実はタイミングベルトは車のエンジンだけでなく、クレーンなどの産業機械や工場の機械設備などを動かすための駆動装置として幅広く用いられています。
この記事では、そんなタイミングベルトの特徴や駆動装置に使用する際のメリット・デメリットについて解説していきます。
タイミングベルトって車のエンジンだけに使われているんじゃないんだね
タイミングベルトは大きなものから小さなものまで、様々な駆動装置に用いられていますよ
タイミングベルトとは?
タイミングベルトとは、ゴム素材で出来た平べったいベルトが輪っか状になっている部品で、写真のようにベルトの内側には規則的な凹凸があるのが特徴です。
よく使われる代表的な装置が車のエンジンです。
この突起のある「タイミングプーリー」と呼ばれる部品にベルトを掛けて、プーリーと一緒に回転することでプーリの回転力を伝える働きがあります。
タイミングベルトは別名歯付きベルトとも呼ばれ、内側あるタイミングプーリーと同じような凹凸が噛み合うことでより正確に回転力を伝えることができます。
タイミングベルトは車のエンジン以外にも、例えば自転車の車輪を回転させたりスクーターの車輪を回転させたりする用途にも用いられます。
一方で、タイミングベルトは車のエンジンなどのほかに、クレーンなどの産業用機械を動かす際にも用いられます。
産業用機械で使われるようなタイミングベルトやタイミングプーリーは、エンジン用途のものと比べると大きく、ベルトの幅も2倍ぐらいあります。
このようにタイミングベルトは様々な装置を動かすために用いられています。
タイミングベルトの特徴
引用先:株式会社 椿本チエイン(タイミングベルト・タイミングベルトプーリー)
タイミングベルトは機械的強度が高く耐油性・耐熱性にも優れたクロロプレンゴムを材質に使用しているのが一般的です。
ほかにも、ゴムの摩耗粉が出ないようポリウレタン素材で出来ているものもあります。
こちらの場合は、よりクリーンな環境での駆動装置の使用に向いていると言えますね。
タイミングベルトは常に引っ張られた状態で回転力を伝えるため、引っ張り強度の向上やゴムが伸びてしまうことを防ぐために、グラスファイバーなどの繊維を心線に織り込み対策を行っています。
タイミングベルトは輪っかの状態になっているものが一般的ですが、
引用先:三ツ星ベルト株式会社(フリースパンベルト)
ユーザー側で任意の長さに加工できるタイプのものもあります。
引用先:三ツ星ベルト株式会社(フリースパンベルト)
また、輪っか状では対応できない長い距離で使用したい場合には、エンドレス加工をしていない切りっぱなしタイプのものがあります。
引用先:三ツ星ベルト株式会社(フリースパンベルト)
このタイプは使うのに少しコツが必要ですが、様々なシーンに応用が利きます。
ほかにも、タイミングベルトの歯が内側だけでなく外側にあるものなど、一口にタイミングベルトと言っても様々な形状・種類のものが存在します。
タイミングベルトって色んな種類があるんだね
タイミングベルトのメリット
タイミングベルトには特有の様々なメリットがあります。
軽い
タイミングベルトはゴム素材で出来ているため、駆動関係の部品としては非常に軽量です。
同じように回転力を伝える部品としてチェーン・スプロケットの組み合わせもありますが、チェーンは金属で出来ているのでかなり重量があり、大きさや量があると取り扱いが大変です。
その点、タイミングベルトの方は交換が楽ですし、その軽さゆえに設計の幅が広がったりする場合もあります。
保管についても、壁に引っ掛けておけるなどチェーンと比べて場所を取らないのもメリットですね。
静か
チェーンで装置を駆動している最中は「ジャラジャラジャラ」といった音が鳴りますが、タイミングベルトの場合はかなり音が静かです。
そのため、音がうるさいと快適性が損なわれる車のエンジンなどの用途においては、タイミングベルトの方が好まれます。
最近では静粛性の高いチェーンも出てきてはいますが、やはりタイミングベルトの方が静粛性は高いです。
進行方向にずれない
