【正しい使い方を!】ワイヤークリップの止め方についてポイントを解説
ワイヤークリップはワイヤーロープの端末加工を現場で行うときによく用いられる部品です。
引用先:株式会社ヤマカツ「ワイヤクリップ」
ワイヤーロープの端を折り返して輪っかを作り、ワイヤークリップで固定することで簡単に投げ縄状の形に加工ができます。
この加工をワイヤークリップ以外で行う場合は専用工具が必要であったり、正しく加工がされていないとワイヤーが抜けてしまったりと、特に荷重が掛かる部分に使用するのはあまりおすすめ出来ません。
ワイヤークリップは正しく取り付ければ高い引張強度を得られるほか、特別な工具を使わなくても加工が可能です。
この記事では、そんなワイヤークリップを安全に取り扱って頂くためにも、正しい取り付け方について解説していきます。
ワイヤークリップには取り付け方のポイントがいくつかありますので、しっかりマスターして下さい。
ワイヤークリップの種類
ワイヤークリップには主に以下のような種類があります。
鋳物(鋳造)ワイヤークリップ
引用先:株式会社ヤマカツ「ワイヤクリップ」
鋳物(鋳造)で出来たワイヤークリップです。鋳物とは溶けた鉄を型に流し込んで作る鉄製品のことですね。
鋳物のワイヤークリップは大量生産が出来るので、1つ当たりの価格が安いのが特徴です。
反面、鍛造品のワイヤークリップと比較して強度が落ちるので、高い荷重の掛かる用途には使用は危険です。また、あまり太いワイヤーロープには対応していません。
φ3mm〜φ10mmぐらいの間で、何かを吊しておく(クレーンの操作ペンダントを吊しておく)等の用途にとどめておくと良いでしょう。
鍛造ワイヤークリップ
引用先:株式会社ヤマカツ「ワイヤクリップ」
鍛造で出来たワイヤークリップです。鍛造とは金属に圧力を加えて成形する加工方法で強度が高いのが特徴です。スパナ等の工具も鍛造で出来ています。
鋳物のワイヤークリップと比較して強度が高く、高い荷重が掛かる用途にはこの鍛造ワイヤークリップが用いられます。
鋳物のワイヤークリップと比較して製造コストが掛かるので、やはり価格は少し高くなります。
ただし、鋳物のワイヤークリップよりも安全性は格段に高いので、荷重が掛かる部分へは必ず鍛造のワイヤークリップを選定するようにしましょう。
ちなみに、ワイヤークリップの保持力はワイヤーロープの破断荷重の約80%と言われています。
ワイヤークリップの止め方
ワイヤークリップの止め方について、重要なポイントをお伝えしていきます。
ワイヤークリップの向き
ワイヤークリップは取り付け方に正しい向きがあります。
引用先:浅野金属工業株式会社「ワイヤークリップ」
引用先:浅野金属工業株式会社「ワイヤークリップ」
ワイヤークリップの本体(U字ボルトとは逆の方)を荷重が掛かる方へ取り付けます。
現場の方は荷重の掛かる方を生き側、荷重の掛からない方(末端側)のことを死に側と表現します。生き側をワイヤークリップの本体側、死に側をワイヤークリップのU字ボルト側にして取り付けると覚えておきましょう。
誤った止め方のように取り付けてしまうと、以下のような恐れがあります。
ワイヤーロープの強度が低下する
ワイヤークリップのナットを締めていくと、U字ボルト側のワイヤーは潰れて型崩れを起こしていきます。荷重が掛かる方にU字ボルトを取り付けてしまうと、ワイヤーの強度が低下し引張強度が落ちる可能性があります。
ワイヤーロープが抜ける
ワイヤークリップの本体側には滑り止めの溝が付いています。またU字ボルト側よりも本体側の方がワイヤーロープを押さえている面積が大きいので、より面に近い状態でワイヤーを確実に押さえることが出来ます。
U字ボルト側の方へ荷重が掛かってしまうと、ワイヤーを押さえる力が弱くなってしまう為、抜けてしまう危険性が高くなります。
ワイヤークリップの取付間隔と個数
ワイヤークリップにはワイヤー径に応じた取付間隔と取付個数があります。
取付間隔
ワイヤークリップの取付間隔は以下のようにして下さい
引用先:Tomoya「ワイヤークリップ」
- A(ワイヤークリップ間):ワイヤーロープ直径の6.5倍以上
- B(端末とワイヤークリップの距離):ワイヤーロープ直径の6倍以上
ワイヤークリップ間の間隔を短くしてしまうと、やはり引張強度低下の原因になります。
取付個数
ワイヤークリップはワイヤーロープ径によって必要な取付個数があります。
ワイヤーロープ径に応じた取付個数と取付間隔について、下の一覧表にまとめましたので参考にしてみて下さい。
ロープ径(㎜) | 取付個数 | 取付間隔(cm) | 締付トルク(N・m) |
6 | 4 | 4 | 4 |
8 | 4 | 5 | 8 |
10 | 4 | 7 | 16 |
12 | 4 | 8 | 24 |
14 | 4 | 9 | 37 |
16 | 4 | 10 | 52 |
18 | 5 | 12 | 67 |
20 | 5 | 13 | 82 |
24 | 5 | 16 | 119 |
26 | 5 | 17 | 137 |
30 | 6 | 20 | 188 |
36 | 7 | 23 | 261 |
40 | 7 | 26 | 299 |
47.5 | 8 | 31 | 397 |
ワイヤークリップの締付トルク
ワイヤークリップのナットを締め付けていくと、ワイヤーロープが潰れていくので何処までもナットが締まっていきます。
あまり強い力で締めすぎるとワイヤーロープが痛んでしまう恐れがあるので、上記の表を参考に締付トルクを調整しながら取り付けるようにしましょう。
ワイヤークリップの締付トルクは通常のボルトの締付トルクとは異なります。場合によっては通常のボルトよりも締付トルクが高いことがありますので注意しましょう。
ワイヤークリップの増し締め
無負荷の状態でワイヤークリップを取り付けた後にワイヤーロープへ荷重を掛けると、ワイヤーロープに伸びが発生してU字ボルトのナットが緩むことがあります。
ワイヤーロープに荷重が掛かると伸びが発生して径が細くなる為です。
ワイヤーロープに荷重が掛かっていない状態でナットを締め付けても充分に締まっていないことも多い為、必ずワイヤーロープに荷重を掛けた状態で最終増し締めを行うようにして下さい。
尚、増し締めを行う際は先端から(荷重が掛かっているものから)順番に締め付けていって下さい。
何回も荷重を掛けたり緩めたりする場合は、作業の途中や最後に点検を行いマーキングを入れておくと良いでしょう。
まとめ
以上、ワイヤークリップについて止め方のポイントをお伝えしました。
ワイヤークリップは使い方を誤ると、ワイヤーがクリップから抜ける等のトラブルが発生することがあります。
現場でトラブルや事故を発生させないためにも、正しい取り付け方をマスターして下さい。
安全最優先でいきましょう!