【どんな方法がある?】ネジが緩む原因と緩み止めの種類について解説
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機械をメンテナンスしていて、ネジやボルトが緩んで困った経験はありませんでしょうか。
ネジやボルトは部品を締結する非常に重要なものですが、様々な要因で緩んでしまうことがあります。
日々のメンテナンスで見つけることができれば良いのですが、全てのネジやボルトを点検することは非常に労力が掛かりますし、一度取り付けてしまったらそう簡単に点検ができない箇所があったりもします。
この記事では、そんな「ネジの緩み」にお悩みの方をお助けすべく、緩み止め対策についてどのようなものがあるのかを解説していきます。ご自分の環境にあった対策が必ずあると思いますので、是非チェックして頂けたら幸いです。
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流石に全部点検するのは骨が折れるよね〜
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ネジやボルトの緩みはトラブルの原因になりますので、是非本記事の情報を参考にしてください。
ネジは何故緩むの?
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ちゃんと締め込んだはずのネジが何故緩むのでしょうか?
それは、何らかの原因によって軸力(締め付けたときの力)が低下することで発生します。
軸力の低下は実に様々な要因があり、それぞれの要因に対して適した対策を行う必要があります。
まずは、軸力低下を招く主な原因についてみていきましょう。
原因1:振動による緩み
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走行するクレーンなど、動く機械に取り付けられているネジは振動を長期間受け続けます。ネジが振動を受けると、締結している母材とネジの接触面が滑り(動き)、ネジやナットが戻る方向(緩む方向)に回転することがあります。
これが繰り返されることによって、ネジがだんだん緩んで軸力が低下してしまうのです。
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動きが激しかったり、振動が大きい機械は特にこれが多いね
原因2:締結物の変形
引用先:MISUMI(ねじはなぜゆるむのか?)
ネジで締結物を固定したとき、ネジ側の材質が締結部材よりも硬い場合に締結部材側が変形してしまうことがあります。また、ネジと締結部材の接触面積が少ないと、力が”点”で集中しやすくなり、これも締結物側の変形の原因となります。
締結部材側が変形で陥没してしまうと、ネジと締結物との間に隙間が空いてしまうため、軸力の低下(ネジが締まりきっていない)状態になります。
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初期緩みの原因はこれが多いですね
原因3:温度の変化
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金属は温度が上がると膨張し、逆に下がると縮む性質を持っています。
屋外などの温度変化が激しい環境にさらされている場合、ネジや締結部材が熱で膨張したり元に戻ったりすることで、少しずつ戻り方向へ動いてしまうことがあります。
戻り方向へ動くことで軸力が低下し、ネジの緩みに繋がります。
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こうして見るとネジの緩みには色んな原因があるね
緩み止めの種類について
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ネジの緩みを防止する部品や対策についてご紹介していきます。
適切な力で締める
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ネジは強く締め付けるほど緩みにくくはなりますが、適正な力で締めないと変形して逆に緩みやすくなる可能性があります。
ネジなどの金属は、バネのように伸ばしたら元に戻ろうとする力が有り、この元に戻ろうとする力によって締結力を維持しています。
ただし、締め付け過ぎなどによって過大な力を発生させてしまうと、元に戻ろうとする力が無くなり復元しなくなってしまいます。これを塑性変形(そせいへんけい)と呼びます。
この塑性変形が起きない範囲でしっかりと締め付けることが、ネジの緩み止め第一歩になります。
ネジの太さ(㎜) | 適正トルク(N・m) |
M3 | 0.5〜0.9 |
M5 | 4〜6 |
M6 | 7〜10 |
M8 | 17〜25 |
M10 | 34〜49 |
M12 | 59〜83 |
M14 | 93〜132 |
M16 | 145〜202 |
M18 | 205〜285 |
M20 | 285〜400 |
M22 | 395〜550 |
M24 | 490〜680 |
M27 | 720〜990 |
M30 | 980〜1350 |
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過大な力で締め付けさえしなければ、ほとんどの場合は大丈夫です
平ワッシャー(平座金)を入れる
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平ワッシャーとはネジの軸に入れる輪っか状の部品です。
この平ワッシャーをネジの軸に入れて締め付けることで、ネジと締結部材との接触面積が増えるため塑性変形が起こりにくくなる効果があります。
平ワッシャー以外にも、トラスネジやフランジ付きナットなど接触面積が大きくなる部品を使用するのも効果的です。
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これだけでもかなり効果があるよ
スプリングワッシャー(ばね座金)を入れる
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スプリングワッシャーは平ワッシャーと同じくとてもポピュラーな部品で、ネジの軸に入れて使用します。
スプリングワッシャーは横から見ると以下のような形をしていて、上下から圧縮するとバネのように反発する特性を持っています。
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このスプリングワッシャーを入れてネジを締め付けることで、スプリングワッシャーがネジと締結部材をバネの力で押さえつけるため、ネジやナットの回転の負荷になって緩みにくくなります。
他に、同じバネの力を利用したもので「皿ばね座金」というものも存在します。
引用先:株式会社ツルガ(ネジクル 皿ばね座金)
皿ばね座金の場合は、ネジと締結部材に対して均等にバネの反発力を伝えるので、非常に高い緩み止め効果を発揮します。
引用先:株式会社ツルガ(ネジクル 皿ばね座金)