空調機やコンプレッサーなどもベルト駆動ですが、これらの駆動にはVベルトや歯のない平ベルトがよく用いられています。
引用先:キーエンス株式会社(ベルト・チェーンの基礎知識)
平ベルトやVベルトはプーリーとの接触面に凹凸がないため、少なからず駆動中にスリップします。つまり回転方向にズレが発生するということですね。
コンプレッサーの駆動については、プーリーとベルトが進行方向に多少ずれたとしても全く影響がありませんが、位置決めを行っているような装置にはあまり向きません。
タイミングベルトの場合は、ギアが噛み合うようにベルトとプーリーの歯が噛み合って駆動しているので、進行方向にずれることがなく位置決め用途にも使用が可能となっています。
油が飛び散らない
チェーン駆動の場合は潤滑の関係上オイルなどの潤滑油を必要とします。そのため、高回転で駆動すると潤滑油が飛び散ってしまうため、安全カバーの内側が油でかなり汚れます。オープンギアオイルなどを用いればかなり軽減されますが、それでも少なからず駆動部回りは油による汚れが発生します。
タイミングベルトの場合は潤滑油を必要としないため、駆動中に油が飛び散ることがなく、安全カバーの内側も潤滑油で汚れるという心配がありません。
なので、油の飛散を嫌う食品会社などの設備における駆動装置の用途には最適です。
タイミングベルトは食品会社や半導体工場などのクリーンな環境下でよく用いられています
タイミングベルトのデメリット
タイミングベルトにもやはり特有のデメリットが存在します。
用途が決まってしまう
タイミングベルトはほとんどの場合、輪っかの状態で使用します。
そのため、1度長さを決めて購入してしまうと購入時の用途以外には使いにくいというデメリットが存在します。
また、メーカーのラインナップに合うように長さを決めて設計する必要があるなど、使用時にある程度の制限が発生します。
ユーザー側で長さを決めて発注する場合は少し納期が掛かってしまいますし、ユーザー側で加工するタイプのものは、最初から輪っか状のものと比べて強度が劣ります。
他の様々な設備に転用できるようにするには、全て長さを同じに設計するなどかなり工夫が必要になります。
周囲の環境に左右されやすい
周囲が屋内で紫外線等の入らない環境であれば良いのですが、屋外で紫外線が直に当たるような環境では、素材がゴム故に劣化がどうしても早くなります。
また、冷凍庫のような−数十°の中や寒冷地での使用においても、全く使えないわけではありませんが半年ぐらいで表面がひび割れてきます。
そのため、そのような過酷な環境下で使用する場合はやはりチェーン駆動に軍配が上がってしまいます。
車のエンジンのタイミングベルトは10年or走行距離10万㎞と言われますが、使い方によってはもっと短いスパンで交換が必要になる場合があります。
最近では、耐環境性の高いものも出てはいますが、過酷な環境で使用する場合はやはりチェーンの方が信頼性が高いです。
スラスト方向にズレることがある
タイミングベルトは歯と歯が噛み合っているため、回転方向にはズレることはありませんが、スラスト方向(横方向)にはズレることがあります。
特に駆動側と被駆動側の芯がちゃんと出ていないと、駆動中にタイミングベルトが外側や内側に段々寄ってきます。
タイミングプーリーの側面に外れ止めの板が付いてはいますが、タイミングベルトがズレてこの板に当たることでベルトが削れてしまうこともあるので、とくに駆動側と被駆動側の距離が離れている場合は、シビアに芯出しを行う必要があります。
これらのデメリットはしっかりおさえておかないといけないね
まとめ
以上、タイミングベルトの特徴や用途、メリット・デメリットについてお伝えしました。
タイミングベルトは多少のデメリットがありますが、メリットも大きい駆動装置の1つです。
ただ、タイミングベルトはチェーンと違ってこまめな点検・定期的な交換を行わないと最悪の場合切れてしまうことがあります。
タイミングベルトのメリットを最大限に活かすためにも、是非日頃のメンテナンスを確実に行っていきましょう。