バネの力を利用した緩み止めは、ネジと一緒に入れるだけで大きな効果を得ることができ、施工も簡単であることから幅広いシーンで活用されています。
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緩み止め対策としては最もよく用いられている方法ですね
歯付き座金を入れる
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歯付き座金はバネの作用を有したギザギザの歯が付いているのが特徴の部品です。
この座金と一緒にネジを締め込むと部材に歯が食い込んで、回転方向の負荷になって緩み止め効果を発揮します。
歯付き座金はトグルスイッチの固定など、あまりトルクを掛けられない場合の緩み止めに広く用いられています。
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小さい部品のネジ取付けは歯付き座金が使われていることが多いね
ダブルナット方式にする
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ダブルナットは下ナットにもう1つ上ナットを追加することで緩み止めを行う施工方法です。
引用先:ねじ締結技術ナビ【ダブルナット(ゆるみ止め部品)】
ダブルナット方式は、ただナットを1個追加すれば良いわけではなく、正しい手順で施工しないとあまり意味がありません。
基本的な施工方法は、下ナットを規定トルクで締め付けた後に同じトルクで上ナットを締め付け、最後に下ナットを少し戻して上ナットと固定します。
引用先:ねじ締結技術ナビ【ダブルナット(ゆるみ止め部品)】
こうすることで軸を上下のナットが引っ張り合う状態になって、大きな緩み止め効果を得ることができます。
ダブルナット方式は、特に構造物の締結や固定に広く用いられている緩み止め方法です。
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ダブルナットはナットの順番が決まっていたり、トルク管理が必要であったりと、一定の知識を必要とします
緩み止め材を使用する
引用先:ヘンケル(ロックタイト 製品)
緩み止め剤とは一種の接着剤で、ネジに塗って締め付けることで薬剤が内部で固まり、それが抵抗となって緩みを防止できる商品です。
緩み止め剤は振動に強く、ネジ山を保護する働きもあるなど利点の多い商品で、かつ確実な緩み止め効果を発揮してくれることから、僕の職場でも使用する場面が非常に多いです。
緩み止め剤は種類が非常に豊富なので、下記の記事を参考にしてみてください。
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緩み止め剤は1本持っておいて損はないね
緩み防止処理付きネジを使う
引用先:株式会社 朝日押捻子製作所(緩み防止ボルト)
緩み防止処理付きネジとは、あらかじめネジに緩み止め用の薬剤などが塗布されたネジで、そのまま締め付けるだけで高い緩み止め効果を得られる製品です。
緩み防止処理付きネジを使うことで施工のたびに薬剤を塗布する手間がなく、塗布忘れなどのミスが発生しにくくなることから、コストと品質を両立しやすいというメリットがあります。
緩み防止処理についてはメーカーごとにノウハウがあり、接着剤方式やナイロン樹脂方式など、様々なアプローチによる方式が採用されています。
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塗布忘れ・入れ忘れがしにくくなるのは大きなメリットですね
ハードロックナットを使う
引用先:ハードロック工業株式会社(HLNハードロックナット ベーシック)
「ハードロックナット」とはハードロック工業が手掛けている製品で、「絶対に緩まない」というキーワードのもと開発されています。その高い緩み止め効果は世界的にも認められていて、東京スカイツリーなどの有名な建造物にも採用されているほどです。
ハードロックナットには凸ナットと凹ナットがあり、この2種類のナットを組み合わせて締め付けるのですが、一般的なダブルナットとは異なる独自の技術が採用されています。
凸ナットの凸部分は中心から少し偏芯した円錐面が設けられていて、この円錐面が凹ナットに入り込むようになっています。一方、凹ナット側の穴についても円錐状になっているのですが、凹ナットの穴は凸ナットのように偏芯はしていません。この2種類のナットを凸ナット→凹ナットの順に締め付けると、下の図の様になります。
引用先:ハードロック工業株式会社(HLBハードロックベアリングナット/特徴)
凸ナットの偏芯した円錐面が凹ナットの穴へ”クサビ”のように入り込み、凸ナットと凹ナットがネジに押しつけられるような力が働きます。この力が抵抗になって強力な緩み止め効果が発揮されます。
ハードロックナットは普通のダブルナット方式とは違って、単純に2つのナットを順番に締め付けるだけなので、施工がしやすいことや電動工具が使えるといったメリットもあります。
ただし、通常のナットよりも価格が高いため、部品コストが増加するというデメリットがある点は抑えておきましょう。
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ハードロックナットの緩み止め効果は様々な業態から信頼を得ているね
Uナットを使う
引用先:株式会社 富士精密【U-NUT片面(1種)両面(2種)】
「Uナット(U-NUT)」とは富士精密が手掛けている製品で、ナットの中に「フリクションリング」呼ばれるバネが取り付けられた特殊な構造をしています。
引用先:株式会社 富士精密(U-NUT)
このUナットをネジに締め込んでいくと、バネの弾性力を持ったフリクションリングがネジ山を押すことで、ナット本体を上に持ち上げようとする力(P)が働きます。
引用先:株式会社 富士精密(U-NUT)
この力(P)が作用することによって、今度はナットがネジの山を下から押す力(P’)が発生し、ナットとネジの接触面に摩擦力が生まれます。接触面に発生した摩擦力はナットやネジの回転方向に対して強い抵抗となるため、高い緩み止め効果が得られるというわけです。
Uナットは普通のナットと同じ要領で締め付けるだけで施工が完了するため、作業が素早く行えることや施工ミスが起きにくいなどのメリットがあります。
また、ナット1つで高い緩み止め効果を得られることから、軸長が短かったりスペースが限られるなどの場面においても非常に有効的です。
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普通のナットと同じように施工出来る点が楽で良いですね
まとめ
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以上、ネジが緩む原因と緩み止めの方法について解説しました。
ネジの緩み止めにはナットやネジを加工するなど、ここで挙げた以外にも沢山の方法がありますが、一般的にはこの記事でご紹介させて頂いた方法が広く用いられています。
是非、ご自分の用途に合った緩み止めの方法を選択し、安全かつ確実な方法で対策を行ってください。